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厚顔ワグネリアンVS年増組(1)

最終的には「お茶漬けの会」となってしまった「厚顔ワグネリアン対策会議」の後、音楽大学の理事会選挙の日となった。

既に、現金を大量に理事会メンバーに配り、当選確実を自認するワグネリアン宮川が晃子の練習室に顔を見せた。


宮川

「おやおや、晃子君、練習はご熱心で」

いつもの派手な服、相当なニンニク料理を食べてきたのか、実に口が臭い。


晃子は、そに悪臭に「うっ」となるけれど、必死にこらえる。

「あら、宮川様、新理事に当選確実だそうで、おめでとうございます」

「今後のご活躍を期待しております」


宮川は、ニンマリ。

「ああ、やっとだな」

「この保守的な音大、それから同じく旧弊から脱却できない音楽界を、ようやく変革することが出来る、崇高なワーグナー世界の実現だ」

「その足がかりだなあ、晃子君」


晃子は、また少し引く。

とにかく目つきがいやらしい、今にも抱きつかれそうな危険を感じる。

「いえ・・・とにかく、理事会も、もうすぐですね、理事会室に出向かれたらどうですか?」

と、言いながらも、マイセンの珈琲カップにその手をカチャリと触れる。


宮川の目が、いやらしく光った。

「おやおや、マイセンの超高級品だねえ、そのカップ」

「いや、さすが晃子君だ、私のために珈琲?しかも理事会の前に、しっかり呼吸を整えて欲しいと・・・素晴らしい配慮・・・」

「そうだなあ、理事会が終わったら、たっぷりとお礼を」


晃子は、ここで「しめた!」と思い、満面の「笑顔」。

「作り笑顔」であるけれど、晃子の笑顔に目がくらんだ宮川には、全く「本気の笑顔」にしか映らない。

晃子は、春奈の「特製媚薬」を入れた珈琲をマイセン珈琲カップに注ぎながら、

「吉祥寺あたりで、理事当選のお祝いでも?」と猫なで声。

宮川は、その猫なで声に顔が上気。

「いや・・・物わかりがいいなあ、晃子君、夜を徹して、ワーグナー世界の音楽談義を」と、珈琲をゴクゴクと飲んでしまう。


すると、異変が起きた。


宮川の目が虚ろ状態。

「あれ?俺、なんでここにいる?」

「うーん・・・目の前にいるのは、誰?」

「何だろう、吉祥寺って言葉が頭の中を駆け巡って・・・」

「うん?珈琲カップの底に・・・うわ!ものすごい美人・・・」

「胸が・・・はぁ・・・ドキドキして・・・この美人が俺を呼んでいるような・・・」

「行かなきゃ・・・今すぐ・・・」

宮川の足はその時点で晃子の練習室を出た。

そして、脇目もふらず、廊下を歩き、音大校舎も出てしまう。


「宮川先生!理事会がもうすぐです!」

「お戻りください!」

と引き留める音大事務員の手を、「うるさい!」と振り払い、ついには音大の正門を出て行ってしまった。


晃子は、その時点で、ソフィーに連絡。

「吉祥寺駅に向かっています」

「後は、ポン引きさん、よろしくね」


ソフィーの返事も早い。

「はーい!任せて!光君のお礼が楽しみ!」


晃子も、超スッキリ、ニンマリ顔、思わずクールサインとなっている。


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