付け人田島源一に対する警察官の取り調べ
さて、警察に逮捕連行されていった赤いドレスの女の子岩崎華の付け人は、取り調べを受けながら、真っ青になっている。
また、付け人の名前も、取り調べの中、田島源一と明らかになった。
警察官が厳しい顔で付け人に告げる。
「田島さん、あなたが首を絞めた高校生の男子は、総理の直轄の特別調査官」
「明確にその業績について説明はできないけれど、我が日本と世界の危機を何度も救った神のような存在」
「それについては、与党も野党もなく、評価してもしきれない」
「この日本と世界の平和にとって、欠かすことのできない存在」
田島源一は、震えながら、言葉を返す。
「・・・そんな・・・恐れ多い・・」
「私はお嬢様の安全だけを職務として、ほぼお屋敷の中だけで生活をしていて」
「そんな話など知らず・・・」
「あの高校生の男の子の・・・目力でしょうか、それに驚いたお嬢様が、ヘナヘナと座り込んでしまった」
警察官は、呆れたような顔。
「ソフィー調査官、彼女も公安にトップクラスの調査官で総理とも懇意だけれど・・・提供された現場の動画では」
「田島さんが、意味不明にも激高、そのまま理不尽にも謝罪を要求したり、首を思いっきり絞めたりしている」
「貴方だって、そこまでの力を込めれば、どのような被害が出るか、わかっているでしょう」
「下手をすれば死に至るほどの筋肉の張りが、動画に映っている」
その警察官の手元資料には、「田島源一、柔道五段、国体二位」の書き込みがある。
田島源一は、ガックリと肩を落とす。
「私は、とにかくお嬢様を守ろうと・・・お嬢様に恥じをかかせてはいけないと・・・何しろ名門財閥の御令嬢様なので・・・」
「それが・・・こんなことに・・・」
取り調べの警察官は、田島源一にさらに追い打ちをかける。
「あの楽譜売り場のフロアにいた客がね、テレビ局と週刊誌にネタとして持ち込んだみたいだ」
「名門財閥お嬢様の暴言と御乱行とね」
「銀座の大楽器店の楽譜売り場で、周囲の来店客に暴言、罵倒をし放題」
「普通に楽譜を買おうとした高校生男子が、自分に頭を下げないことに腹を立て、また暴言」
「お付きの紳士が、その高校生の男の子の首をいきなり絞めあげ」
「通報でかけつけた警察官により現行犯逮捕ってね」
田島源一は、ますます震える。
「あの・・・実名は出るのでしょうか」
警察官は、首を横に振る。
「そんなことは、本官は知らない」
「実名報道するかどうかは、書き手が決める」
「すでにソフィー調査官により警察庁、官邸では内容を把握している」
警察官は、ここで一呼吸。
「銀座の楽器店に残して来た警察官によると、お宅の財閥の当主が銀座の楽器店に入ったらしい」
「おそらく財閥を代表しての謝罪なのかな」
田島源一は、苦しそうな顔になる。
その田島源一に、警察官は言葉を続ける。
「全く相手にされなかったのかな、ひどく肩を落として、店に入った十分後には店を出ていったとのこと」
田島源一の顔には、苦しさと困惑が浮かんでいる。