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女神の舞の癒しと、光の回復特効薬

「女神」は優雅に舞い続ける。

その舞が、見ている人全てを癒し、生きる力を与える。


「はあ・・・ありがたい・・・」

「生きてて良かった」

「もっと見ていたい、いや、ずっと見ていたい」

「身体の奥深くから、力が湧いて来る感じ」

「涙も出て来る、それで、心がスッとする」

「たまりにたまった毒素が消える・・・」

「胃が痛かったけれど、女神の舞を見ていたら、治った、お腹が減ってきた」

「きれいな女神様だなあ・・・でも・・・懐かしい感じ」

「やさしくて、力があって・・・」


口々に出て来る言葉は、感謝ばかり。

そして、全ての人の手のひらに、何かが乗った。


「あれ?小さなチョコレート?」

「うん・・・え?中に・・・何か・・・」

「わ!リンゴ?チョコとリンゴ?美味しい!」

「ますます元気が出てきた!」

「女神様、笑ってる、うれしそう!」

「きっと、女神様からのプレゼントだよ、はぁ・・・幸せ・・・」


舞い続ける女神は、ようやく正面を向き、止まった。

そして、若々しく、美しい声が聞こえてきた。


「舞を見てくれて、ありがとう」

「皆、元気で」


その言葉が、最後だった。

白紫に輝く雲は、ゆっくりと消え、女神の姿も消えた。


聴衆の目の前には、恥ずかしそうな顔をした光と、オーケストラ、合唱団。


光は、ゆっくりと話し出す。

「今日は、演奏を聴いていただき、本当にありがとうございました」

「少しでも、音楽の楽しさと輝きを感じていただいて、皆さまの元気につながれば、幸いと思います」

光は、深く頭を下げ、再び地鳴りのような拍手に包まれることになった。


東京駅丸の内南口広場での、全ての演奏が終わると、大財閥の当主岩崎義孝が光の前に歩いて来た。


「本当に、感動しました」

「光君の神がかった第九、皇帝協奏曲に加えて」

「女神様まで・・・お出ましになられるとは」


光が、少し笑うと、涙顔の望月梨花。

「今日の演奏者全員、日比谷のホテルでレセプションとなります」

「バスをご用意いたしましたので、光様も、お乗りになられてください」


合唱団を抜けて、ルシェールが小走りに光の前に。

「光君、体力残ってる?」

やはり、光の演奏後の体力には、不安があるようだ。


しかし、光は、いつもの青い顔になっている。

「うーん・・・寝たいかも」


ルシェールは苦笑、バッグから「何か」を取り出す。

岩崎義孝はびっくり。

「おにぎり?」


ルシェールは、おにぎりを光に渡す。

「葉唐辛子のおにぎりです、光君のお母様のレシピで、少しキツメの味です」


その「キツメの葉唐辛子おにぎり」を、口に入れた光は、いきなり背筋を伸ばしている。

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