光のプロデヴュー前日(1)
光のピアニストとしてのプロデヴューの前日になった。
光の家の二階の大広間で、マネージャーのルシェールと大手広告会社の望月梨花が打合せを行っている。
ルシェール
「食欲は普通、体調は風邪は引いてないので、ほぼ不安はありません」
望月梨花
「チケットは完売しています」
ルシェール
「服装は黒のタキシード、私が縫いました、写真も撮りました」
望月梨花は目を細める。
「ますます美形、ファンも増えるでしょうね」
ルシェール
「公式ファンクラブは、今回の結果を見てからで」
望月梨花
「全然問題はありません、今後は私が光君の専門担当です」
「演奏のCDとかダウンロード、動画、パンフレット関連もお任せ願います」
ルシェール
「光君は音楽は真面目なのですが、それ以外に話を広げると難しくなります」
「それ以外は、怠け者なので、苦労すると思います」
望月梨花
「そういう男の子、好きです」
「ついお世話したくなりまして、手取り足取りで」
ルシェールは首を傾げる。
「いや・・・その怠け者の程度は、半端ではないので・・・」
「私も、ここに住む女性たちも、何度も呆れ果てたことか」
「並みの怠け者ではありません」
望月梨花も首を傾げた。
「いったい・・・それは具体的には?」
ルシェールが、少し苦々しい顔で、説明をする。
「まず、スマホの取り扱いが、アウトです」
「充電を忘れる、部屋に忘れる、あちこちに忘れる」
「メールを送っても、まともに開けない」
「ひどいのは、開き方を教わりに来る」
「それも、一週間も経ってから」
「だから、もちろん返信はない」
「返信がない相手は、不安に思うし、悩む」
「それで、意を決して恐る恐る光君に尋ねる」
「どうして返信してくれないの?嫌いになったの?」
望月梨花は、その話に不安を感じだした。
「これは・・・光君と直接交渉は難しいってこと?」
「とても単独デートは出来ないよね・・・あらーーー」
ルシェールは、光の惨状を話し続ける。
「すると光君、え?メールって何?見てないとか」
「面倒だよ、そのまま口で言えばいいでしょ?一緒に暮らしているんだからとか」
「それはそうだけど、ちょっと居場所が離れているとか、直接言葉だと、他の女の子が聞いていて言いづらいこともあるんです」
「でもね、光君は、そういう乙女心の繊細さなんて、なーーーんにもわからない!」
望月梨花は、頭を抱えた。
「となると、SNSとか、知らないのかなあ」
ルシェールは即答。
「知るわけないです」
そしてポケットから出したのは、光のスマホ。
「さっきもリビングに置き忘れて、充電もね、15%しかない」
「おそらく、置き忘れたことも、覚えていないはず」
望月梨花は心配になって、ルシェールに尋ねた。
「あの・・・PCメールは?」
ルシェールは、ますます表情を暗くしている。




