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127 決闘2

 ・・・・・・ 案ずるな、お前に傷一つ付けさせはせぬ、私の身がととえどうなろうとも。


 斎酒ゆきが木に縛り付けられて声も上げられぬ少女へ安心させるかのように目配せをすると少女は一瞬驚いた様子だったが、やがてゆっくりと頷いた。


『何をしておる、早うその手で右目を抉り出さぬか!』


 焦れたソローンが、左目と同様に斎酒自らの手で右目を抉り出すのを急かせた。


(おかしい、なぜ私はこんなにも焦っているのだ?確かに時間を余りおかずに施術を完成させた方が良いのに決まっているが。奴の血で六芒星を描き、魔導の力を縛ってしまわねば手痛いしっぺ返しをされると恐れているとでも言うのか?)


 ソローンは何故かいらだっていた。己が立てた姦計が見事に嵌って勝利はもう確定しているようなものなのに。

 いや、だからこそかも知れない。秘術の粋を尽くして闘い、勝利することに無情の喜びを感じる身だからこそ、卑怯な手段での勝利に愉悦を感じられずにいらだっていた。


「そう急かさぬでも、もうたった一つしかない己の目玉に少しくらい別れの時間をくれても良さそうなものだがのう?まあ、言うても仕方ない。

 うっ、ぐぇ~!」

 

 斎酒は残った右目を手で抉り出すと、地面に転がした。


『ようし、では次の要求だよ。右手を切り落とせ、その次は左脚、右脚はその次だよ。ほうれ、そのくらいお前なら残った左手でできるだろう?』


「くっ、そこまでさせるつもりか?」


『どちらでも構わぬぞ、あの小娘の五体満足な身体か。お前が自身で四肢を切り落とすか?だが、あまり時間を置くと小娘に付けた虫が騒ぎ出すかも知れぬな。はは・・・・・・』


「そうか、私の手足が欲しいのならくれてやるわ。やっ!」


 斎酒は左手の手刀が高速で左脚、右脚、そして人間では有り得ぬ方向と速度で左手が曲がると肩から血しぶきを上げてねじ切れた。


『よし、セーレ。その女の服を脱がせろ、何を隠しているのか早く見たい!』


 禿頭で太っちょの魔人セーレはソローンの命令に喜んで現れるといやらしい手付きで斎酒の上着に手を掛けた。


『まあ、どうせ役得だと思って出て来ても大したことが出来ぬ間に誰かに油揚げを持ってかれるんだよ。俺なんか、いつも損な役回りばっかでさあ。

 だが、今日こそは特別だ!なんせこれほどの別嬪さんの柔肌に触れられるなんて今までに無かったからなあ。

 ぐっふふふ ・・・・・・』


「どうせ、脱がせて貰うならあっちの顔の長い覆面の魔人さんにお願いしたいもんだねえ。こんな脂ぎった禿で太っちょなんて、ありきたり過ぎて面白味も感動もないってもんよね。ソローン、あなただってそう思うでしょ?」


『くそ、この地獄の序列七十位、二十六の軍団を支配する地獄界きっての麗人プリンス兄弟と言われたこの魔人セーレ様を差し置いて、序列だけは四位と高いがあんな馬ずら忍者かぶれの侯爵サミジナごときの方が良いだと!

 ようも言うたな。この顔だけは綺麗な性格ぶす女め、二度とそんな口が利けぬように徹底的ン辱めてやるわ!』


『もうよい、ニ分たったぞセーレ。そんな手足も無い女の服を脱がすのに何時まで掛かっておる?

 早くせぬと、その女の希望通り役目をサミジナと交代させるぞ!』


 魔人セーレが斎酒の上着を脱がせると驚くべきことに奇妙な腫物が現れた。斎酒の白磁のような滑らかな腹の上には憤った少女の顔の形状をした腫物があった。

 しかも人面瘡の顔は、人質に取られた少女と瓜二つであった。


『ほう、やはりこのような隠し玉を用意していたか?』


「ホムンクルス、決闘相手の目玉をくり抜かせおまけに手足を切らせるとか恥ずかしく無いのか?」

 斎酒の腹から少女の顔がホムンクルスの行った卑怯な行いを糾弾する。


『抜かせ、人面瘡の分際で偉そうに、ふっ』

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