4国会談、反乱の真相
少し長めです
加畠の国辺境部にある街エデリシア。4ヶ国の中心付近に位置するこの街は、各国どうしの貿易があれば交易の中心拠点として栄えただろう。しかし、各国は現在目立った貿易もなく、自国ですべての事を賄っている状態であった。そんなエデリシアの街は現在、かつてないほどの警戒態勢の元に置かれていた。なぜなら、今日この街の中心部にある役所で、4ヶ国の国王による会談が行われるからだ。
役所内にある会議室そこには会談の時間でないにも関わらず、既に人影があった。月島、芳賀、小松の3人であった。彼等は開始時刻より早く集まり、互いに情報の交換や確認をしていた。
「久し振りだね、2人とも。元気にしてたかい?」
「ああ、俺は元気だよ。月島も小松も変わりないか?」
「俺も元気だし、変りもないよ。ところで、月島に芳賀。2人ともここに来たってことは、2人の所にも手紙が来たってことだよな?」
ひと通り挨拶を交わした後、小松が2人に対して質問をした。
「その認識であってる。俺の所にも新しい女王とやらから手紙が来た」
「俺の所も同じだ」
「なら、加畠が反乱で倒れたって情報も・・・」
「ああ、もちろんお俺等の所に入ってきてるよ。」
小松が言いにくそうに確認したことに、月島ははっきりと答えた。
「2人とも、護衛の兵はどれだけ連れて来てる?俺は100程連れて来てるが」
小松が2人に護衛の数について質問した。
「俺は500だな。100は街の中に、残り400は郊外に待機待機させてる」
「俺も同じくらいだな月島と同じくらいだな」
月島と芳賀が答えた。更に月島がこう言った。
「すでに国では国軍の出撃準備が進んでる。俺が戻ればすぐにでも進行が可能だ」
「さすがに対応が早いな」
小松は驚いた様子でいた。それと同時に、この会談で何か起これば軍をこの国に進行させるのもありかと考えた。
「俺は加畠の死亡報告をまだ信じたわけじゃないからな。対応も後手に回してる。第一、反乱した貴族からの発表なんて信じ―」
芳賀がそう話している時会議室の扉が開き一人の女性が入ってきた。年の頃は18、19と言ったところだろうか。白銀の綺麗な髪と碧いひとみをした少女はとても美しい容姿をしていた。3人が呆然とすると、少女が口を開いた。
「お待たせして申し訳ございません」
その声は耳触りの良い綺麗なものだった。
「久しぶりですね、三人とも」
そう言うと、少女は席に着き会談する者以外に退室を命じた。
「さて、それでは会談を始めさせてもらいます。進行役は私がつとめさ―」
「ちょっと待ってくれ。その前に何故反乱を起こし俺達の友人の加畠を殺したのか理由を聞きたい」
少女が進行をしようとし、月島がそれを止める形で質問をした。質問された少女は何やら不思議そうな顔をしたが、自分の姿を確認すると何か思い出したような顔になり、指を一つ鳴らした。すると少女の姿が一瞬かすみ、次の瞬間に加畠の姿となった。3人は目の前で何が起きたのか理解できず呆然としていた。
「そんなに驚くことはないだろうに」
その声に我を取り戻した3人は互いに顔を見合わせた後、確かめるような声で聴いた来た。
「えーと、加畠だよな?さっきの姿ははいったいどういう事だ?いったい何が起こったんだ?」
「それらの質問に答えるには、反乱の日から話さなきゃいけないけど、いいか?」
俺は3人が頷くのを確認すると、反乱の日に何があったか、その後俺がどうしたのか順を追って説明することにした。
反乱当日、俺は何時もの様に自室の机に向かい執務を行っていた。書類の確認やサインなど何時もの業務をしていた時だった。突然部屋のドアが激しくノックされた。
「国王陛下大変で御座います」
そう言って部屋に入ってきたのはアルマンとルーデンドルフの2人であった。
「何があったのだ?」
俺は、2人に落ち着いて話すように言った。
「貴族たちの反乱で御座います」
「何?詳しく話せ」
アルマンの話によると元法務大臣の娘を旗印とし、貴族たちが放棄したとのことだった。
「それで、どれほどの貴族が蜂起したのだ?」
「蜂起したのは全体の四割で御座います。他の貴族たちは陛下の元へ集まるものと傍観を決め込むものとに分かれております」
アルマンの話を聞いた俺はすぐに対応する手を打つことにした。もともと予想されていた反乱である。対応策は既に立案されていた。
「ルーデンドルフ。すぐに王都へ駐留していた国軍を動かし、貴族たちの反乱を鎮圧せよ」
「了解致しました」
命令されたルーデンドルフは軍に指示を伝えるべく部屋を出て行った。
「これで安心だな」
俺はそう言うと、ソファーに座り侍女にお茶を入れる様に指示を出した。しかし、大急ぎで部屋に戻ってきたルーデンドルフが発した一言で俺は凍り付いた。
「陛下、大変で御座います。王都に駐留していた国軍の大半が貴族の反乱に加わりました」
「!?どういう事だ!」
「おそらく軍の指揮官についていた貴族たちが隷下の部隊を率いて合流したものかと・・・。現在反乱軍は王宮を包囲しております」
俺は真っ青になった。このままでは俺は貴族たちに捕まり、良くて傀儡に、最悪処刑されてしまう。何とか状況を打破しなくては身の破滅である。俺は必死に打開策を考えていた。その時であった。部屋の扉が開き、鎧を身に着け剣を持った少女が入ってきた。
「陛下、おさがり下さい!」
ルーデンドルフが剣を抜き俺を背後に庇った。それを見た少女は、剣を構えながら俺に問いかけてきた。
「貴方が国王陛下で間違いございませんね」
「ああ、俺が国王で間違いない」
俺は少女の問いに正直に答えた。
「なぜ我が父を無実の罪で処刑したのですか?」
俺は誰の事か分からず少女へ問いかけた。
「お前の父とは誰の事だ」
少女は、静かに俺の問いに答えた。
「元法務大臣アンドレイ・オルド・ナイア。私はその娘、アナスタシア・オルド・ナイア」
俺はそこで彼女が反乱した貴族たちの旗印だと分かった。
「父はこの国を愛していました。それなのに何故処刑したのですか?何故?答えなさい、国王!」
俺はどうこたえるか迷ったが、正直にすべてを話すことにした。
「奴が、法務大臣アンドレイ・オルド・ナイアが国王にとってもこの国の将来にとっても邪魔な存在となったからだ。俺は民衆の為に、国の発展のために貴族たちに有利な法を改正しようと考えた。だが、奴はそれを良しとしなかっただろう」
「嘘です!父は国と民衆を愛していました。そんな父が国と民衆の為となる法を否定するなんてありえません!」
「民衆を愛していたならば何故、お前の父は貴族に有利な法を制定し、さらに国王ですら法の改定には法務大臣の許可を必要とする法を作っていた?」
「そ、それは・・・」
「奴は民衆を愛してなどなかった。自分の身と、同じ貴族たちの身しか気にかけていなかった。だから俺は反逆の罪を着せ処刑するという強引な手段に出た」
俺が全てを説明すると彼女は力のない声でつぶやいた。
「父は間違っていたのでしょうか?」
「俺は奴のしたことが間違いだと思ったからやつを処刑した。だが、俺にとっての正解はお前らにとっての間違いだった。だから、お前らは反乱を起こした。人にとっての正解や間違いなんてもんは正義や悪なんてもんと同じで、見方のちがい、見る人のちがいですぐに変わってしまうものさ。お前の父親が間違っていたか正しかったかは自分で判断するしかないんだよ」
「そうですか」
そう言うと彼女はしばし考えた後、口を開いた。
「あなたはこの国を発展させ、民衆を豊かにするといいました。本当にそんなことができるのですか?」
「できる。すぐにとはとは言わないが、5年や10年、それ以上かかったとしても必ず成し遂げて見せる」
俺がそう言い切ると彼女はわずかに微笑んだ。
「父を処刑したことは許しません。しかし、あなたがこの国の未来をそのようにしてくれるなら、それがかなうまでは生かしておいてあげます」
そう言ってようやく剣を収めた。俺は一息つくように息を吐いた後、ルーデンドルフに権を収めるように言った。
「さて、問題はここからどうするかだ」
アナスタシアは俺の言葉を聞き不思議そうな顔をした。
「何を悩んでいるのですか?旗印である私があなたを生かすと言っているのですから、何も心配することなどないと思いますが」
俺は彼女に説明することにした。
「あなたは反乱のシンボルであってリーダーじゃない。それに、あなたが許したからってほかの貴族が許すとは思えない」
俺はどうすればこの状況を好転させることができるか考えた。
(どうする?目の前にいるアナスタシアを人質にとって貴族たちに降伏を進めるか?いや、だめだ。貴族たちはこの娘を殺されても止まらんだろう。むしろ、悪しき王を倒すために自らの命を懸けた英雄として祭り上げられる。なら、王宮を脱出するか?いや、国軍が包囲してる状況で逃げ出せる可能性は低い。それにうまく逃げて隣国に亡命し、その後国を取り返しても民衆はそんな王など認めないだろう)
どうやっても上手くいかないこの状況で、それでも俺は考え続けた。その時、頭の中に転移する前に聞いた神様の声が響いた。
「なんか大変なことになってるね~。こんな状況を打開するために、以前言っていたスキルをあげよう。君には変身スキル、これをあげよう、何とかこれを使って乗り切ってくれ。使用方法は自動で頭の中に思い浮かぶようにしといたから。それじゃまたね~」
俺はすぐに変身スキルの使い方を思い浮かべた。そして、ある作戦を思いついた。
「ルーデンドルフ、適当な死体を一つよういできるか?」
「反乱した貴族や国軍に抵抗し殺された警備の者の死体がいくつかございます」
「この部屋に持ってこられるか?」
「難しいでしょうが何とかしてみます。しばしお待ちください」
「いったい何をする気なの?」
アナスタシアが不思議そうに聞いてきた。
「俺が死んだことにするのさ」
俺が答えるとアルマンが言ってきた。
「ですが陛下、貴族たちが死体を確認すればすぐにばれてしまいます」
「だから死体が用意できたらこの部屋に火を放って誰だか判別できないように焼くんだ」
二人はなるほどと頷いた。そのときルーデンドルフが死体を持って入ってきた。
「陛下、お早く。反乱軍の者たちがすぐ近くまで迫っています」
俺はルーデンドルフが持ってきた死体を床に転がすと、先ほど神からもらった変身スキルを使い、死体となっている警備兵へと姿を変えた。3人が息をのんだが無視してアナスタシアへと話しかけた。
「それじゃあ脱出するぞ。アナスタシアは部屋から出た後、貴族たちに俺が追い詰められて火をつけたと伝えるんだ。そして、アルマンンとルーデンドルフをそれぞれの邸宅に軟禁するよう指示を出してくれ。そしたら俺が志願する形で、2人を連れて外へ脱出する。すべてが終わったらアルマンの邸宅に来てくれ」
そうして俺達は手筈通りにアルマンの邸宅に集合した。俺達がその場から離れた後、貴族たちと兵士が部屋の火を消し、出てきた焼死体を俺と判断したとアナスタシアが言っていた。
「これで俺は死んだことになり、貴族たちから追われる心配はなくなった」
「しかし、これで貴方は再び国王になることは出来なくなりましたよ。私との約束をどうやって果たすつもりなのですか」
「そこは考えてある。ところで、貴女は次の国王にと貴族たちに言われているんじゃないか?」
「ええ、言われています。ですが、なぜ分かったのですか」
「女性の貴女を国王へする。そして、自分たちはその裏で貴女を操り、美味しい思いをする。反乱を起こすような保身しか考えない、貴族たちの考えそうな事だな」
「それで、それを確認してどうするのですか?」
「先程、俺が兵士の姿に変身したのは見ただろ。その、変身能力を使って今度は、貴女に姿を変えるんだよ。そして、国王へと復帰する」
彼女はなるほどとうなずいたが、何かを思いついたように俺へと聞いてきた。
「では、私はどうなるのですか。私の姿をした貴方が国王へとなるなら私はどうすれば?」
「当分はアルマンの邸宅で匿ってもらってくれ。今回、反乱を起こした貴族たちを始末した後、今まで秘密にされていた双子とでもして表にだす。良いなアルマン」
俺はアナスタシアを匿う事をアルマンへと了承させた。
「その後、女王へ就任して貴族たちを事故やら無実の罪やらで始末して、今に至るのさ」
俺は三人への説明を終えた。3人は俺の説明が終わると、しばし呆然としていたが、暫くすると理解したのか俺へと話しかけてきた。
「まぁ、何はともあれお前が無事でよかったよ」
月島が無事を喜び、芳賀と小松もそうだ、と笑って言った。
「それじゃ、俺の無事で3人が安心したところで、今日の本命である会議を始めたいが異議は無いな?」
「「「異議なし」」」
3人の同意を確認した俺は会議の議題を確認した。
「今回の会議の議題は、4ヶ国の合併についてだ」
投稿遅れてすみませんでした。今後はもう少し早く出せる様に頑張ります。