異世界での友人たちの活動。そして告げられる急報
月島の国
彼が異世界に転移してからやったことは加畠とそう変わらなかった。税収と国庫の確認、国軍の把握、他国との関係確認、法の認知、国内のインフラの調査などであった。国内の確認が済むと彼はまずに内政に力を注いだ。街道や橋などのインフラの整備、農地における治水などである。
転移から4日後
月島は貴族たちを集め会議を行っていた。
「以前に言っていた街道整備の件進んでるかい?」
月島の発言に貴族の1人が返答した。
「万事抜かりなく。現在計画書の作成も終わり工事を開始したところで御座います」
「いい感じだね。計画書にも問題はなかったからそのまま計画通りに進めてくれ」
「畏まりました」
月島は満足したように頷くと話を進めた。
「橋の修復や建設はどうなっているのか誰か教えてくれるかい?」
月島の質問を受け先程とは違う貴族が口を開いた。
「それではわたくしがご説明いたします。橋の修復については進行しています。ですが、いまのところ建設が必要な地域は調査中でございます」
会議はその後、農地における治水の計画と町の区画整備、上下水道の建設とそれに伴う出費の話へと移ったが問題なく終了した。その後、月島は夕食おとり寝室へと移動し眠った。
会議から数日後、月島の元へ1通の手紙が届いていた。隣国を統治している加畠からの手紙だった。内容は元気でやっている事や最近起こった出来事の報告、最後に近いうちに芳賀や小松を含めた4人で集まりたいとのことと、集合場所と集合日時が書いてあった。
「集合する町の名はエデリシアか。日時は今日から2週間後か」
月島は部屋に置いてあった地図で町の場所を確認した。町は加畠が統治する国の端の方にあり、4人の国の大体中心辺りにある町だった。
「王都からは馬車で3日ってところかな」
月島は会議に向けての旅支度を侍女に任せ執務をかたずけようと机に向かった。
芳賀の国
芳賀は自分の部屋で机に腰を掛けため息を吐いていた。彼はどうすればいいか分からないでいた。前の世界で彼は国の事に関して興味を持たず過ごしていた。国がどのようにしてまわっているか当然知らなかった。それ故にまず何をどうすべきか決められずにいた。
(転移から1週間ほどが経つけど何をすればいいか全くわかんない。ホントどうすればいいの?転移直後に全てその場にいた貴族たちに任せてそれっきりにしちゃったけど、流石にそろそろ自分で何かしなきゃなぁ。でも、何をすればいいんだよーーーーー!)
彼が心の中で絶叫している時扉がノックされた。そして、外から入室の許可を求める侍従の声が上がった。
「国王様にお手紙が届いております。入室してもよろしいでしょうか?」
「ああ、入ってもかまわないよ」
芳賀は入ってきた侍従から手紙を受け取ると封を開け中を読み始めた。手紙には月島に送られたものと同じ内容が書かれていたが、それとは別に芳賀を心配する加畠の言葉があった。
「お前の事だから何をして良いのか分からず悩んでいる事だろう。そんな芳賀に俺からのアドバイスだ。自分がいいと思ったことを迷わずやれ。転移前に世界史を取っていたお前ならそれを参考にしっかりとした統治が出来るはずだ。まぁ本当に迷った時には俺か月島にでも相談しろ。出来るだけ力になってやる」
(加畠め、こんなこと書かれたら頑張るしかないじゃないか。集合日時までおよそ10日ほど余裕があるな。それまでに俺が出来ることを全力でやってやろうじゃないか)
芳賀はそう決意するとその日から精力的に動き始めた。特に税収の調査や農地の改革、治安維持などに力を注いだ。それによって芳賀の国は急速に回り始めた。
小松の国
小松が異世界に来てから最初にやったことは法の整備と知識の改革、そして学校の建設だった。必要ないものや法や現在にそぐわ無い法は改正や削除され、逆に足りないものは次々に制定されていった。また、学校を建設し知識をはぐくむ取り組みも行っていた。そんな彼の元にも加畠から手紙が届いた。近況報告と集合場所、日時が書かれたものだった。小松は久しぶりに3人と会えることを楽しみにしながら、出発の日まで仕事にまい進した。
集合する町へと出発する朝、小松のもとへ外務を担当する貴族の大臣から緊急の報告が入った。
「隣国で貴族による大規模な反乱が発生いたしました!」
「誰が統治する国だ!?」
「陛下のご友人の加畠様が統治される国であります」
「それで反乱はどうなった!?}
「貴族たちはかの国で処刑された元法務大臣の娘を旗印に蜂起。さらに王都に駐留していた軍の大半と民
衆がこれに参加し王宮は陥落。反乱した貴族の発表によれば加畠様は死亡。彼等は旗印となった法務大臣の娘を女王として擁立したそうです。また、現軍務大臣が女王の後見人となったとの報告もございます」
「そんな、まさか加畠が死ぬなんて」
その時侍従が小松の元へやって来た。
「陛下、お手紙で御座います」
「今は手紙何て読んでる場合じゃない!どうする??まずは他の2人にこのことを伝えて話し合うか?」
小松が如何すべきか呟きながら考えていると先ほどの侍従がまた手紙を差し出してきた。
「陛下、隣国からお手紙で御座います」
「月島か芳賀からか?」
「いえ、加畠様が統治されていた国の新たな女王からで御座います」
「なに?」
小松は手紙を受け取ると封を切り中を手紙を読み始めた。そこには以前の国王が予定していた会談を予定日に予定の場所で行いたいとのことだった。小松は少し考えると緊急の報告をしてきた貴族に旅の護衛を倍の数に増やすように言った。そして馬車に荷物を積み込ませた。
(何の考えがあるか分からんがあえてそれに乗ってやろうじゃないか。それに、何か仕掛けてくるならその時は加畠の敵を討つまでだな)
小松はそう考えると会談におもむくために馬車に乗り込み王宮を後にした。
主人公死亡!?次回は四か国会談から始まります。お楽しみに