楽しい自由曲選びの最中、「魔女」晃子が光に迫る。
柏木綾子のピアノ伴奏で、光がオネスティを歌いだした。
由紀が目を丸くした。
「え・・・マジ?ここまで上手い?声が伸びる・・・プロのテノールにもなれるかも・・・」
由香里
「きれいなテノール、華やかな声だ」
春奈はむくれた。
「いつも歌いましょうって誘ったけれど、面倒って拒否られた、綾子ちゃんでは歌うの?それって年増女差別?」
ソフィーは思い出した。
「前にクリスマスコンサートでルシェールと歌ったなあ、あれは上手だった」
華奈は、全く気に入らない。
「また仲間外れ?綾子ちゃんにも先を越された」
ルシェールが華奈をたしなめる。
「それは華奈ちゃんがピアノのレッスンをさぼるからでしょ?自業自得なの」
結局、キャサリンも光にハモリ始める。
「光君のソロを、女声アンサンブルで支えるのも、面白いかも」
サラ
「となると、由紀ちゃんとキャサリン、私と春麗で?」
春麗はクールサイン。
「はい!OK!さっそく譜面に起こす?」
オネスティが終わった。
光は、巫女全員を見た。
「これでなくてもいいけれど」
「他には・・・アカペラからの発想があってね」
「例の、シンガーズ・アンリミテッドのナンバーからでどうかなあ」
合唱部の由紀が反応した。
「そうか・・・あれは美しい、アカペラ合唱の最高峰」
「アレンジも完璧だよね」
由香里もシンガーズアンリミテッドには詳しい。
「スタジオで、多重録音を繰り返して、素晴らしいコーラスだよね」
「クラシック、ジャズ、ポップス、ロックまで全部がハイセンス」
華奈が珍しく反応が早い。
「あ!知っている!光さんが好きっていったグループだよね、だから私も大好き!」
春奈が、提案した。
「じゃあ、二階の大広間に行って、全員で聴いてみようか?」
春奈の提案が決め手となった。
全員で二階の大広間で、ネット配信のシンガーズアンリミテッドを聴きながらの、合唱コンクール自由曲選定作業を行うことになったのである。
さて、楽しく自由曲選定作業を進める光に来客があった。
ヴァイオリニストの晃子である。
尚、晃子については、華奈が魔女視していて、途端に機嫌が悪い顔になっている。
晃子は、二階の大広間に案内されて、「ああ、シンガーズアンリミテッド大好き」と言うけれど、別の目的があるようだ。
華奈を筆頭に、並みいる巫女たちの厳しい視線などは、お構いなし。
ソファに座り光にグイッと身体を押しつけながら迫った。
「ねえ、光君、お願いしたいことがあるの」
光は、少し嫌そうな顔。
「晃子さん、押しつけすぎ、香水つけ過ぎ」
しかし、晃子は光の反応には引かない。
「うるさい!私は音大の大先輩、しかもプロとしての大先輩!」
「いいから、私の言うことを聞きなさい」
光は、また嫌そうな顔。
「晃子さんって、いつでもどこでも無理やり、大先輩と言ってもね、節度が必要では?」
その光の反応に、全ての巫女が「うん、その通りだ」と、厳しい視線を晃子に向けている。




