井の頭公園散歩(1)
久しぶりに光と腕を組んだ春奈は、超ご機嫌。
「まじで、幸せ、はぁ・・・懐かしい」
華奈も同じようなもの。
「長年の苦労が、これで報われた」
他の巫女が、うらやましいような呆れるような表情になるけれど、光はやはり光だった。
まず、春奈に
「ねえ、春奈さん、最近、ふっくらしたの?そうだよね、よく食べているもの」
となるし、華奈には
「おでんの具は何にするの?あそこの大根は関西と違って味が濃いかも」となる。
春奈は、「はぁ・・・これが光君」と顔を下に向けるし、華奈は「ようやく腕を組んだのに・・・おでん?」と涙目になる。
そんなどうでもいい瞬間があったけれど、一歩玄関を出れば、いつもの警備体制となる。
由紀、キャサリン、サラ、春麗が前後左右をガッチリと光を警護するのである。
しかし、出て来る話題はたいしたものではない。
由紀
「焼きそばも捨てがたいなあ」
キャサリン
「たこ焼きありましたっけ?」
サラ
「うーん・・・磯部巻き食べたいです、日本のファーストフード好きです、もっと海外に展開するべき」
春麗
「私はラムネの飲み方を覚えたい」
柏木綾子
「おやきとか、そういうのを食べたいなあ」
・・・・そんなことを言っていると、久我山と井の頭公園は近い、すぐに着いてしまった。
光は、「それは礼儀だし」との理由から、まずは弁天様にお参りをする。
その弁天様に春麗が反応。
「中国古代の衣装だよ、なんか懐かしい感じ」
光はその春麗と話が弾みだした。
「そういえばね、仏像ってあるけれどね、あの衣装は特別のものではないみたい」
春麗
「へえ・・・というと?」
光
「如来とか菩薩とか天部とか明王ってあるでしょ」
春麗
「うん、独特だよね」
光
「如来は釈迦が成道後の布だけのシンプルな姿」
「菩薩は釈迦が王子だった頃の姿」
「天部は王子時代の釈迦の家来の姿」
春麗
「ねえ、光君、それは本で読んだの?」
光は首を横に振る。
「いや、インドの古典舞踊団の衣装を見た時に気がついた、これは、そっくりだなあって」
さて、光が春麗と真面目な話に弾んでいるのが、他の巫女は気に入らない。
ソフィーが大きな、そして話を邪魔するような声。
「ねえ、何を食べるの?おでん?焼きそば?お好み焼き?」
由香里も大きな声。
「ねえ、今川焼とたい焼き、どっちにするの?」
少々、返事に困る光の手を、春麗がサッと握っている。




