秋の美しい星空の下、深刻な話
ルシェールとソフィーがアパートの屋上に出ると、春奈からの連絡通り、光は夜空を眺めている。
そして、春奈は当然、他の巫女も、同居ではない華奈も含めて光の周りで、夜空を見ている。
ルシェールが光にスタジャンを渡すと、光がお礼を言う。
「ありがとう、少し寒かったから」
ソフィーは、厳しめの言葉。
「あのさ、ストリート演奏が終わったからといって、気を抜いていない?」
「また、風邪引いたらどうするの?」
光は、少し申し訳なさそうな顔をするけれど、その指を北極星の方向に向けた。
「うん、ごめんなさい、どうしても確認したいことがあってね」
柏木綾子が、光の指の先を見る。
「確かに、いつもと・・・違うような・・赤いというのか、明るいというのか」
ソフィーも、その目を凝らす。
「うん、かなり強い明るさかなあ」
光が、腕を組んだ。
「ここにも、大望遠鏡がいるかなあ」
「その観測施設を作る」
春奈の声が震えた。
「光君、前に話をした、地球より大きな隕石が迫るってこと?」
「それが見えるの?」
光は、静かな顔で頷いた。
「うん、阿修羅君から、その特徴を聞いている」
「綾子ちゃんは、諏訪様の巫女、星が良く見える場所の信州に縁が深い、宇宙透視の力がある」
華奈が不安そうに光に尋ねた。
「ねえ、光さん、本当にその大隕石が来るの?」
光は静かな顔のまま。
「うん、おそらく、その可能性は高い」
「でも、対処は出来る」
「かなりな力を使うけれど、地球自体は守る」
巫女全員が、この話は、光ではなく、阿修羅が話していると理解する。
そもそも、寒がりの光が、薄手のシャツで、夜に屋上に出ることも考えられない。
ソフィーが阿修羅と化しはじめている光に尋ねた。
「何か、私たちで対処すべき具体的なことは?」
ソフィーの質問で、光は両手を胸に前で合わせ、阿修羅の姿に完全に変化した。
そして阿修羅の姿で、質問に答えた。
「問題は、近づく巨大隕石で、一定の地震、火山噴火が発生すること」
「しかし、ある程度引き付けなければ、その隕石を地球からでは破壊できない」
「それを、普通の人に理解させることは、非常に困難」
「世界の終末、裁きの日が近づいたとかを言いふらし、社会的な混乱を引き起こそうとする輩」
「自暴自棄となり、不品行に走る輩」
「狂気に走り、虐殺も発生するかもしれない」
「至らぬ人間ゆえ、仕方がないかもしれないが」
阿修羅の声には、哀しさが生じている。
キャサリンが阿修羅の言葉に、冷静に答えた。
「つまり、まずは各国政府の、コントロールも必要ですね」
「しっかりと情報を提供しあうこと、意味のない戦争行為をしかけないこと」
サラも中近東に縁が深いので、難しい顔。
「自暴自棄のテロ行為も発生しやすくなる」
春麗は顔をしかめた。
「我が、中華民族は、燎原の火と言って、一度火が付くと、燃え尽きるまでの暴動が起きる、だから政府も統治には苦慮し続けてきた」
秋の美しい星空の下、深刻な話が続いている。




