4国会談、統一に向けての第一歩
「今回の会議の議題は4ヶ国の合併についてだ」
俺がそういうと、三人は息をのみ驚いたが、月島はすぐに、ニヤニヤとした表情になった。俺は不思議になって月島へと質問した。
「どうした?そんなニヤニヤして、驚きすぎておかしくなったか?」
「おかしくなったかなんて、ひどいこと言うな~。まぁ、驚きはしたけど、何となく予想していた内容だったからな」
月島が話の内容を予想していたことに、俺は少し驚いた。
「なんで俺がこの話をすると予想できたのか、参考までに教えてくれ」
「単純な話さ、お前が国を発展させる方法はいつも3つだった。1つ目は内政での商業、産業の発展。しかし、これは結果が出るまでに時間がかかる。それを待つほどお前の気は長くない。2つ目は侵略による領土の拡張、しかし、反乱や貴族たちの始末で弱体化した国軍ではすぐには無理だ。3つめは同盟や国同士の領土の統合、君の性格から同盟より統合を選ぶと思ったんだよ。こちらに来る前にやっていた戦略ゲームでいつもやっていただろ」
俺は月島の話になるほどと感心しながら、同じ手の使い過ぎで読まれていたことに少しショックを受けた。
「それじゃ、会議を進めるぞ」
俺はまず、なぜ統合しようか考えたかの説明から始めた。
「俺たちは現在、各国の国王として軍事や外交、内務に財務などの国のあれこれを決定し行っている。しかし、どこかの分野で悩み判断できなかったこともあるはずだ」
俺はそこで話を切り、三人に目を向けた。三人とも覚えがあるのか頷いていた。それを確認した俺は、話を続けた。
「そこで俺は、4ヶ国を統合し一つの国として、それぞれが得意な分野のみに専念できる状況を作ろうと思ったんだ」
「そういう考えなら、俺に異論はない。苦手な分野を無理してやる必要はないからな」
「「俺も異論はない」」
小松が賛同し、芳賀、月島の二人が続いた。俺は三人の返答に安心し、次に誰がどの分野を担当するか決めることになった。
「インフラや整備や税収の集計、予算の組立てなんかは月島にお願いしたいんだが、いいか?」
「もちろんだ、むしろ俺からやらせてくれとお願いするところだ」
「次に法の改定や作成などの法務と、警察関係や裁判関係だが、やりたい奴はいるか?」
「その職は俺がやろう、俺が異世界に来て最初にやったことだからな。ついでに教育関係も任せてくれるとありがたい」
「なら、それも含めて小松にお願いしよう。よろしく頼む。芳賀は何かやりたいことはあるか」
「むしろどんな職があるのか教えてくれるとありがたい」
「農務関係と開発関係、あとは軍務と外交関係だな」
「最初の二つについてどんなことをやるのか教えてくれ」
「農務は農業従事者、農村の把握と試験的な四周期輪作の拡散。開発関係は、名前の通り新しい道具や武器の開発。それに理論や戦術などの作成もやるな」
「ならそれにしようか」
「俺は残った軍務と外交関係のやつだな。正直お前らの誰かにとられないかひやひやしたぞ」
こうしてそれぞれの担当が決まった。その他に、四人による合議制で国を運営することや、定例報告を二週間ごとにすること。新しい王都をこの街エデリシアにすること。王城完成までの間は、俺の国の王都が臨時の王都になることが決まった。最後に、貴族たちが反対するのではないかとの予想が出たが、対処は各個人の判断に任せることになった。
「全てがすんで、統合するまで約二週間ってとこかな?」
俺が言うと芳賀が同意した。
「そうだな。二週間後に加畠の国の王都で再会だな」
その時、小松からとんでもなく重要な一言がこぼれた。
「新しい国の名前ってどうなるんだ?」
「「「あ!」」」
小松以外の、俺を含む三人が声を上げた。
「そうだよ、国の名前決めてないよ。加畠何か考えてないか?」
「いや、こんなすんなり纏まるとは思ってなくて、まだ考えてない」
「じゃあどうすんだよ?」
「そんなの、今から四人で考えるしかないだろうが」
こうして会議が長引き四人は国名で頭を悩ますことになった。
「アルカディアはどうだ?」
「ありきたりだな。ドイチュラントは?」
「ドイツをただドイツ語発音にしただけだろうが!もっとひねれよ」
「ライプツィヒはどうだ?」
「それもドイツにあるだろうが!なんでさっきからドイツのしか出ないんだよ!?」
「ドイツ語かっこいいから仕方ないね」
いろいろな国名が出ては却下されていった。四人がそろそろ疲れてきたころ、誰かがつぶやいた。
「ヴィクトリア王国なんてどうだろうか?」
「いいんじゃないか?国名としておかしくはないし、響きも悪くない」
俺がそういうと疲れていたのか三人もそれでいいかと同意し、国名はヴィクトリア王国となった。
「それじゃ会議はこれで終了。みんなそれぞれ国に帰って、統合の準備を進めてくれ」
俺はそうみんなへ言うと、変身スキルを使いアナスタシアの姿へなった。それを見た月島は俺へと質問してきた。
「いつもその姿でいるのか?大変じゃないか?」
俺は、大変だが元の姿のは死んだことになっているから、この姿でないとだめだと答えた。
「元の姿に戻れるのはこうして、四人で集まっている時だけだ。それじゃ、失礼するぞ」
俺はそう言って会議の場をあとにした。会議の場を後にした俺は、滞在中に休める様に準備された部屋へと向かった。部屋に入ると、男女一組が待っていた。男性の方はアルマンである。今や俺にとって必要な存在となっている彼は、今回の会議にも同行していた。女性の方は、俺が姿を借りているアナスタシアである。彼女は、俺が女王へ就任した後、護衛の騎士兼侍女として俺に仕えている。彼女曰く、俺を殺すのは自分とのことで、俺が約束を違えた瞬間に殺す為らしい。現在の名前はアーニャとなっている。
「アーニャ、お茶を入れてくれない?会議で少し喋り過ぎてしまって」
俺がそう言うとアーニャはこちらを睨んできた。
「何故私が、お前のお茶など入れねばならない?」
「護衛騎士兼侍女なのだから仕方ないでしょう?」
それを聞いたアーニャは、渋々お茶を入れた。アーニャがいれたお茶でのどを潤したところで、アルマンが会議の結果を聞いてきたので俺は結果を話した。
「4ヶ国は統合することで話がまとまりました。二週間後には4ヶ国の王が集まり、合議制での統治が開始されます。予定通りの結果ですよ」
アルマンは結果を聞き満足そうにしていた。
「それでは、王宮へ帰ると致しましょう。それと、統合によって他国と接する面が減ります。結果、他国からの防衛を担っていた辺境伯の数が減ります。ですので、これを機に辺境伯の職をなくしてしまいましょう」
「承知いたしました。では、辺境伯たちに使者を出し、王宮へ集まるように伝えます」
アルマンがテキパキと仕事をこなしていた。俺は、帰りの支度が整うまでゆっくりと過ごしていた。そんな時扉がノックされた。アーニャが俺の傍により、警戒しながら何の用かと声を掛けた。
「芳賀様がお話をしたいとの事です。そのためご予定を確認に参りました」
扉が開き、侍従が入ってきてそう告げた。俺は暇を持て余しているのでこれからうかがうと伝える様に侍従へ言いつけ退出させた。
「それでは行きますよアーニャ」
「私もか?」
「護衛でしょう?主が行くのだから、貴女も行くのは当然です」
そう言って俺はアーニャを連れて、芳賀が待つ部屋へと向かった。部屋では芳賀がソファーに座り寛いでいた。
「来ましたよ。それで、何のお話があるのですか?」
俺は、芳賀に対し質問をした。
「そんなせかさないで、今侍女に親を頼んだところだから、それを飲んでから話をしよう」
芳賀がそんな事を言っていると、丁度侍女がお茶を運んできた。俺は芳賀の向かいのソファーに腰を下ろすと、アーニャにも隣に座るように言った。アーニャはためらっていたが、俺が譲らないとわかっると渋々隣に座った。出されたお茶で喉を潤した俺は、芳賀に話よする様に進めた。
「それで、そろそろ私を呼んだ理由をお話しくださいます?」
「その前に元の姿に戻らないか?その姿だと話しにくいというか、慣れないというか」
芳賀は小声で俺に伝えてきた。しかし、お茶を運んできた侍女などもこの部屋にいる為、元の姿に戻る訳にはいかない事を伝えると、芳賀は改めて話し始めた。
「呼んだ理由は、手紙のお礼についてだ。お前が送ってくれた手紙のおかげで俺は何とか頑張ることができた。ありがとうな」
芳賀からの思いがけないお礼の言葉に、俺は嬉しくなり思わず微笑みながら言った。
「別に気にすることはありませんよ。私はただ思ったかとを書いただけです。何もお礼を言われることはありませんよ」
「それでも、俺はお前に感謝したい。俺に出来ることがあれば何でも言ってほしい」
「そこまで言うなら、何かあれば頼むことにします」
そこまで話すと俺達は自然に笑った。その後、話はたわいのない雑談となり、侍従が帰りの準備が整ったことを伝えに来るまで続いた。
「帰りの準備が整ったようなので、今日はこれで失礼します」
「ああ、次に会うのは二遊間後だな。それまでお互い頑張ろうな」
「ええ、頑張りましょう。それと、二週間後までにお願いを考えておきます」
「お手柔らかに頼むよ」
そう言って俺達は分かれた。俺とアーニャは、待っていたアルマンと共に馬車に乗り込み帰路についた。
王都に着いた俺を待っていたのは辺境伯たちとの会談だった。俺は、帰路の旅で汚れた身体を清め食事をとると、辺境伯たちに呼び出した理由を伝えた。
「我々の職を解くという事でしょうか?」
辺境伯たちの問いに頷くと、俺は説明を始めた。
「統合後の守備は国軍が担います。領の統治については新しく役人に任せることとします」
辺境伯たちは突然の事に驚き叫んだ。
「それでは我々はどうなるのですか!?領地を取り上げられた我々はどうなるのですか!?」
「落ち着きなさい。貴方達の今後については既に考えがあります。政務に秀でた者には王宮で、軍務に秀でた者達には国軍で指揮官として働いてもらいます」
俺がそう説明すると辺境伯は納得し、静かになった。どちらに就いてもらうかは今までの働きから判断すると説明し会談は終了した。
国内の問題をかたずけながら統合の準備を進めた日々は瞬く間に過ぎ、いよいよ俺は統合の日を迎えた。