リサイタルの翌日、意外な光
奈良から来た巫女たちや、伊豆からの叔母奈津美、鎌倉からのニケは光の家に一泊、朝食を終えてから、それぞれに帰って行った。
その中で、楓は特に名残惜しそう。
「光君は、まあ、これだけたくさんいるからいいけどね」
「私は・・・」
その楓の心を、超珍しく、光が読んだ。
「ああ、斎藤さんのこと?」
「斎藤さんね、奈良に旅行するんだって」
「柔道が強い大学があるから、そこで練習もするみたい」
「斎藤さんね、おにぎりが好き、作ってあげたら?」
楓は、それで顔が赤くなる。
「こんな玄関先で・・・みんなが聞いている時に・・・」
「実名まで出して・・・」
「しかも、おにぎり?どうしてお洒落なことが言えないの?」
「ほんと、マジに光君って無粋でアホ!」
しかし光には楓の赤い顔など理解できない。
「それ、斎藤さんに、言っておくよ」
「鮭と昆布が好きみたい、それとネギ味噌かなあ」
「大きいのを作ったほうがいい、それから、ほうじ茶も好き」
「斎藤さんも、楓ちゃんと話をしていると、うれしいみたい」
楓も、そこまで言われたら周囲の目を気にしない。
「うん!光君!ありがとう!」
「絶対、ゲットする!」
「巫女さんたちも、アホな光君だけど、たまには気が利く、大切にね!」
と、最後は超ニンマリと帰っていった。
その楓を見送った巫女たちからは、呆れ声やため息やら。
「そんなの自分で聞き出さないと・・・」
「せっかくレセプションでベタベタする時間を作ってあげたのに」
「よりによって、光君に恋の面倒を見られるって、どういうこと?」
「でもさ、光君が聞き出したのは、おにぎりと、その具だよ」
「光君なんてそんなものだよ、上出来さ」
「他人の恋には気がつくのにね・・・」
「・・・私たちには・・・はぁ・・・」
さて、そんな見送りが終わり、光はリビングで、何故か少々落胆顔。
心配になった華奈が光に尋ねた。
「ねえ、光さん、何かあったの?」
光は、渋い顔で素直に答えた。
「あのね、華奈ちゃんも行ったかなあ、神保町の小さな老舗のラーメン屋」
「あのお店、無くなったみたい」
その話に春奈も反応。
「え・・・マジ?あの超美味しい関東風ラーメン?がっかりだなあ」
光は落胆顔ながら、また別の話をする。
「お茶の水の駅の隣かなあ、立ち食い蕎麦の名店があるの」
「店は狭い・・・10人も入れば満員」
ソフィーも、その店を知っているらしい、話も早い。
「そうだね、あそこは美味しい、じゃあ、全員で?」
巫女の誰もが反対しない、早速のお出かけとなった。
その中で、キャサリン、サラ、春麗が興味津々。
キャサリン
「立ち食い蕎麦って、一度食べてみたくて、でも外国人子女で入りづらくて」
サラ
「面白そうだなあ、ワクワクしてきた、お茶の水は楽器屋さんもあるし、ロシア正教の聖堂もあるね」
春麗
「ついでに神田明神も参拝しない?ラブライブの聖地でしょ?」
光は落胆顔から一転、本当にうれしそうな顔になっている。




