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2 日課

 お待たせしました。

 保育器インキュベータのランプは異常なしオールグリーン、俺は呑気に中ですやすや寝ている少女を起こすべく作業に入った。


 開閉ボタンを押す。ポチっとな。

保育器の中を満たしていた青く輝く水を回収すると、容器は勝手に開いて中から惰眠を貪る怠惰な少女を追い出した。


「あ、おはようございます、マスター」

「ソローン、夕べは街へ出て楽しかったか?よく眠れたようだが」

「はい、マスターゴミ芥が群がって来たのでプチプチと潰すと何だか赤い汁が溢れて少し癖になりそうな。楽しい外出でした。ところで、マスターのお名前を教えて欲しいのです」


 漆黒のマントを翻すと、男は苦虫をつぶすように言葉を吐き出した。

「名前か、そんなものは捨てた。俺は、お前の創造主。故にこれから語り継がれるべき名は、『ソローンの造り手』」

「え、でも。人間は、もっと個人的な名前があるのでは。ネットの中の人も色々な名前をもっていましたよ」


「ふっ、故に我が名はソローンお前がその御業で広めよ。『ソローンの造り手』を全世界に広めるのだ。そうすれば、普通の名前になる」

「マスタ、『ソローンの造り手』様、わたし、がんばります。でも、その前にお腹が空きました。なにか、下さい」


 『ソローンの造り手』は、黙って食堂へ向かった。後にはソローンがひょこひょこ付いて来る。

「まあ、こんなもので良かろう。栄養価は足りているはずだ」

「はい、いただきます。でも、これ?なんのお肉ですか?『ソローンの造り手』様」


 ソローンは、手づかみでこんがりと焼きあげられた肉を骨ごと咀嚼し終えると可愛らしく尋ねた。

「そうだな、今食ったのは蝙蝠だな。その前はイノシシで、最初に食べたのがライオンの丸焼きだ。力が漲って来るぞ、いろいろな意味でな。ふふ」


「私、蝙蝠気に入りました。ライオンは少し筋張っていて、イノシシは逆に柔らかくて。でも蝙蝠、最高、美味です!」


 そうか、今は闇の属性がお気に入りのようだな。

「そうか、ではまた街の平和のために働きにいくか。終わったら蝙蝠多めの食事を作ってやるから楽しみに働けよ」

「はい、マスター」

 ソローンは、嬉しそうに扉を開いた。


 ぶん、ばきっ。

 右手の振り切った先に五人ほど大人たちが壁に突き刺さった。

 がっ、ずどん。右足を振り切った遥か彼方の協会に十人ほどの子供たちがバラバラになって降り注ぐ。


「うわー、助けてくれー」

「俺たちはなにもやってない。お願いだ助けてくれ」

「いえ、ゴミ掃除をやめる訳にはいきません。これは、『ソローンの造り手』様のご命令ですから何よりも優先されます」


 当然のように、ソローンは止まらなかった。


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