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124 夜明け

 くっ、これほど強いのか女忍者の分際で・・・・・・


『この者の力ならば、あるいは・・・・・・

 地獄の序列第十一位、四十の軍団を率いる闇の大公爵グシオンよ我に仇名す輩の敵意を挫け!』


 ソローンの召喚に応じた大柄の魔人、その巨大な猿の口から玄妙な呪文が地獄の底から響き渡る。

『我、闇の大公爵グシオンの名に於いて命ずる!我が主の宿敵よ、その心に抱いた過ちを悔い改め真なる世界の秘密に目覚め、我が主に敬愛の情を捧げよ!!』


「ふふ、面白い。わたくしに精神攻撃を、ほんに今宵は退屈しませぬのう。

 ほれ、褒美じゃ。地獄の業火で炙った亡者の心臓じゃ、遠慮せず食してみるがよい、ほれ、ほれ。ふふっふふ」


『うっ、よすのじゃ ・・・・・・ 食べてはならんグシオン!』

 ソローンの制止が耳に入らぬ様子で夢中で、血も滴る美味しそうな焼肉を貪り食う魔人グシオンであったが・・・・・・

 急にグシオンが苦しみだし、その身体が崩れ溶けていった。


「ふふ、死ぬほど美味しかったのかい。天界の桃園で採れた桃、地獄育ちの魂が昇天するほど美味しかったと見える、ふふ」


『いとも容易く、騙されおって・・・・・・

 ええい。二六の軍団を率いる序列第三位地獄の君主ヴァサゴよ、疾くと現れこ奴の弱点を過去未来どこでも良い探って参れ!』


 姿なき魔人ヴァサゴが現れ主人の命令に従おうとしたが、戸惑いの気配も濃くうなだれ言い訳じみた弁を並べる。

『ははあ、ぬ?

 残念ながらご主人様、こ奴の結界に阻まれ時を超えること叶いませぬ。どうか、ご主人様の力で結界を消してくだされ。さすれば、このヴァサゴ直ちに時の彼方に隠れし奴の弱点を探って参ります程に・・・・・・』


 ソローンは、歯ぎしりしながらヴァサゴを真鍮の壺《七十二柱の壺》に戻した。

『役立たずめが・・・・・・』


『時遣いには時遣いをぶつけるか?

 序列第二位、三一の軍団を統べる地獄の大侯爵アガレスよ。疾くと現れ我が敵の時を止めこの場に縛り付けよ!』


 ワニに跨った年老いた魔人アガレスは、渾身の魔力を込めたが女忍者には少しも効いたようには見えなかった。


『ううっ、な、なんと!

 我の寿命が数百年単位で消えていく、そ、そんな馬鹿な?』


『くっ、どいつもこいつも益体も無い・・・・・・

 もうよい、戻れアガレス。もう顔も見とうないわ!』


 既にソローンは使い魔のほとんどを女忍者斎酒に撃退され、今また一柱が倒され真鍮の壺内で休息中となったのは七十一柱。このため現在使役出来る使い魔はたったの一柱となってしまった。

『ご主人様、消耗しきったこの状態で最期に残されたバアルを召喚するのは危険です!』

『だが、アン。闘えば必ず勝つ、これが魔導の神髄。我が身を捧げて来たマスターから教えられた魔導が、女忍者ごときに敗れたとあっては・・・・・・

 マスターに合わす顔が無いのよ』

 真鍮の壺内から主を心配する魔人アンドロマリウスの諫言すら振り切って、ソローンは勝負に出た。


『闇の底より出でよ・・・・・・』


「時間切れね、退屈せずに済みました。ソローンさん、くすっ


 いつの間にか芦の原だった異空間から、宇宙船に舞台が切り替わっていた。 


 ど、どういうこと?斎酒の部屋の外に斎酒がいる?

 それに、この香りはマスターが来ているの?


「部屋の警護、お疲れさまでした。ソローンさん、もう夜も明けましたよ。

 影、ご苦労でした」

 

 廊下から掛けられた声に部屋の中にいた斎酒が恭しく頭を下げると霞の様に消えていった。

 開けられたドアから、斎酒が入ってきた。


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