なんと弁財天が登場、光はコテンパンに叱られる。
ピンク色に輝く雲から、一体の異形が降りて来た。
するとソフィーが反応。
「あの・・・もしかして弁財天様?」
ソフィーの反応した通り、江ノ島の弁財天そのものの衣装に身を包んだうら若き美少女が立っている。
「はい、その通り」
鈴の鳴るような可愛らしい高めの美声、やはり弁財天だったようだ。
これには、巫女たちはもちろん、岩崎義孝、岩崎華、江戸の大親分まで、全身が硬直する。
ただ、光だけは、いつものハンナリ顔・・・と言うより、少し引き気味。
「ようこそ、お待ちしておりました」ぐらいは言うけれど、弁財天は頬を膨らませる。
「ねえ、阿修羅様の宿り子の光君」
「え・・・あ・・・はい・・・」
光は、恐縮している。
弁財天は、光に強めに迫る。
「どうもねえ・・・私を呼ばな過ぎ」
「無視してる?怖いの?」
光は必死に首を横に振る。
巫女たちは、呆気に取られている。
弁財天は、光の前に立ち、腕を組み、文句を言いだした。
「他の御神霊は、たくさん登場している」
「でもね、実に私の出番が少ない」
「時々、井の頭公園で散歩する時に拝んでくれる程度でしょ?」
「鎌倉に来たこともあったよね、禅寺修行とか言って」
「ねえ、鎌倉と江ノ島って、目と鼻の先って知っているよね」
「それを、どうして挨拶の一言もないの?」
その文句の連発に、光はタジタジ、顔が真っ青に変わる。
しかし、弁財天は、文句を止めない。
「それに上野で初リサイタル?」
「上野にも私はいるの!」
「そこでも一言も無い!」
「マジで呆れる」
うろたえる光の両頬を引っ張る。
「ずーっと近くで心配して見て来たのに、その態度は何?」
「どうやって落とし前をつける?」
光は、頬の痛さで既に泣き顔。
そもそも、両頬を引っ張られているので、言葉も出せない。
すると、突然、弁財天が笑った。
「あーーー!すっきりした!この泣き顔が見たかった」
「子供の頃の泣き顔と同じ」
「マジで可愛い!苛め甲斐がある!」
ようやく両頬から弁財天の指が離れた光は、口をへの字。
「そういうことをするから、呼びたくないの」
「せっかく懐かしい姿を見て、うれしかったのに」
と、ようやく文句を返す。
その光の文句などには、弁財天は動じない。
「うるさい!やかましい!」と、いきなり光の腕を組んでしまう。
そして屋形船の上で、驚くばかりの面々に、明るく大きな声。
「私からは、鎌倉丼!尚、泣き虫光君は鎌倉丼だけにする!」
光は、ますます口をへの字に結んでいる。




