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114 母親

「おう、おう。ようやった、よくぞ男児を産んでくれたのう。おね!」

「はい、殿」


 魔人サミジナの持ち込んだ秘伝の薬や秀吉の呼んだ医術を究めた高僧の世話の甲斐も有って高齢出産の割には母子ともに元気な様子だった。


 成長した秀頼を見守りながら、もう既に自分は死んだはずなのにと不思議な感慨に耽りながらヒデは嬉しくも恐ろしいと思った。

 あの頃は、大変だったのう。来る日も来る日も合戦であったのう・・・・・・




「殿にも困ったものよのう、既にお子が六十余名もおられるのにまた側目を迎えられるとか。わたしゃ一人を抱きゃぁいいみゃ」

「まあ、そう言うな。豊臣の世を盤石にするために昼も夜もお勤めに励んでおられるのよ。拙者には到底できぬことよ」

「それよ、お世継ぎの替えが幾らおれば安心なされるのか。天海和尚、心の病ではなかろうな?」

「まあ、心の病と言えば確かに色好みが激し過ぎますな。ですが、古来より英雄色を好むと言うもの。これくらいのことはヒノモトの天下人にしては可愛いものでしょう」 


 正妻おねがヒデの子に対する執着を嘆き、三成が後継者の多さの利点を解し、清正が精神病を疑い、医者が病気を否定した。

 その後もヒデは側室を増やし既にその数は百五十を超え、世間も身内も家来集すら呆れ果てた頃またも新たな側室を迎えようとしていた。


「おうおう。茶々、よう来たのう」

「ご命令でしたので、一応来ましたが猿の情を受けるつもりはありませんよ。このような高価な光物を有難がる女子ばかりではありませぬ。

 ほっほほ。退がらせてもらいます!」

 気位の高い女性がヒデを袖にして、ヒデの寝所から自分の部屋に戻って行った。


 しばらくして・・・・・・


「サミジナ殿~」

 猿のような顔をくしゃくしゃにして泣きながら魔人を呼ぶ姿は情けなくて、とても天下人とは思えないが人払いの結界が張り巡らせてあるためヒデの面目は保たれていた。

 天井から、音もなく覆面姿の馬面がヒデの面前に膝を着く。

『サミジナ、参上』

「おう、サミジナ殿。茶々をなんとかしてくれ。その方の術でも薬でも何でも良い、あの女子が欲しいのじゃ。お市様の姿によう似ておる、茶々が欲しいのじゃ。

 なんとかしてくれぞな」

『なるほど、そんな便利な術や薬があったら拙者も使いたいものでござる。だが、心配めさるな、ご主人様に頼んでみるでござる。

 使い鳩の術!』

 黒いハトが実験惑星から飛び立ち、ソローンのもとにサミジナからの途中経過の報告とヒデの嘆願が記された文を届けた。


『ふむ、無駄に高性能な術式。しかし見た目を悉く忍術に変化させる手間をあと少しでも魔導の研鑽に使えば、我の懐刀にも成れようものを。

 まあ、馬鹿な使い魔ほど可愛いものね。仕方ない手伝ってあげましょう』


---

 その夜、茶々の寝所に翼を持つ者が忍び込んだ。窮屈そうにグリフォンの翼を畳み、茶々を布団の中で裸にすると豹の顔から発するとは思われぬほどの甘い美声でヒデの長所を並べ立て茶々の脳裏に刻み付けた。

 この日から茶々は秀吉の愛を一身に受けようと女の闘いに身を投じることになった。

・・・・・・ 秀吉様ぁ

 

『流石は序列十二位にして六十の軍団を統べる地獄の君主、シトリーと言ったところか。しかし、他の側室四十名余りにまで男児を産ませるとは、お主やりすぎでござるよ』

『ふふ、木の葉を隠すには森の中、人を隠すには人の中と言うであろう』


 ほどなくして、ヒデの男児は三ケタを超え、秀頼は天然の影武者を大量に獲得したのであった。

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