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67 幻術

お待たせです。

(闘いにおいて、正々堂々とかを貫くのは人間どもが好きな宗教に入れ込むくらい愚かなことだ。最後に立っていた者が勝者、勝者こそが正義だからだ)


 修道女たちが一斉に頭巾を取るとキュルソンの罠の犠牲となり死んだはずのリーベンスと言う名の少女と瓜二つの顔、リサと寸分変わらない美少女の顔が半分ずつとなった。

『な、何よ!キールの豆腐メンタルに漬け込むにも杜撰すぎるわ。もう、どう見たって偽物だろうって見え見えなのに、ご丁寧に五人ずつ揃えるとか悪趣味だけど・・・・・・』

 呆れながらも憤慨するアンドロマリウス、魔人にしては性質が甘過ぎるのはご愛敬だが。

 自身満々に狼狽えるキールの様子を窺う神父ザキエルに不審の目を向けていたホムンクルスは、声を潜めた。

『アン、結構キールにはあざとい目くらましが聞いているぞ』

『そんなぁ、どうしましょう?』

「アン、手出しは無しだ。お、俺がやる」


 キールは鍛冶の達人ワフード作の短剣を引き抜くと震える手で構えた。

 なんの緊張もせず間合いを詰めるリーベンスとリサの顔を持つ修道女たち、がちがちに固まったキールと比べれば前者は達人の域に到達しており、後者は素人に毛が生えていると言えばお世辞が過ぎるものだろう。

『ご主人様、どうします?放っとくとキールが死んじゃいますよ』

『いや、この世の(ことわり)を超えた力がキールの身体を守るだろう。彼女たちには傷一つ付けられやしない。だが・・・・・・』


 リーベンスの顔をした修道女の一人が更に間合いを詰め、必殺の剣筋はキールの左首から右斜め下へ袈裟懸けとなった。一秒の半分くらい待ってキールの首から鮮血が迸る。


 だが、キールの死が幻であったかのようにリーベンスの顔をした修道女が左首から鮮血を流しながら頽れた。

『ああ、キール。やはり、顔だけ似せた偽物ではキールを倒せませんね。

 よかった』

『果たしてそうかなアン、身体は無事でも・・・・・・』


 リサの顔した修道女の一人が裂帛の気合をもってキールに迫ると隙だらけの左胴を右から一刀両断した。身体の上部が左にズレ落ちて逝く瞬間のキールの叫びが木霊した。

「やめろー!」

 やはり先ほどの死に様が幻視であったかのように、リサの顔をした修道女が胴を一刀両断され、上半身が左にズレ落ちた。


「ふふふ、どうしましたか?キールさん。こちらにはまだ、八人残っていますからね。数の上では断然有利、止める訳がないでしょう」

「その修道女たち、その娘たちを解放しろ。要求は何だって飲むから!」

「そうですねえ、別にやって欲しいことなど・・・・・・

 そうだ、ありましたよ。そこのホムンクルスと手下の魔人を片付けて貰えれば彼女たちを解放してあげますよ。

 いい話でしょ、キールさん。あはは、はは」


「くっ、アン短い間だったが楽しかったよ・・・・・・

 ホムンク、いやソローン。こんなことになって済まない」

 キールは修道女たちから背を向けると、短剣を構えてホムンクルスとアンドロマリウスに対峙した。

 

なかなか、ぶっ飛んだ感じは表現しづらい。


2021.8.6 誤記修正

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