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110 錬成

「ふむ、いい素材だ。だが頼んだのよりも大分量が多いのだが無理はしてないか、ソローン?確かにこれほどの素材だと複製による劣化も馬鹿にはならんが。

 それにしても、さすがにこの血液に含まれた魔導の力は凄まじいな。たしかに生半可な仕掛けで手を出すと痛い目に合うだろう、お前の言ったとおりだな」


 黒衣の魔導師は、己が作り出したホムンクルスの状態を確認するとやおら呪文を唱え始めた。


 様々な光のごく薄い板に魔導文字がほの暗く記され変化していく。ソローンが運び込んだ魔人由来の素材と彼女の血が空中で混ざり、分離しやがて一つの光の球体になって規則正しく蠢いていた。そう、ちょうど一秒ごとに光の球体は心臓の鼓動のように脈動していた。


「ソローン、これをご覧」

『ソローンの造り手』が示す光の板を覗き込むと、魔導文字で一秒ごとに数字がカウントダウンして表示されていた。

「あと二時間ほどで我が友が、ホムンクルスとして蘇る」




---

 『ソローンの造り手』が宣言した二時間後、光の球体の中で劇的な変化が訪れた。小さな胚が分裂しやがて獣から人の赤子に、その赤子が幼児にそして二十代の青年に変化すると成長は突如止まった。


『マスター、私もこのように造られたのですか?』


 興味深そうに見守っていたホムンクルスが己が主人に問い掛けた。


「概ねそうだが、お前の場合は錬成途中で何度も調整を繰り返したからもっと時間が掛ったな。そう、約一年の歳月を掛けてお前は大事に錬成したんだよ、ほら覚えているかあの保育器(インキュベータ)を。

 今回は、促成錬成だからそんな時間を掛けてもおられんしな」

『そうでした、一年間お世話をお掛けしました』


「おーい、ヒデ。起きているか?」

『ソローンの造り手』が呼びかけると、生まれたばかりの青年はゆっくりと瞼を開けた。


「・・・・・・うーん?

 えらく待たせてくれたのう、久し振り過ぎるぞな、ジョージよ!」


 もう何年も、いや何十年、もしかしたら百を超える年月を経たはずなのにお互いの仲は幾ばくも冷えていない様で青年は『ソローンの造り手』の手を強く握りしめ、振り回していた。

 

「ふっ、まあそう興奮するな。久しぶりのこの世を味わって見てはどうだ?」

「うん?そう言えばそこの別嬪さんは誰ぞな、そういう相手に用意してくれたんかのう。これは気を使わせたのう」

「まあ、俺の娘みたいなもんだが・・・・・・ 気を付けろよ、機嫌を損ねたら町どころか星そのものが吹っ飛んだりするからな。

 ふっ、相変わらず命懸けの恋が望みなら止めはせぬが」


 冷や汗を流して、ホムンクルスから失礼な視線を外すとヒデはまずは腹ごしらえからだなとテーブルに着いた。

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