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133 報復

『ゆ、許さぬぞ!

 月の女王、お前だけは必ず滅ぼしてやる!』


「何を吼えているのですか、ホムンクルス?」


 月面に突然現れたソローンに対応するために、優し気な微笑みを浮かべた月の女王キリュウ・グツチカ・シトゥールの巨大な姿が小首をかしげる。もちろん、これは月面上空に投影したホログラムである。


『何をしらばっくれている。お、お前がマスターにしたことの報復に私が来たと言っているだろう』

「マスター? ああ、黒魔導師殿か。昨日お茶を一緒に楽しんだだけだろうに。ほほ、あんまり嫉妬深いと殿方に嫌われてしまいますぞ」


『この後に及んでも白を切るつもりか!』


~~~


 ソローンが月面に降り立つ一時間前、保育器インキュベータでの身体修復と休息を終え目覚めた彼女は突然の訃報に接した際、暫しの機能停止と心に修復不能のダメージを受けていた。


『もう一度、聞くわ。それは本当なの、ネコ。マスターが殺されたというのは』


 呆然とした表情で、『ソローンの造り手』の助手、使い魔であるシャム猫に念を押した。


「はい、私の言を疑うよりも。あなたなら感じられるはずのマスタの魔導の力がどこにもないことからもマスタが亡くなったことは自明の理でしょうに ・・・・・・

 やはり、マスタ喪失のショックで貴女も一部壊れたのですね」


 黒縁眼鏡に喪服を着た人間形態のネコが頭を垂れた。


『だが、マスタが月の女王とはいえ大した魔導の力を持たぬ者に後れを取るなどあってはならぬことだ。それにネコ、お前がいたのになぜだ、マスタをお守りするのはお前の役目だろうに!』


 激高して詰め寄るソローンに、ネコは大型モニタの画像を見るように言うとお茶会の様子を早送りして問題の箇所から再生させながら説明を始めた。




「このとき、お茶会の茶葉を月の女王が持参してきたのが奴の巧妙な策略でした。茶葉の中にナノマシンを潜ませており、女王の持つ銃の銃弾の中にもナノマシンが入っておりました。

 ご存知のように、魔導には親和性というものが有ります、お茶としてマスタの体内に入ったナノマシンと銃弾のナノマシンこの二つの親和性がマスタの魔導障壁の隙を突いたのです。こうして、弾丸とマスタの体内のナノマシンが引き起こした対消滅により、マスタはこの宇宙から消し飛びました。

 まあ、これらは悲劇の後に判明したことですが ・・・・・・」



~~~


『月の女王とあろう者が、この場に及んでも逃げ隠れするのか ・・・・・・

 まあ、よい。いずれにしても、この月ごとお前を葬ってやる。

 大地を炎で焼き尽くせ、インフェルノ・フレイム!』


 月面の裏側で、大規模な火災が発生した。怒り狂ったホムンクルスの魔導の前にには、酸素の有無は関係ないらしかった。

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