厚顔ワグネリアンの実態
光の視線は、そのままソフィーに向く。
ソフィーも、光の意図をすぐに気づく。
「調べてってこと?例のワグネリアンねえ・・・」
と、タブレットをタップし始めると、その表情が変わった。
「うーん・・・宮川健って人だよね」
「親の代から、音楽一家」
「親は、有名な作曲家で、少年少女向けの童謡とか、合唱指導」
「よくテレビに出ていたと・・・」
「その息子か、とにかく金は持っている、親の相続と印税かな」
「最初から楽な暮らしだね」
「音楽評論家・・・実際の演奏はないか」
「親の七光り系かな、小さな頃から音楽家の楽屋の出入りして来て、内輪ネタには詳しい」
「写真を見ると晃子さんの言う通りだね、キンキラキン」
「金髪に染めて、宝石をジャラジャラって感じ?」
ソフィーは、タブレットを操作して、大モニターに宮川健の顔を大写しにする。
それを見た由香里が、嫌そうな顔。
「完全アジア系のノッペリとした顔に、金髪?何を勘違いしているのやら」
由紀も苦々しい顔。
「そういえばテレビで見たことがある、とにかく傲慢な主張、ワーグナー第一主義で、それ以外のクラシックは二級品、それ以外は三下、奴隷の音楽とか」
春奈は何かを思い出した。
「そういえば、週刊誌に叩かれたこともあるね、音楽評論の本は全てゴーストライターとか?それを否定して、裁判して示談金で和解とか」
「交通違反を同乗の妻になすりつけたとか、それで後で離婚とか」
華奈は春奈に驚いた。
「さすが、週刊誌ネタには詳しい、やはり大年増だ」
と余計なことを言うので、春奈に思いっきり足を踏まれ、涙顔になっている。
柏木綾子は、その華奈を「言い過ぎ」と、たしなめている。
ルシェールが晃子に質問。
「ねえ、晃子さん、何で、そんないかがわしい人が音大の理事に?」
晃子は苦々しい顔。
「相当の資金提供と、得意のごり押し」
「ちょうと老齢で辞める理事がいてね、その後釜を狙っていて」
「他の理事連中に資金提供して、票を買収」
ソフィーは春奈が言及した宮川の女性ネタを調べている。
「うーん・・・あちこちと・・・既婚も未婚も関係なく」
「まずは金品を贈り、デートに誘う」
「たいていは、音楽関係者だね、その妻とか、若い演奏者」
「夫も、高名な宮川に睨まれると、何を書かれるかわからない」
「仕事も圧力を受けて、なくなるかもしれないから、妻を差し出す?」
「未婚の演奏家なんて、全くやりたい放題かなあ」
「まあ、あくまでも犯罪としては訴えられてはいないのが、不思議」
そのソフィーに晃子が答えた。
「訴えたら、自分の仕事も無くなる」
「マスコミにばれると面倒だし、泣き寝入りの女も多いとか」
光がようやく口を開いた。
「さて、そういうロクでもないことをしている輩は、気に入らない」
「音楽界に、残すべきではない」
キャサリンの目が輝いた。
「つぶします?」
サラは笑った。
「メチャクチャに恥をかかせて?」
春麗は、何か思いついたようだ。
「ねえ、光君、あの肉厚のお姉さんに協力してもらうとか?」
光も気がついたようだ、クールサインを春麗に送っている。




