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126 決闘

 翌日の早朝、目覚めたソローンは、保育器インキュベーターから出るとすぐに腹心の魔人、地獄の序列第七ニ位にして三六の軍団を率いる伯爵アンドロマリウスを呼び出した。


『アン、大急ぎであの斎酒ゆきの情報を集めるのよ。弱点、好物、特異な魔導、剣技なんで奴の情報を集めなさい!

 必要なら配下の魔人を何柱使ってもいいわ』


『ご主人様、まだやるのですか?もう・・・・・・

 ふふ、今度は手段は選ばない。いいえ、もう選べないのよ。恰好付けた闘いなどは心の油断よ。今まで私はどこか慢心していたのだわ、でももう後戻りはできない。マスターに指摘された欠点。いいえ、もはや心に淀んだ慢心と癖ね。なんとしても矯正しなければならないのよ』


・・・・・・


「今どき果たし状とは、思っていた以上にアナクロなんですね。まあ、退屈しておりましたのでお相手いたしましょう、ふっ」


『その前に、これを見よ!』


 ソローンが背後の松林を指さすと一本の松の大木に縛られた娘が吊るされていた。夕日に染まる赤毛の少女は、気を失っているのか目を閉じてじっとしていたが微かに胸が上下していた。松の大木とはかなり距離が離れていたがこの場にいる人ならざる者たちにとっては、少女の生存は自明のことであった。


 いままで余裕を保っていた斎酒の表情に焦りの色が見えたことに暗い快感を感じる今のソローンには、自嘲の微笑みが浮かんでいた。


『さあ、尋常な果し合いで勝とうなどと自惚れはもう捨てたわ。今宵は、卑怯な手を使ってでもあなたを抹殺して見せる!

 まずは、武器を全て捨ててもらいましょうか?斎酒!

 命令に従わなければ、即座にあの娘を殺しますよ。それも永劫の苦しみを与える呪詛の短剣でね』


 少女の側には黒装束の魔人サミジナが禍々しい恨素を纏った短剣を油断なく構えていた。

(くう、罪なき少女の命を下すことになろうとも ・・・・・・ 主の命に従うは忍びの掟、忍びの心は刃の下に隠すもの。決して表に表してはならぬもの ・・・・・・ )



「ふう、あの娘を人質にされたのでは仕方がないわね。はい、刀に脇差、えっと手裏剣もぽいっと」

 斎酒は、事も無げに自らの武器を手放した。


『ふーん、素直でいいわね。では、お前の本当の武器を捨てて貰おうかしら。その手で両眼を抉り抜いて貰おうか!』


 一瞬、斎酒の顔がわずかに引きつるのをソローンは見逃さなかった。


「くっ、そこまでさせるつもりなの?ふっ、恋愛沙汰には奥手でも案外可愛い顔してやるものね。

 どっちがいいかな?まあ、まずは左目から。ぐぬ、ぬ」


 斎酒の右手が紅い血に染まり、苦痛に耐えながら抉り出した己の左目を地に転がした。


『ほれ、どうした?まだ右目が残っておるぞ!

 だが、少しでもおかしな真似をしたらわかっておるな?』


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