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121 魂の尋問

『・・・・・・スキャン開始、異常重量検出により隔離エリアに転送処置

 責任者に危険通知・・・・・・』

「まったく、もう。あのホムンクルスときたら、滅茶苦茶してくれるし。

 あんなものを制御系居住ルームに置いたら、折角のペルシャ絨毯にへこみや傷が付くじゃない!」

「アルド、だからって勝手に月面に転送しないで頂戴。人間て生き物はただでさえ、か弱いんだから。それを意識不明の状態にしたうえ、月面に放置されたんじゃ生命維持関連の監視を強化しなくちゃいけないこっちの身になってよ」


 超巨大宇宙船である太陽系マンズーマ・シャムセイヤの制御装置であるアルドと月脱出船(と言っても月全体が一隻の船であり、防御システムとなっている)制御装置であるアラクとの愚痴だらけの会話は一ミリ秒にも満たない短時間で終わった。


「えーと、それでこの人間の名前は、宗厳ムネトシでいいのよね?

 まあ、二トンの金塊又は黄金像って呼ぶ方が現状に合ってる気もするけど」


『世話を掛けるな、アラク。まあ、そ奴は殺しても死なぬ状態故、逃げ出さぬように監視だけはしっかりして貰いたい。

 では、早速リモートで尋問を始めるか』


 太陽系の制御室で、ホムンクルスが玄妙なポーズをとると真空の月面でうめき声が漏れ出した。

「うっ、うおー!」


「何よ、こいつ生きてるの?」

『そ奴を逃がさぬよう、体組織を金に原子転換してある。いわば仮死状態だ、魂は形に添い遂げようとする性質があるゆえそ奴の魂はこの黄金の牢獄から逃げることは出来ぬ。

 さあ、ムネトシお前たちの目的を明かせ。あの、斎酒ゆきという女忍者くのいちは何者じゃ?』


 アルドの疑問に答えると早々に尋問を始め、ホムンクルスは聞きたいことの核心を突いた。


「うぉー、し、知らぬ。たとえ知っていたとしてもわしの恩人の秘密を敵に明かすことなど出来ようか。ええい、無駄な尋問など止めてさっさとわしを殺せ!」


 うーん、魂に直接痛みを加える拷問にすら強情を張るか。敵とはいえ、立派な心掛けね。


「ふーん、手を焼いているようね?手伝ってあげましょうか?」

 白衣を着たネコが面白そうに、ホムンクルスと月面の黄金像を交互に見ると眼鏡をくいっと上げた。

『Z-RIDER、何か良い手立てがあるのか?』


 右手の指を一本立てて、左右に振ると・・・・・・

「この姿のときは、ネコと呼んでちょうだい。そうね、彼の体細胞を分析したところ異常なことがわかったわ。

 人間の細胞は、大体五、六0回ほどで細胞分裂出来なくなりそれが素で寿命を迎えるんだけど。彼、ムネトシの場合は二百回以上細胞分裂しているのにまだ正常に機能しているのよ」

『と、いうことはムネトシの実年齢は二百歳以上?!』

「そうね、生活環境にもよるけど二、三百歳ってところね。誰かが改造したとしか思えないわね」


 なるほど、ムネトシが恩義に感じているのはその改造によるものか?


「そう、そんなに斎酒って女忍者が大事なの?

 じゃあ、試してみましょう。武芸を披露するための大事な腕と女忍者を秤に掛けたらどうなるのか?」


 ホムンクルスが、合図するとまず左手の指が一本ずつ切断されていった。

「さあ、もう左手の指もあと一本。次は右手の指を落とすわよ。

 吐くなら早くしないとね」


「うー、おのれ!だが、恩義あるあの方を裏切る訳には参らん・・・・・・」


「ほほほ、宗厳そなたの忠義しかと見届けた。後のことはわたくしに任せなさい。 お初にお目に掛かります、あなた方のお探しの斎酒でございます。

 この者の役目は終わりました、天に返してやりましょう!」

 

 斎酒が、右手を振った瞬間、眩い光の中で瞬く間に黄金像は蒸発してしまった。

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