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137 一騎打ち

『そうだ。ご主人様、そう言えばあのメンヘラ女ならとっくに有給使い果たしているはずだわ。あいつなら、長期休暇の対象にもならないから召喚できるはずですよ』


 腹心の魔人アンドロマリウスが良いことを思いついたような顔で、魔界序列二十七位、十九の軍団を統べる侯爵の癖にメンヘラで役に立たない魔人を推挙してきた。


『まあ、弾除けの鉄砲玉代わりに使えるか?

 ロノヴェ、お前程度の力でできるとは思ってないから安心しなさい時間稼ぎに月面を破壊する振りをしなさい』


『ああ、無慈悲なご主人様ぁ。おお、どうしましょう。こんな月の裏側に呼び出された思ったら、またもや戦力外通告の辱めを受けなくてはならないなんて。いっそ月面でひっそりと死んでしまいたいものでございますぅ。およよー』


 唯一病院通いで有給休暇残日数なし(皆の共通認識)で地獄において残業という体で他の魔人のように長期休暇も取れず終日ぼーっとする日々を過ごしていたため召喚に応じたロノヴェは、金髪から突き出す牛の角も薄汚れて精彩に欠けていたが、単身月面への攻撃を開始した。配下の十九の軍団は勿論長期休暇取得中のため不在である。


~~~


「おっと、流石に地獄の中でも休みを貰えない奴が居たか」


「ふむふむ、地獄の人事資料によると病院通いで有給を使い果たしているため流石に長期休暇取得は無理という地獄内の暗黙の了解があるみたいですね、リュラーン皇子」


「ふーん?(何をどうやったらそんな資料が手に入るんだ?)それはいいとしてアラク、さっきの詐欺魚雷スキャム・トゥピドーなんか俺のイメージと違って所々ショボかったよなあ。もっと、こう恰好いいはずなんだが?」


 アラクは仕様書に修正を加えた箇所について済まして答えた。


「当然です、製造工程の簡略化は急務でしたので、単純な直線と曲線による構成に形状を変更しました。使用開始数秒で消滅するミサイルに、指で触らないとわからないような繊細で微妙な湾曲面や見る角度によって色が変化する彩色とか不要ですよ。

 あと、仕様書にあった謎の変形合体機能についても当然省略しました。一応、詐欺魚雷改良二型《スキャム・トゥピドーMOD2》として設計書に落とし込んで登録はしてありますけれど」


「お、流石アラク。よっ日本一じゃなかった、月面一!なんだかんだ言ってても男のロマンを解ってるな。

 なら、お前のことだから試作品ぐらい作っているよな。今度は俺が出る。姉さん、あいつは俺が始末してくるよ」


「本当にあれで出るのですか、因みに一号機にリュラーン皇子が乗るとして、二号機、三号機のパイロットはどなたが?」

「そうだな、俺一人で充分だが?一応、二号機にはネコとネコさん、三号機にはアスタロトと予備パイロットとして姉さんも登録しといてくれ」


「パイロットの登録完了、二号機、三号機は適当に一号機の周囲を飛行するようにセット完了。リュラーン皇子、不必要な変形合体機能はテストしていませんのでどうなっても知りませんよ?」


「ああ、わかった」

「では、いつでもどうぞ。ここから直接一号機のコックピットへ転送します」


「じゃあ、姉さん行って来る」

「リュラーン、行ってらっしゃい」


「それじゃあ、アラク詐欺魚雷改良二型発進!」

「転送します」


~~~


 超光速飛翔物体三機が次々とロノヴェに衝突し、錐揉み反転急上昇し距離を取った。


「地獄の魔人よ、待たせたな」

『痛っ、その声は? 何奴!』


「天が呼ぶ地が叫ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶ。俺の名は人呼んで兆利人、乱導 竜!」


『なんて、素敵な名乗り。惚れてしまいそうなのですわ』


『また、メンヘラ魔人が ・・・ ・・・ もしも寝返ったら永劫の闇に閉じ込めてやるわ』

 ソローンは乱導 竜とロノヴェの闘いを静かな怒りの中で見つめ続けた。




~~~

「やはり、メンヘラでも魔人、素の体当たりで倒せるほど甘くは無いようだな。

ならば、ここからは本気で行かせて貰う。

 変形、合体!

 融合一型!《フュージョン・タイプ・ワン》」


「リュラーン皇子、試作機の変形合体は三十パーセントの確率で失敗しますよ」

「リュラーン、昔から聞かない子だったわね ・・・ ・・・」


 アラクが呆れたような顔で、月の女王が祈るように大型モニタを見つめる中、三機の詐欺魚雷改修二型が編隊を組むとそれぞれ変形し一つに合体した。


「ワンダフル・ビィーッム!」


 合体したロボットから一条の光線が発せられ、飲み込まれた魔人ロノヴェは一瞬のうちに燃え尽きると真っ白な灰になって地獄へ強制送還されてしまった。


『ま、真白に燃え尽きましたのでございますぅ』


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