帰りのバスの中で、巫女たちは涙する。
初リサイタル、レセプションを無事に終えた光は、帰りのバスでルシェールに身体を預けて熟睡状態。
尚、母親世代の巫女も、今夜は光の家に泊まるため、一緒のバスに乗っている。
その母親世代を代表して、叔母圭子が全員に感謝を伝える。
「本当にみんな、ありがとう」
「ようやく光君がプロとなりました」
「いろいろ心配だったけれど、少しだけ肩の荷がおりた」
「菜穂子さんも喜んでいると思う」
もう一人の叔母奈津美も続く。
「ドビュッシーも素晴らしかったけれど、最後のショパンはお母さんの菜穂子さんにプレゼントしたんだね、光君」
「涙が止まらなくなってね」
ルシェールが光に変わってお礼を述べる。
「みんなの支えがあって、光君も安心してプロの第一歩です」
「本当にありがとうございます」
ソフィーが少し厳しめの口調。
「今後の光君の予定は、学園の文化祭」
「学園のコンサートでマーラーの復活を振る」
「それからクリスマスに、ルシェールの教会で指揮とパイプオルガン」
「それが音楽面、年末までにこれ以上は無理と思われます」
話を聞いている全ての巫女が頷くので、ソフィーは話を続ける。
「それから、阿修羅の宿り子としての職務」
「地球よりも大きな大隕石の接近を阻止するため、その破壊」
「その準備作業として、アパート屋上への天体観測施設の設置」
「諏訪大神への参拝、八ヶ岳はその時に」
「大隕石の接近に伴う、地震、火山活動の活発化、異常気象の頻発が予想されるので、対処はもちろん、各国政府と連携して暴動など犯罪発生の抑止」
「それ以外には京都訪問、これも神仏に協力を願うため」
「最後は、奈良興福寺で星の宴」
ソフィーは、そこで言葉を一旦、止めた。
巫女全員がため息をつく。
「大変過ぎだよ、それを全部意識して、光君は動いている」
「ちょっとでも負担を増やしたくないなあ」
「光君が不調になると、地球の未来が・・・」
「早めに進学を決めて、プロになったのが良かったね」
「うん、それで苦しんでいると、とてもじゃない」
ソフィーが再び口を開いた。
「大隕石対策については、すでに阿修羅の段階では対策が出来ているとのこと」
「集められる全ての力を、光君が御神鏡に集めて、大隕石に向けて、破壊光線として放つ」
「それも、地球から出来るだけ遠い位置である時に」
「もちろん、大隕石を破壊するほどの力、集める人にも、相当な負担」
華奈が突然泣き出した。
「光さん、無理しそうで・・・」
「光さんにしか出来ないの?それ・・・」
「下手をすれば、死んじゃうよ」
「嫌だよ、そんなの、私たちだけ生き残って、光さんが・・・・死んじゃったら」
「絶対・・・絶対・・・光さん、そんな体力ないもの・・・」
「今だって、疲れて寝ちゃっているでしょ?」
華奈は号泣状態。
他の巫女も苦しい思い、泣き出している巫女も多い。
ただ、由香里だけが、華奈を厳しく見つめている。




