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皇帝の後、不思議な白紫の雲が発生

輝きと喜びに満ちた第九に続いて、光のピアノと世界的大指揮者小沢氏の指揮により皇帝協奏曲も、東京駅丸の内南口広場に集まった聴衆を魅了した。


「かっこいい!」

「いいなあ!気高くて、力あふれる」

「あの男の子に惚れた!」

「ねえ、あの男の子誰?プロ?」

「可愛いし・・・写真撮る!」

「うるさい!音楽聴きたい!」


最初は、ざわめいていた聴衆は、またしても音楽に心も身体も、わしづかみにされ、揺さぶられるのみ、声など出せる人がいない。


合唱なので出番がない由紀は思った。

「本当に私たちだけでない、聴いている人が全員目がキラキラして、喜びにあふれて聴いている」

由香里も、感動している。

「お金も、儲けも関係ない、ただ目の前にいる人に、音楽の楽しさを感じてもらいたい、それで生きる活力を高めてもらいたい、それが光君の思い、それが見事に実現している」

岩崎華は、泣いている。

「第九で感動して、皇帝ではもう・・・うれしい、光さんを見ていたい、ずっと」

柏木綾子もウルウル。

「これだと邪霊なんて、入って来れない、入って来ても全て浄化して善霊に変えているよ、光さんに逢えて良かった」


皇帝協奏曲が華やかに終わった。

光と小沢が、聴衆に向き直ると、再び地鳴りのような拍手とともに、「アンコール」の大合唱。


進行を担当する望月梨花は、不安を覚えた。

光からは、「皇帝の後、一曲だけある」と聞いてはいたけれど、曲名については知らされていない。

次の一曲が終わっても、まだアンコールがかかったらどうするのか、とにかく聴衆は熱狂状態になっている。

いかに、警察や江戸の大親分が監視体制を引いていると理解してはいるけれど、不安はぬぐえないのである。


そんな聴衆の熱狂的な「アンコールの大合唱」の中、光は静かに一歩、前に出た。

そして、その両腕を一旦、まっすぐに天に向け、胸の前で合わせ、一言。


「珍しく、これも喜びの音楽を」


途端に、不思議なお神楽が、夜空の上から聞こえて来た。

横笛と琴、鼓の音、まるで今までのオーケストラやピアノとは全く異なっている。

その不思議なお神楽の音が大きくなるにつれて、薄く白紫に輝く雲がゆっくりと降り、東京駅丸の内南口広場一帯を包み込む。


「これは・・・何?」

「夜なのに、白紫の雲?霧?ここは・・・どこ?東京駅ではないの?」

「あれ・・・藤の香りがする」

「でも・・・何か・・・身体が浄められる感じ・・・スッとして来た」

「懐かしい感じ、いいなあ、こういうの」

「日本そのもの・・・でも、それがメチャうれしい」


お神楽の音が、明るさを増すにつれて、聴衆から驚きの声があがった。


「え・・・白紫の雲に、巫女様が浮かんでいる」

「うん、舞っている」

「すごく、きれいな・・・女神様みたい・・・」

「いや・・・マジに女神様、浮かんでいるもの・・・お祈りしないと・・・」


東京駅丸の内南口広場の全ての人が、「女神」の舞う姿から、目を離せなくなっている。


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