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116 蠢く者

 服部半蔵、現代風に言えば徳川家に飼われた警備会社の代表取締役が代々名乗る名跡である。秘密保持の必要性からか二代目服部半蔵の本名を知る者は少ない。

 ただ警備会社とは言っても、時代背景に適応したため業務内容が多種多様でありどちらかと言うと現代日本よりも欧米の警備会社をイメージして貰った方が良いだろう。


「秀頼が太閤秀吉殿の種では無いという風評被害は、城下の瓦版や旅の商人を使って大阪だけでなく近畿、関東は言うまでも無く肥後の国まで広がっております」

「ふっ、己で蒔いておいて風評被害とは笑止千万。まあ、そちの働きはよう存じておるゆえ事が成った暁には正式に八千石で召し抱え、伊賀の里を所領と為すこと許すと致すぞ」


・・・ この程度の単純な作業は、半蔵のような半端者が丁度よいのう。

「そんな身も蓋も無いことをおっしゃりなさるな、伊賀の棟梁が哀れな道化に思えて泣けてきもうす、ぐふ、ぐふっぅふふはっはあ」

「そちも、あけすけに笑っているではないか。まあ、もう良い。だが、ここらの辺りの特異点ぷりは異常過ぎて興味深いな」


 男の野太い声が夜闇に響く。だが結構な大声で笑い転げていた割には、夜闇に溶け込む濃い藍色の装束に身を包んだ男女の姿に気付く者はいなかった。

「ふっ。しかし、我らに気付く者が一人もおらぬとはこの辺りの忍びもカスだけか」

「それは、酷なことを言いますな。斎酒ゆき様の術を破る者などこの時代にあろうはずがございませぬ」

「まあ、それもそうだな。宗厳むねとし行くぞ」

 


・・・・・・ふう。

「ムガット、もう良いぞ。しかし、二人の忍びのうち女の方に見覚えがあるような無いような。うーん、すっきりしないなあ。やはり、気配を全て断つとこちらからも相手の様子を正確には探れないっていう不便さがあるな。

 だが、生半可な隠形じゃあこちらの存在を悟られるしな」

『・・・・・・ムガット』


 乱導竜は視線だけで右肩に姿を消しながら隠れて留まっているホムンクルスが一鳴きして(今日はもう帰るのかと)問うてきたので、黙って頷いた。次の瞬間、乱導竜の姿は音もなく掻き消えた。



~~~ 宇宙船展望室

「ジョージさん、あんまり退屈なんで惑星に降りてきたが・・・・・・

 どうも奇妙な奴らが暗躍しているみたいだぞ」

「ほう、奇妙な者とな?」

 『ソローンの造り手』は、カップを置くと興味深げに乱導竜の報告に耳を傾けた。

  

 竜の報告によると、秀頼の出生に纏わるスキャンダルを触れ回っていた黒幕は伊賀の服部半蔵であると突き止めた。

 が、情報収集の過程で服部半蔵の動きを監視する忍びの姿があった。

「ふむ、宗厳とな?それに、斎酒という名の女忍者くのいちがいたか。

ネコ、この時代に該当する者はいるか?」

『・・・・・・ マスター、該当者はいません。しかし、少し年代を遡ると柳生宗矩の父親が石舟斎と名乗る前に名乗っていた名が宗厳です。その範囲まで対象を拡げても斎酒と言う女性は見当たりません』

「ジョージさん、この時代の女性の名前などそれこそ家族くらいしか知らないはずだからデータに無いのも仕方ないな。

 だが、なぜだかあの斎酒という女を見たような気がするんだが・・・・・・」


「なるほど、この女が斎酒か。ようやく、敵に辿り着けたようだな」


 ネコさんが、ムガットの視覚情報をスクリーンに表示した画像を展望室にいる全員が見ていたが、『ソローンの造り手』の小さなつぶやきを聞いた者はいなかった。

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