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102 システムRX

 それから数年が経ち三十四歳になったある日、流石のマスタの魔導の力をもってしても所詮はただの猫の寿命故、わたしは迫る死期を悟り裏庭の洞窟に隠れ最期の時を独り寂し待ちました。

 ありがたいことに、マスタは私を探し当ててくれました。私はマスタの膝の上で最期の時を迎えたのです。

 か細い涙声で「運命に抗え」とマスタが命じられたのを朧気ながらに聞いたのが私の最期の記憶でした。


 それから幾ばくかの時を費やしマスタの錬金術、魔導の力そして科学と言う不思議な力を使って私の魂と知識を持ったシステムが完成したのです。

 そう、私は以前のネコではありません。Z-RIDERシステムの元となったプロトタイプ、システムRX-25です(愛称は従来どおり、ネコでいいですよ)。 なぜだか、ネコの表情が和らいで見える気がした。


『ふーん、システムRXー25(システムRXにゃんこ)ねえ。確かに長いから、ネコと呼ばせてもらうわ。 で、マスタの行き先に心当たりはあるの?』

「マスタは・・・・・・

 九0パーセントの確率であそこにいるでしょう」


 猫が海老ぞる様に背伸びをして、答えた。

『あそこって?』

「銀河を旅する覚悟はあるかい?」


『はあ?!』


 猫が前脚を舐めると顔の周りを綺麗に拭ってから、説明を始めた。

「たぶんマスタは・・・・・・ 銀河の中心部に位置する巨大量子コンピュータの惑星を目指した可能性が九十九パーセントであるとZ-RIDERシステムのデータを外挿した私、つまりシステムRXの推測です。

 理由は、マスタが失った重要人物をシミュレーションシステムに構築し再生若しくは復活させるおつもりでしょう」


『流石は「ソローンの造り手」様、放浪の規模が宇宙レベルとは誇らしさすら感じますね。

 でも、困ったお方ね・・・・・・』

「・・・・・・ 確かに御同情いたします。

 けれど。行方が判明し、迎えに行く手段がある以上それを躊躇うあなたではないでしょう?」

『無論よ、手段があるのならマスタを迎えに行くのは私の当然の義務よ』


「ふぅ、ならばある男を探しなさい。全てはその男に掛かっているわ」

『マスタを探すのに、また人探しか。念入りな事ねw

 で、誰を探すの?』


「伝説の船長を探しなさい。彼のデータは既にZ-RIDERシステムに転送したわ。最後にマスタに逢ったら伝えて欲しい、成功を祈っていると」

『・・・・・・ 覚えていたらね』

「ごきげんよう・・・・・・」


 ソローンの姿は霞のように薄れて、消えていった。

 それを見届けるとネコは丸くなると静かに目を閉じた、永遠に。



 薄暗い世界に、ソローンは立っていた。満天の星は瞬かず、音も聞こえない世界に。

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