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142 分岐

 月の周辺に展開されたマイクロブラックホールで形成された牢獄の壁とソローンの放つ極大魔導が衝突し、数兆度の火の玉が木星周辺を飲み込み全てが消滅した。


・・・・・・

「木星空域において全ての質量消滅を検知しました。おそらく、リュラーン皇子はホムンクルスの攻撃に合い戦死したものと思われます。牢獄作戦終了致します。その他の被害状況、月及び木星(ガニメデ等の衛星を含む)消失

 以上 」


「リュラーン! あ、ああ!」

 月の女王の本気の慟哭を聞いたのは、何万年振りだろうか? アルドは、直ぐ答えが出る疑問に答えるためにデータバンクを検索するという現実逃避にも似た行為に人間らしさを追求するAIならではの欠点だなと自嘲した。


「・・・・・・ アルド、月の再建に取り掛かりなさい。基本機能が回復次第、私は月へ移って寝所でリュラーンの帰りを待つ。あのリュラーンが私を置いて逝ってしまうはずなどないのだから」


 しばらく泣いていた月の女王から新たな命令が発せられた。


「かしこまりました、我が主」


「そうにゃ、ご主人がこの世からいなくなるはずなど無いにゃ」

 ネコが悲しそうに座席で鳴いた。

  



~~~

 地獄では、一瞬パニック状態に陥った魔人たちの攻撃である街が半壊状態になった。

『これは、ホムンクルスの呪縛が解けたぞ。俺は、自由だぁ』

 魔人セーレが、飛びあがって街の城壁を壊し回っていた。

 魔犬ナベリウスが、三つ首から吐き出す炎で街を焼き払っていた。


『あーあ、そんなことあるはず無いのになあ。馬鹿だねぇ』

 魔人キメイエスは、醒めた目で暴走する魔人たちを眺めていた。



~~~


「よくやった、ソローン! 我が最高傑作にして娘にも等しい者よ、よくぞここまで魔導を究めたものよ。お前の極大魔導と科学の力がぶつかり合い、新たな宇宙を創るエネルギーが齎された。

 この退屈な世界に倦んだ私が発見の喜びを得られる新しい宇宙、お前の贈り物に感謝するぞ。

 まあ、こっちの世界に飽きたらお前も訪ねて来るが良い」


『あっ、あれはマスター。やはり、偉大なる私のマスターが殺されたなどと。ネコめ、私を謀ったのか?!』


~~~


『ううっ、うーん見慣れた天上?なぜ保育器インキュベータに、木星で月もろとも破壊し尽くしたはずなのに?』


 目覚めたホムンクルスは、保育器の中で答えを求めた。


「それは、マスタがあなたをここへ送って来られたからに決まっているでしょう」

 白衣に眼鏡を掛けた、ネコが淡々と保育器のゲージを確認しながら答えた。


「ソローン、元通りに動けるまで保育器から出られませんよ。そうね、数年は掛かるかも知れないわね」


『そう。

 でも、マスタはー生きていた。こことは違う別の宇宙で好きな研究をするらしい。私もさらに魔導を究めなければ ・・・・・・』




~~~

「それにしてもソローンの奴、極大魔導の名前を選りにも選って恥ずかし過ぎる名を付けたものよ」

(”マスター大好き!”っか)


「マスタ、約束は守って頂けるのでしょうか?」


『ソローンの造り手』の膝の上でシャム猫が小さく鳴いた。


「そうだったな。今回はお前も良い働きをした。ネコいや、Z-RIDERシステム。お前を僕から解き放とう。今後は好きに振舞うと良かろう。

 まあ、今までもかなり好き勝手にやっていたようだがな」


「ありがとうございます。・・・・・・ お別れですね、マスタ」


 シャム猫が膝から飛び出すと、白衣を着た美女の姿となって丁寧に頭を下げた。


~~~

 宇宙のどこか ・・・・・・ 


 黄金の鎧が静かに漂っていた。





 完


長い間ご愛読、ありがとうございました。

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