光は一夫多妻?しかし理解はしていない。
由香里が厳しいけれど、静かな口調で、泣きじゃくる華奈に声をかけた。
「華奈ちゃん、その苦しい光君を支えるのが、私たちの役目なの」
「それが、それぞれの御神霊から与えられた役目」
「命かけて光君を、そして地球を守るの」
「その気概は持つべきと思うよ」
ガタガタと震える華奈を柏木綾子が支えている。
「やるしかないよ、華奈ちゃん、支えるしかないよ」
その言葉で、華奈も少しずつ落ち着きを取り戻す。
叔母圭子が、強めの口調で巫女全員に話しかける。
「みんな光君と一緒に地球を守って欲しいの」
「光君を、光君のことが好きだったら、絶対に離れないで欲しい」
「私たちが不安になって、光君を支えないで、どうするの?」
「みんな、光君が好きでしょ?離れられるの?」
黙っていたルシェールが、口を開いた。
「愛する夫と、一緒に死ぬくらいの気持がないと、妻とは言えません」
「私は、そう思っています、それ以外には何も考えていない」
「そして、光君の妻になる人は、そう思うべきと」
最後のルシェールの言葉が重かったようだ。
母親世代の巫女はルシェールに頭を下げ、候補者世代の巫女は顔が引き締まった。
ソフィーはルシェールの言葉を聞いて、思った。
「少し年齢差があるけれど、まだ妻になれるかな」
「離れたくても離れられないし、光君を抱きたいし、抱かれたい」
「そうなると、一夫多妻かなあ・・・」
「でも、これだけ多いと、嫉妬も何もないなあ・・・役割分担が先かも」
光に妻を諦めていた春奈も、心に熱いものが復活した。
「ルシェールがメインであるのは、仕方ないかな」
「誰でも、そう思う、安定感抜群」
「でも、私にも、過去世では何度も妻だった実績がある」
「今の世では、年が離れすぎて、つい文句を言ったり、皮肉を言ったり」
「でも、何か役割があるはず」
「圭子さんの言う通りさ、私は光君から離れられない」
「光君の顔が見られない生活も人生も無理」
「光から離れられない、離れた生活や人生はない」
そんな巫女たちの共通する想いはともかく、光は家に着くまで眠り続けた。
ルシェールが抱き起すと、ぼんやりした顔。
「あ・・・寝ちゃった、ごめんなさい」
叔母奈津美が、光に笑いかける。
「ねえ、光君、結婚したら大変ね」
「たくさんのお嫁さんだから、大きなお風呂でないと、一緒に入れないよ」
光は、意味不明でキョトン。
「結婚?誰と誰?」
「大きなお風呂って、奈津美叔母さんの温泉のこと?」
「そうなると、毎日お刺身?」
「それもいいね、あのお雑煮も大好き」
など、とても「光のお嫁さんがどうとか」という話にはならない。
その光の無粋さに、母親世代の巫女は、頭を抱えた。
候補者世代の巫女は、「やはり、光君はアホだ、女心を何一つ理解できていない」となる。
光の家の上空では、八部衆、四天王が呆れたような顔、地蔵菩薩は笑いだしている。




