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27 西の街

 お待たせしました。

2017.9.25 誤字修正

2018.4.1 微修正

 最初は、土くれや岩だらけの荒れた場所だったが、それも何時間か歩くと様子が一変した。緑の濃い場所で、のどかな田園が続く。そこを暫く行くと大きな城壁に囲まれた街があった。ちょうど門を潜ると、女性の助けを呼ぶ声がした。


「きゃあー!」

「おら、おら。逃げても無駄だ。さあ、大人しくこっちへ来い」


 下衆め、こういう手合いには情けは無用か。


「そんなに行きたければ、一人で行って来い地獄へな」

「へ?」


 商人の娘の手を強引に引っ張っていた男が、不審な声に後ろを振り返ると巨大な岩石が頭上に落ちてこようとしていた。


「げぁー!」

 男は、岩石に押しつぶされて息を引き取った。


「大丈夫かい?娘さん、まあ悪い奴は追っ払ってやったから、さあ帰りな」

 岩がしゃべるのは不思議だが、それよりも『わずかなチャンスを逃すな』が、三歳から続けられている商人教育、父の教えだった娘はわき目も振らず一目散に逃げていった。


「うわっ、助けた礼も無しか。ま、徹底した逃げっぷりは逆に、清々しいけどな」


 岩石は、娘の背を暫し見送ると城門の方へ歩き始めた。


「ほう、街に着くなりすぐさま、魔神に出くわすとは幸先よいな。では、手はずどおりソローンよ奴を使い魔に加えて見せよ」

 黒衣の魔導師は、愛用のマントを翻すとなにやらカッコ付けて水色のドレスを着た少女に命令した。


「はい、マスター、期待に沿えるよう全力でいきます!」


「そこの岩石の怪物、潔く我が軍門に下れ。今なら、好待遇で迎えてあげるわ。なんと、夕食にはデザート付よ」


 岩石の魔神は、不思議そうにソローンを見つめた。


「デザートって、なんだ砂漠の親戚か?それならちょっと喰ってみたいかな。しかし、いきなり出てきて偉そうな奴だな。人形風情が、少々痛い目に合わせねばな」


「ふう、言葉で語っても聞かぬか?やはり拳で語るタイプみたいね、ならやるしかない。先手必勝!右ストレート!」


 ソローンは、急接近すると岩石魔神の右足にローキックをお見舞いした。


「くっ、このアタイに膝を着かせるとは?しかし、パンチ攻撃と言っておきながらキックで攻めて来るとはお前、卑怯だぞ!」

「ふふ、愚かな勝つためには何をしてもそれが正義!負けたら、それまで。死んだら、その屍まで辱めを受けるのよ。覚えてなさい、我が配下となる者は非情で在らねばならないと。今のうちから、その魂に敗北と同時に刻み込んでやるわ」


「このまま、アタイがやられる訳にはいかない。これでも食らえ!」


 砂煙が、舞い上がり視覚を奪う。その隙を突いて石つぶてが四方からソローンの襲う。 どす、どす、どん。


「このう、目を開けていられない。このままでは不味い。石が当たるぐらいどうでもいいけど、服が汚れちゃう。どうすれば、岩の弱点ってなにかしら?じゃんけんだと岩には紙だけど、まさか?!」


 ソローンは、一計を案じると砂嵐の向こうの岩石魔神に問うた。


「このまま、葬ってあげてもいいけどあれだしね。私は、『ソローンの造り手』様に造られし者、ソローンよ。あんた名前は何て言うのさ?」


「はん、もうじき消え去る奴に名前を告げる必要も無いけど、ま、先に名乗られちゃ、礼儀に欠くというもんね。アタイの名は、キュルソン。二十二の軍団を統べる序列二十の地獄の王さ、覚えておきな。アタイの名を出せば地獄での待遇もかなり良くなるはずよ」


「じゃ、キュルソン。この攻撃に耐え切ったら、配下に加えてやるわ。紅蓮の炎じゃ生温い、真に熱き炎は青を超えて見えない炎、プラズマクラッシャー!」


 突如、砂嵐が消えた。

 きっかけは、あった。ソローンの右腕の腕輪、表面を液体で覆われた金色の不思議な腕輪が掛け声と共に眩しく輝いたのだ。

 いや、そればかりか岩石魔神の中心から十メートルの半球内では街へと通じる街道の石畳の道も全て消えてしまった。ただ、岩石魔神が苦悶の表情で呻いている姿があるだけだった。

 

 

「ほほう、十万度のプラズマの中でも存在を維持するとは?この岩石なかなか使えそうね、主にプラズマを漬けるときの漬物石とかに」

「うわー!お許しを、ソローン様、どうかアタイを配下にお加えください!」


「じゃ、お疲れ。しばらく休んでなさい」

 岩石魔神は許されて、黄色い煙となるとソローンの首輪に装着された七二柱しんちゅうの壺に吸い込まれていった。


「マスターから頂いた腕輪、最高でした。改めてお礼を申し上げます。では、帰りましょう、館に」

「うむ」





「ひー、恐ろしや。岩石のお化けさんより、青い服着た女の子の方が怖いなんて。お父様の言ってたとおりね、人は見かけによらないって」

 先ほど岩石魔神に助けられた商人の娘、シェーラが城壁に隠れて戦いの行方を窺っていたことには誰も気づいていなかった。

次話は、9月20日午後7時 投稿予約済みです。

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