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129 妖女と罠

 魔幼女キメイエスが、巨大カマキリの騎乗から幼気な呪文を紡ぐ。

『風の刃よ、ソローンお姉たんの敵を切り刻め。マンティス・クロス』

 キメイエスの周りの巨大カマキリの鎌が縦横に振られ無数の真空の刃が斎酒ゆきに迫る。


 マンティス・クロスの効果で斎酒の服に無数の切り傷が生まれ、そこから微細な繊維がはらはらと零れ落ちる。


「ふっ、馬上の不利を知りなさい!おっと、危ないわね。こういう悪さする子にはお仕置きよ!

 水流、ジェットウォーター!」

 斎酒の両手の平から、勢いよく飛び出す水流が巨大カマキリに降り注ぐ。すると、巨大カマキリは地上に出来た水たまり目掛けて急降下して行く。キメイエスを乗せた巨大カマキリも例外では無かった。


『ちょ、ちょっとどうしたのよ?敵はあっちよ』


 先ほどまで水たまりだったものが既に池になっており、池の周りに集まった巨大カマキリの腹から細長い虫、ハリガネムシが産卵のため宿主から離脱して水辺に入っていく。

 ハリガネムシが抜けた巨大カマキリは急速に精気を失って死に絶えていく。


 巨大カマキリから投げ出された泥だらけの魔幼女キメイエスを見下ろすように、斎酒が冷笑を零す。

「少しは、馬上の不利がわかったかしら?」



『くっ、ソローンお姉たんのお役に立って纏ったお休みを頂いて白馬の王子様とデートするんだから、雑魚さんははさっさと散っちゃてちょうだいよぅ』


「ふーん、そういう恋に恋しちゃってるんだ。そうね、そう言えばこいつ、セーレも確か地獄のプリンス。つまり、王子様だからデートぐらいなら私が手配してあげようか?」


『へ?のっぽのお姉たんと合体した禿でデブの魔人のことを言ってるならノーサンキューよ。メイちゃんは、面食いなんだから!』


 斎酒の身体から立ち昇る煙が幻影を映し出すと白馬に跨った双子の王子が現れた。それは、ソローンに隷属する前の魔人セーレの真の姿であった。


『我らは地獄一の速度を誇る、正真正銘の魔界の王子プリンスだよ。まあ一度くらいならデートしてやっても良いぞ。どうだ、ふっふふ』


『ああ、なんて凛々しいお方。メイちゃんの恋心が疼くわ』


 いつの間にか、セーレが膝を着くと優しくキメイエスの顔に掛った泥を拭いてやっていた。もう一人のセーレが顎を指で上向かせると唇を流石の早業で奪った。


『ご主人様! 速攻で篭絡されてますよ、メイちゃんの奴めぇ!』

『メイちゃんって ・・・・・・ まあ、よい。アン、狼狽えるな。しばしそこで見ているのだな。キメイエスの地獄の手管の冴えを』


『ああ、ほんとうに愛しいお方。こんなにもメイちゃんを蕩かしておしまいになるとは』


『おお、よく見ると可憐でキュートだな。胸はそんなにないが、それがむしろ良い手触りだ』

『そうだな、ちっちゃなお尻も吸い付くようで趣が深い』


(な、なんだ?私は何をやっているのだ?こんな幼気な魔幼女を魔人セーレと一緒になって貪っているなど。

 もっと、やるべきことが有る筈なのに?)


 斎酒は、緊急避難的に吸収合体した魔人セーレの底知れぬ下種さ加減に飲み込まれていった。それが、魔幼女の罠であるとも気づかずに ・・・・・・

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