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141 牢破り

『くう、離せ。このまま木星くんだりで朽ち果てるつもりは無いぞ!』


 ソローンがいくら極大魔導の破壊術式を繰り出しても、木星の豊富なヘリウムを燃料とした核融合炉が稼働した以上、月周辺に展開したマイクロブラックホールを主体とした牢獄に傷一つ付けることは出来なかった。


「ふっ、無駄なことだソローン。一度展開した牢獄は、それこそ木星が燃え尽きるその日まで(たぶん、補給無しでも千年以上は存在し続けるだろう。)まして、航行中にすれ違う恒星の数々から自在に補給できることを考えれば永遠と呼べるほどの年月を維持できてしまうのだ」


『そんなこと ・・・・・・ 聞かぬ。

 灼熱の地獄の業火で燃やし尽くせ、インフェルノ!

 地獄の大河で眠りに就け、コキュートス!』


 ソローンの魔導が二度、三度と炸裂する。


「無駄だ、ソローン。

 もっと詩的表現で語るなら三個のヘリウムがぶつかり合って炭素に変わる。そう、あの金剛石ダイヤモンドが出来上がる様を特等席で見物できるんだから途中で退場しようなんてもったいないぜ」  


 乱導 竜の揶揄う様な呼びかけに一切反応を示さないホムンクルス。

 何度も、何度もソローンは炎熱魔導、極低温魔導を繰り出すが結果に変りは無かった。漸く魔導の貯えが尽きたのか、ソローンは半眼で自分の中に答えを求めるため半跏趺坐の姿勢をとると瞑想に入った。


『ここに保育器インキュベータは流石に無いからな。ふふっ』


「ふう、やれやれだ。これで休憩に入れるな。今のうちに腹ごしらえだ。

 おっ、こいつはいい。烏骨鶏の卵と鶏肉を使った親子丼か。アルドの奴、腕を上げたな。この固まるか固まらないかのぎりぎりのところを見切った白身が絶品だな。鶏肉も絶妙の火加減だ、三つ葉も葱も美味い!」



~~~

 なんでも強大な魔導の力だけで解決できると思わぬことだ。あまり脳筋だと、魔導の神髄を究めることはできぬぞ。


(ふふ、マスターにはいつも力づくでは芸がないと嗜めらていたっけ ・・・・・・

 マスターの作った料理はどれも美味しかったな。デザートには猿の脳味噌とか最高でした、また食べたいな)


 極大の魔導を行使するには、呪物があったほうが良い。呪物には魔導を良く馴染んだ物が最上となるが、それは滅多に手に入らない物だがな ・・・・・・



(・・・・・・ なぜ、自分の限界をその程度だと決めつける、なぜその程度で諦めるのだ。そんなものなのか、お前の力、お前の魔導は、お前の覚悟は?)


『はっ?い、今のはマ、マスター?

 マスター、もう、迷いません。我が魔導の全てを御照覧あれ !!』


 ソローンの腰には、不思議なベルトが巻かれていた。左手には不思議なスマートフォンが握られていた。不思議な板から発せられた光が儀式用の祭壇を投影した。


 ソローンは投影された祭壇の面前に立つと静かに己が魔導の力を高め、練り上げていった。

 右手の小指を噛み破ると傷口から流れ出す血から魔導剣が現出した。魔導剣に事象切断の魔導を纏わせると、躊躇いもなく己の左脚を斬った。続いて右脚、左腕を斬り、胸の中央に突き刺すと虹色に輝く心臓を抉り出した。

 ソローンは虹色の光に包まれ、己の首を斬り落とすと魔導剣を中空に投げた。魔導剣が落下すると最後に残った右腕も斬り離され、ホムンクルスの身体は七つの呪物となった。


『今です、Z-RIDERシステム呪物を祭壇に捧げるのです!』

「了解、命令を実行します」


 投影された祭壇に七つの呪物が捧げられ、虹色の光が月を包み込む。

 ソローンの切り離された首から、極大魔導を放つ言葉なき言葉が紡がれた。


『始まりよりも前の原初の力、終わりよりも果ての終焉の力、夜よりも暗き闇の力、〇〇〇〇〇!』


 月の周辺に展開されたマイクロブラックホールで形成された牢獄の壁とソローンの放つ極大魔導が衝突し、数兆度の火の玉が木星周辺を飲み込み全てが消滅した。

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