スピーチを終えて疲れる光と周囲の人たち
光は、スピーチを続けた。
「今後、プロとして活動する日が近いと思います」
「でも、プロということでもなく、アマチュアということでもなく」
「聴いてくれる人に、喜びと力を与えられる演奏家になりたいと思っています」
「その際には、皆さまのご協力とアドバイスをいただいて、良い演奏ができるように、誠心誠意努めてまいります」
光は、ここで頭を下げた。
「はなはだ、簡単ではありますが、これで挨拶とさせていただきます」
そして光が、その顔をあげると、また大きな拍手に包まれる。
光の隣に、世界的大指揮者小沢氏がグラスを二つ持ち、立った。
そのグラスを一つ、光に渡すと、司会の望月梨花。
「それでは光君の御挨拶に引き続き、小沢先生の乾杯の御発声となります」
小沢が、ニコッと笑い、乾杯の挨拶をはじめる。
「本当にみんな、ありがとう!」
「素晴らしい指揮者、私の後継者の光君」
「そして、かの菜穂子さんの息子の光君」
「その栄えある生演奏を祝し、今後の成功、みんなの成功を願って!」
小沢はグラスを高く掲げ、明るく響く声
「乾杯!」
全員が乾杯と唱和し、レセプションが始まった。
光は、「はぁ・・・」とため息をつき、巫女たちの中に。
ルシェールが光の腕を組む。
「お疲れさま、光君、御上手でした」
春奈は、ウルウルしている。
「学校の授業の時より上手だった」
ソフィーはホッとした顔。
「案外、芯は強いの、ひ弱だけど」
他の巫女も様々に論評するけれど、光はスピーチで疲れたようで、結局、壁に沿って並べられた椅子に座ってしまった。
その光の前に、楓が来た。
「ねえ、光君、食べないの?」
光は、首を横に振る。
「今になって、胃が痛い」
「演奏やらスピーチで疲れた」
ルシェールも不安に思ったのか、光の隣に座る。
「水分は必要だよ、光君」
「のどがカラカラでしょ?」
と、アイスミルクティーを光に渡す。
光は、「ありがとう」と、ゴクゴク飲んでいる。
光の前にヴァイオリニストの晃子が歩いて来た。
「ねえ、光君、お願いがあるの」
光が、晃子の顔を見ると、晃子は光の手を握る。
「今度、リサイタルしたいの、伴奏して欲しい」
その晃子に、ルシェールが一言。
「そういうことは、まずマネージャーの私に」
その晃子を魔女と危険視する華奈も小走りで光の前に。
「いけません、光さん、レッスンはあくまでも光さんの家でお願いします」
「光さん独占禁止法を制定しましょう」
晃子と華奈が「視線バチバチ」の状態になる中、岩崎義孝が光の前に立った。
「光君のスポンサーになりたいのです」
「本当に大恩がありますし、将来も有望」
「何より、私は、光君の演奏に惚れました」
そんなやり取りがある中、司会進行の望月梨花は,本当に驚いている。
「何?この祝電の数とメンバー・・・首相と官房長官、アメリカ大使館、ギリシャ大使館、中国大使館、春日大社、伊勢神宮、熱田神宮、神田明神、住吉大社・・・東大寺に興福寺に元興寺、赤坂の教会・・・まだまだ、すごい面子ばかり・・・」
「光君って、マジにすごいや、ゲットしたくなった」
望月梨花は、司会を司会原稿ごと、他のスタッフに譲り、光を目指して歩き出した。




