表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/142

117 巻物

 服部半蔵が、供の者も連れずに一人で歩いていた。一陣の風が吹き、木の葉が舞散る。その中の一枚が微妙に動きを変えた。

 『ソローンの造り手』から服部半蔵の動きを監視するよう命じられたホムンクルス、ソローンが髪の毛に纏わりつくのを嫌って数ミリ動かした結果だった。



(ふっ、この程度では半蔵とやらは気付かぬようですね。それでも、背後の者は気付いてくれたみたいですね。どこか遠くの者に合図を送っているのか?

 それにしても、マスターの狙いは、何処に?

 既にヒデさんの手助けの範疇を超えて来てるのに・・・・・・)




『では、その服部半蔵という輩を始末すればよろしいのですかマスター?』 

「ふっ、それではまた別の傀儡を用意してこちらの邪魔をするだけだ。ソローン、お前は半蔵の身辺に張り付け。だが、完璧に気配を断つなよ。柳生宗厳だか石舟斎だか知らぬが、そ奴が気付く程度にな。

 そして、奴が現れたら消すのだ。そうすれば、自ずとその女忍者くのいちが現れるだろう」

『わかりました、マスター。未熟な半蔵に気取られぬよう、わずかな隙を作って誘い出しましょう』

「頼んだぞ。こういう小細工は苦手だからな、竜には頼めぬ。あいつは隠れるのが下手だし、ムガットを使えば完璧に気配を断ってしまう。私が行ければいいんだが、ここを離れてしまう訳にもいかぬ」

『そうですね、お客様は案外不器用ですからね。お任せください、マスター』


 ・・・・・・ふっ、結局大事な仕事には私を使ってくださる。



「半蔵、お主にはまだ死んで貰う訳にはいかぬ。疾くと屋敷に帰れ!」

「うぉ、まだ・・・・・・」

 雷鳴が轟き、枯れた声が聞こえたかと思うと周囲は漆黒の闇に包まれた。叫び声を残して半蔵の気配が消えた。


『足手まといの半蔵を先に逃がすとは、中々の戦上手ね。

 痛っ!』

 ソローンの左手の薬指が、血と共に地面に落ちた。


「我らの邪魔をする者は、斬る!」

『いつの間に、我の指を落とすとは。だが』


 何事も無く、ソローンは左手を振って見せた。そこには五本の指が無傷で揃っていた。

「ふふ、人にしては美し過ぎると思うたが化生の類か?これは、久しぶりに楽しめそうだな。何度でも試し切りできる巻き藁とは重宝する」

 柳生宗厳むねとしは、不敵に笑うと右脚をわずかに蹴り上げた。お互いの距離は約八メートル、普通の剣では到底届く距離では無かった。


『くっ、今度は右手?しかし、剣は抜いていなかったはず。あの右脚に斬られたのか。

 どちらが化生だ、武器も使わずにこんな芸当を見せるとは!』


(まずい、何度も斬られていては修復も間に合わなくなる・・・・・・)

『サミジナ、ガープにお前の分身の術を教えて連れて参れ!』

『拙者の術を?しかし、忍術の素養の無いガープごときに教えるとなると何百年も掛かりますぞ』

『これを使え、時間が無い急げ!』

『おっ!何とこれは、分身の術の巻物?!いつの間に流石は我が主、このサミジナ感服仕った。これさえあれば、いかなガープと言えども秘術を会得することは容易い。急ぎ、あ奴を探し出して見事術を伝授して連れて参るでござる』


(ふっ、こんなことも有ろうかとマスターがお客様から聞かされたNFT技術を利用して作成した巻物がこう早くも役立つとは。

 でも、こういうこの世に未だ無い物を造る時のマスターの顔。嬉しそうだったな)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ