あかいの
みどりと冬馬はそれぞれの家ではなく、集落の真ん中にあるカイの家に連れていかれた。
朝方、歩いて帰ってきたとは思えないほど、二人は弱っていて、おれが手を取ったとたんに倒れてしまった。
今は昼過ぎだけど、ずっと寝てる。
水を飲んだり、うなされたりもしない。ずっと、静かに寝てる。
二人の母さんが、ずっと近くで泣いてる。
悲しんでいるようにも見えるし、安心しているようにも見えた。
えらい人たちがその後ろに立っている。
おれもいろいろ聞かれたけど、たいしたことは何も言えなかった。
二人が、どんなかんじで帰ってきたのか。
ただそれを、何度か聞かれた。
二人が戻ってきてほっとしているのは、家の外にいる人だけだったかも。
ただ、みおと春貴は、ビクビクしていた。
二人は戻ってきたふたりの近くに行くことはなく、一度見ただけで、逃げてしまった。
おれもどことなく落ち着かなかったんだけど、夕暮れ前に、カイがうちに来てくれた。
おれはふとんの上で、カイをむかえた。
「…………」
「……ごめんな、こんなカッコで」
「……いい。べつに、気にしない」
おれもカイも、いつもよりうまくしゃべれない。
なんでだろうな。
「さっき、一瞬だけみどりが起きてさ。ポツッとひとこと言って、また寝ちゃったんだ……。
『赤いのが』って」