ストリート演奏当日の朝 (2)
ルシェールとサラが協力して作った朝食は、「地中海風魚介類のトマトソースリゾット」に、ふんだんにチーズを振りかけたもの。
魚の旨味、トマトの甘く鮮烈さ、チーズのコクも渾然一体となり、全員が食が進む。
さて、今日のイベント進行管理の大手広告会社の望月梨花は、緊張のあまり、予定よりも早く光の家に到着してしまった。
そのため、朝食に、ご相伴となり、実に感激する。
「はぁ・・・朝早く来てしまって、悪いかなあと思いいましたけれど」
「すごく美味しいです、美味しさのレベルが違います、極上です」
「光君は、毎日、こんな超美女や美少女に囲まれて、こんな美味しいものを?」
「まるで、ハーレム生活ですね」
光は、キョトンとなっているけれど、春奈が少々補足。
「かつては、コンビニ食生活でした」
「そんな光君を心配して、少しずつ集まってきて、ようやく」
ソフィーが厳しい顔。
「光君が大家で、私たちは単なる同居人」
「万が一にも、余計な情報を流さないように」
望月梨花は、ソフィーの言葉の厳しさにビクンとなる。
由香里も、ソフィーに続く。
「もし、程度の悪い情報を流したら、親父の一家も黙っていない」
「それは、わかるよね」
望月梨花は、ますます身体を固くするけれど、光が声をかけた。
「そんなに緊張しないでかまいません」
「僕は、演奏するだけ」
望月梨花は、ようやくホッとして、当日の段取りの再確認を始める。
「すでに、音楽大学からの演奏者は、周辺のホテルに待機しています」
「はい、楽器演奏者と合唱の人も全員、揃っております」
「ピアノも広告会社の社員がすでに準備済み、いつでも運び込めるようになっております」
サラが望月梨花に確認。
「私のチェロが最初ですね、第九のメロディーを奏でる」
望月梨花も頷く。
「後は、全て打合せ通り、手順通りに」
そんな話をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
弾かれたように華奈が玄関に向かうと、大指揮者の小沢氏と大ピアニストの内田先生、ヴァイオリニスト晃子の顔。
華奈は緊張気味に、三人をリビングに迎え入れる。
小沢氏
「最初に僕と晃子さんと、サラで第九のテーマを合わせよう」
晃子
「最初から、もう少し華やかにしたいなあと」
内田先生は、ニコニコとするばかり。
進行担当の望月梨花は、困惑した顔で、光を見ている。