東京駅丸の内南口広場で第九を開始
薄いピンクのワンピースを着たサラがチェロを持った。
光が真っ白な椅子を持つ。
二人で、東京駅丸の内南口広場の中央に歩いていく。
その二人の後に、世界的大指揮者の小沢氏と、これも超一流ヴァイオリニストの晃子が歩く。
さすが東京駅前の人通りが多い中、それでも、その4人に目を向ける人も出てきた。
「ねえ、あのチェロの女の子、外国人だけど」
「うん、すっごく可愛い、美人だよね、スタイルもすごい」
「何かするのかな・・・」
「椅子を持った男の子も、超美形・・・はぁ・・・可愛い」
「え?その後ろに・・・小沢さん?あの超有名な指揮者でしょ?」
「ヴァイオリンを持っている・・・」
「もう一人のヴァイオリンの女性は・・・あの・・・晃子さん?」
そんな声の中、サラは椅子に座り、チェロを弾き始める。
途端に。聴衆の輪が作られ始める。
「あ・・・第九だ・・・」
「いいなあ、あのチェロ・・・メチャ癒される・・・」
「日頃の疲れが取れるよ・・・」
「あれ?小沢さんと晃子さんが、第九に合わせている・・・」
「メチャ、上手だあ・・・」
光は、その聴衆の輪をスッと抜けて、イベント進行の望月梨花の横に立つ。
望月梨花
「出だしは、完璧です」
光
「後は、三々五々、演奏者が第九に加わる」
望月梨花
「演奏者の誘導は、我々にお任せください」
その望月梨花の言葉通りに、次々に演奏者が第九に加わっていく。
全く混乱がないことから、準備の完璧さがよくわかる。
光が感心していると、望月梨花。
「まあ、聴衆も何となくわかっているのです」
「音楽を聴きたいので、自然に演奏者への道を開けます」
「最初が肝心で完璧でしたので」
キャサリン、春麗、華奈も第九の演奏に加わるべく、歩いていく。
そのほかの巫女は、合唱者として参加するので、事前打ち合わせで指定された合唱団に向けて歩いていく。
光の隣に、ルシェール、そして楓が来た。
光はにっこり。
「ありがとう、そろそろだね」
ルシェール
「うん、思いっきりね」
楓
「奈良に動画で送る」
光は、その言葉を受け、すでにオーケストラと化した演奏家たちの前まで歩き、指揮棒を振り始める。
大ピアニストの内田先生が、姿勢を正した。
「うわ!いきなり音楽が変わった」
「なんてパワフル・・・すごいなあ・・・」
そのオーケストラの演奏に合唱が加わると、さらに華やかさが増した。
「まさに、祝祭音楽・・・聴いている人の目が、すごく輝いている」
望月梨花は、この時点で、ストリート演奏の大成功を実感している。




