私は、家に入れてもらえません。
私は、家に入れてもらえません。
お母さん、お父さん、そして妹のみかの事は大好きです。
だって大切な家族ですから。
でも、お母さん、お父さんは妹のみかだけを可愛がります。
私も、大切な家族のはずなのに。
だからなのでしょうか。
私だけ家に入れてもらえません。
私はみかとケンカを一切せず、仲良く暮らしていました。
そしてお母さんのお手伝いは毎日欠かさずしていましたし、将来いい仕事に就くためにも、毎日勉強し、学校では常に一番で成績優秀でした。
そしてみかは頭が悪いので、私は毎日勉強を教えてあげていました。
みかは私にいつも、
「お姉ちゃんはすごいね。
成績優秀だし、毎日お手伝いしてて偉いし。
おまけに顔だって可愛い。」
と言ってくれました。
みかだけが、私を認めてくれました。
私は自分に自信が無かったので、そのような言葉をかけられると、とても嬉しいのです。
だから、私は家族のためになれる立派なお姉ちゃんになりたくて毎日たくさんたくさん努力しました。
なにか私が無自覚でお母さん、お父さんの気に障るような事をしてしまったのでしょうか。
私は、精一杯家族のために尽くしてきたつもりです。
それなのにみかだけが可愛がられるし、家に入れてもらえないなんて、本当に悲しいです。
やっぱりそうやって家に入れてもらえないと、どうしても家族の様子が気になるものです。
なので、毎日狭い庭にある窓のカーテンの隙間から、リビングで生活している家族の様子を覗いていました。
朝も昼も夜もずーっと覗いていました。
ずーっと…。
でも私は、家族が楽しそうにしている様子を一度も見たことがありません。
そして家族は、私のいる窓に近寄ろうとしません。
やっぱり、嫌われているのでしょうか。
* * *
ある日、庭にあるベンチの下の裏のところに、真っ赤な文字でなにかが書いてあるのが見つかりました。
よく見ると、
「死ね」
と書いてあるようです。
その文字からは、鉄のようなにおいがしました。
私がその文字を不思議そうに見ているときに、親子が楽しそうに話している会話が聞こえてきました。
私は、その親子の話を羨ましそうに聞いていました。
すると突然、子供が私を見てこう言いました。
「あの子、ママは~?パパは~?
おうち、入れないの~?」
そして母親は、こう言いました。
「子供?
…………どこ?いないよ、はなちゃん。
もしかしたら、お化けでも見えてるんじゃないの?
あははっ、嘘よ嘘。
行きましょ。」
「………うん、ママ。」
私は思わず振り返りました。
お化けだなんて、ひどいことを言うものです。
振り返った私は驚きました。
だって、どう考えても、あの位置からだと母親でも私の姿は見えるはずです。
とても、おかしかったです。
じゃあ本当に母親に私は見えていないのでしょうか?
一体私って、何なのですか……?
幸せそうな家族をみると思い出してしまいます…。
私の家族………。
お母さん、お父さんに、一度だけでもいいから、私を認めてほしいよ……。
私は、なんのために頑張ってきたの……?
「お姉ちゃん。」
窓の方から聞いたことのあるような懐かしい声がして、私は泣いて少し腫れぼったい顔を上げました。
そこには大好きな妹がいました。
「みか!」
私は嬉しさのあまり、妹の名前を大きな声で呼んでしまいました。
でもみかは、私を冷たい目で見てきました。
「お姉ちゃん………。」
「どうしたの?」
「もう、やめて………。」
「え?」
「もう、家を覗かないで!!!」
久しぶりに会話できた大好きな妹に突然そんなことを言われて、私はなんだか裏切られた気分でした。
裏切られた………?
………。
ああ、全部、思い出した。
* * *
気がつくと、私の目の前には頭部から大量の血を出して、ぐちょぐちょになり死んでいるみかの死体がありました。
大好きだったはずなのに、みかの死体を見ても特に感情はありませんでした。
家に入ると、私の目の前には頭部から大量の血を出して、ぐちょぐちょになり死んでいるお母さん、お父さんの死体がありました。
これ全部、私がやりました。
だって………私を、裏切ったんだから。
一ヶ月前の事です。
私は、みかと二階のベランダに洗濯物を干しに行きました。
みかは高いところが苦手で、ベランダに出たくないようだったので、仕方なく私がベランダに出て洗濯物を干していました。
ベランダには手すりが無く下に落ちやすかったため、私は慎重に作業していました。
すると、みかはなにやら私に言い出しました。
「お姉ちゃんはすごいね。
成績優秀だし、毎日お手伝いしてて偉いし。
おまけに顔だって可愛い。」
「ふふ。いつもそう言ってくれてありがとう。」
「お姉ちゃんは……
お姉ちゃんはなんでもできていいよね。」
「え?あ、ありがとう。」
「お姉ちゃんは……
ずるい。」
「ど、どうしたの?」
「お姉ちゃんがいなければ、良かったんだ。
お姉ちゃんがいなければ、私は……
お姉ちゃんなんか、死んじゃえ!!!」
「……え?
な、なに言って………きゃあああああああ!!」
私は、妹にベランダから突き落とされました。
ちょうど、ベンチの横に。
私は、頭から落ちて、ぐちょぐちょになりました。
あまりにも突然すぎて、私は放心状態でした。
その時、私はリビングにお母さんとお父さんがいることに気がつきました。
そして必死に助けを求めました。
「た すけ て」
お母さんとお父さんは、私に気づきました。
すると、私がこんな状態なのにもかかわらずなぜかお母さんだけが私のほうに駆け寄ってきてくれました。
でも、助けてくれるならそれでもいいと思ってお母さんの名前を呼んだのです。
「おか…さ、ん………。
た、すけ……て………。」
「……………助けないわ。嫌よ。
あなたは、死んで。」
「え………?」
「出来すぎるあんたのせいで、みかは毎日泣いて帰ってくるのよ!
頭が良くてなんでもできる姉に対して、妹は頭が悪いうえに親がいなければなんにもできないって言われていじめをうけているのよ!
あんたのせいよ!」
「おかあ、さん………。」
私が生きているときのは記憶はそこで止まっています。
あのときの悲しさ、辛さ、苦しさは今でもまるで昨日のことかのように思い出せます。
大好きだった家族は、私より妹のみかを可愛がりました。
それでも、私は一度だけでもいいから、家族に愛してもらいたかったのです。
私は毎日、楽しそうに話している家族を見ると、私の家族のことを思い出してしまいます。
だから、殺してしまうのです。
あなたと、あなたの家族も、殺しに行っていいですか?