マスコミには極秘にする理由
官邸からの承諾メールを受け取った光は、厳しい表情のまま。
「現時点では極秘にしたい、特にマスコミ、リークしたがる官僚」
「不正確で憶測でしかない報道を垂れ流しにされると、危険極まりない」
「官僚自身が、秘密を漏洩する場合もある」
国家公務員でもあるソフィーには耳が痛い話になるけれど、「極秘」の重要性は、よくわかる。
「どうでもいい話は、ガラス張りでもいいけれど」
「社会的混乱を招くような話は、情報公開になじまない」
「犯罪者と犯罪被害者の報道でも、毎回に問題になる」
教師でもある春奈が、口を開いた。
「そうだよね、マスコミは、とにかく謝罪を求める」
「犯罪者の家族も、会社も、直接関係なくても、謝罪を求める」
「少しでも謝罪会見が遅れるとか、あいまいな態度を取ると、鬼の首を取ったように怒鳴り、記事にする」
由香利が、春奈を補足した。
「いや、犯罪者だけではなくて、ひどいのは犯罪被害者まで、強引で恫喝的な取材の対象にする」
「少し前に、小学校のバス登校中の生徒が襲われた時でも、マスコミは管理不足として小学校に謝罪を求め、そこの小学生が震えてバスに乗っている写真を撮った」
由紀は、ため息をついた。
「報道の自由はあっても、責任は取らない」
「よほどのことでないと、謝罪会見を自分たちは開かない」
「地球が大隕石で破壊される可能性があるなんて、報道されたら、マジに大混乱するよね」
柏木綾子は難しい顔。
「法律とか守らない人も出てくる」
「どうせ地球が壊滅するから、何をしてもいいとか」
キャサリンは目を閉じて考える。
「特に地球壊滅を信じる人たちによる社会的混乱は避けられない、しかし、その人たちとて、社会的混乱を引き起こして、何の特になるのか」
サラ
「一時的にでも、豪華な暮らしをしたい、そのためには犯罪行為をしても、どうせ地球は壊滅するから、どうでもいい・・・そんな感じ?」
春麗は哀しそうな顔。
「自殺者も増えるかも知れない、先行きを悲観して」
「仕事にも励まなくなるのは、当たり前」
「学生は勉強もしなくなるだろうね」
光は、また別の観点を示す。
「この世を諦め、あの世での幸福を約束するとかで、法外なお布施を要求する坊主も出てくるかな、あちこちでね」
ずっと黙っていた華奈が、光に尋ねた。
「ねえ、光さん、それでお布施を払ってしまうと、地球壊滅がなくなった場合に、余分のお金は戻って来るの?」
光は、軽く首を横に振る。
「絶対戻って来ない」
「地球壊滅を防止したのは、お布施の功徳とかにする」
「それどころか、感謝のお布施まで請求するだろうね」
光と巫女たちが、そんな話をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
そしてインタフォンから大財閥当主岩崎義孝と、孫娘華の声。
華奈がいつもの通り、動きが速い。
「はーい!」と玄関までダッシュ、ドアを開けている。




