光のプロデヴュー前日(2)
ソフィーが大広間に入って来た。
そして開口一番、光の文句を言い始める。
「は?光君のPC?」
「あーーー!ひどいもの!メールはたまり放題」
「しっかり更新もしないし、ほとんど開くこともない」
「だから光君に連絡を突然したい場合は、ルシェールとか他のお姉さんたちにするの、光君はあてにならないもの」
ルシェールも、嘆く。
「本当に困るんです、あの子」
「私がいないと生きていけないかも」
「お母さん兼お姉さん兼妻です」
「恋人の段階が、実に少ない」
ソフィーと望月梨花は「妻?」で顔をしかめるけれど、ルシェールはソフィーに尋ねた。
「ねえ、警備とかの話?」
ソフィーは頷く。
「とにかくチケットを買ってくれた面子もすごいからさ」
望月梨花も、それを思い出した。
「はい・・・首相、官房長官、文科相」
「アメリカ大使館、中国大使館、ギリシャ大使館」
「カトリック教会やロシア正教、仏教界で・・・興福寺、元興寺、東大寺、円覚寺、明月院、建長寺」
「岩崎義孝が声をかけた財界の大物連中」
「音楽界も超大物ぞろい」
望月梨花のひるんだ顔を見たソフィー。
「大丈夫、警察も万全の警護をするし、江戸の大親分も抜かりはないから」
「会場内は、坂口先生門下のオリンピック級の柔道選手が警護する」
ルシェールがソフィーの顔を見た。
「ねえ、そうなると、坂口先生門下の斎藤君も警護?」
ソフィーは、ルシェールの気持がわかった。
「うん・・・だから、楓ちゃんも来る」
ルシェールのたじろぐ顔を見たソフィー。
「後はわかるでしょ?圭子さん、春奈さんのお母さんの美智子さん、ルシェールの母のナタリー・・・私の母のニケも来る」
「もちろん、光君の伊豆の奈津美叔母さんも来る」
うれしいような不安なような顔になったルシェールにかまわず、望月梨花は話を進める。
「花輪があちらこちらから・・・」
「さきほどの購入者さんからもありますし」
「伊勢神宮、春日大社、住吉大社、寒川神社、諏訪大社からも」
「おそらく祝電も相当数に及ぶかと」
ソフィーはルシェールの顔を見た。
「レセプションの料理の準備は?」
ルシェールが薔薇のような笑顔に変わった。
「うん、みんな光君のお母様のレシピ」
「光君が好きなものばかり」
「もちろん、あの桜のシュークリームケーキも」
「それに・・・また私のオリジナルケーキもね」
ルシェールがクスッと笑うと、ソフィーは、そのケーキがわかったようだ。
口を押えて笑い出している。




