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正月特別編

本編とは関係のない話です

 一月一日。全世界かは分からないが、殆どの国。少なくとも、日本では特別な意味合いを持つ日だろう。ヴィクトリア王国では一月一日に大した意味はなかったが昨年のこの日に大規模な祭りを行った。たった一回だったが、王都では随分と好評であり、殆どの市民から今年もと言う声があがり、貴族たちや商人、職人等を中心に資金が集まり今年は国庫からの支出は僅かなもので済んだ。そして、なぜか周辺の街にも広がり、ヴィクトリア王国では一月一日は新年を祝うとともに今年一年が良くなることを祈願して盛大に祭りを行う日となってしまった。


「今年は何もしなくていいなんてね~」


「運営は貴族や街の有力者の有志。コンテストなどの審査も彼等がやるそうですよ」


「今年も内務省が出張るのかと思ってたよ」


「嫌だったのですか?」


「半々かな。楽しくもあったけど、責任もあったからね~」


「なるほど」


 そんな日に、俺は月島と小松、芳賀を集めて四人で寛いでいた。特別にこしらえた和室にてである。


「やっぱ、畳っていいよな」


「だな。なんか、安らぐって感じだよな」


「そうだね~」


 ポケットマネーで特注した畳を敷き詰め、特注した行燈を部屋の隅においてインテリアとし、むき出しの壁は障子を設置することで誤魔化した。吊るされていたシャンデリアは撤去し、代わりに自在鉤を設置し、下には囲炉裏。洋の王宮の中にあってここだけは完全に和であった。


「和室だよな。それも、完全なのでなく、なんちゃって感のある和室だな」


「それだよね。こう、堅苦しくもなく、それでいて懐かしいって感じ?」


「完全な物もいいが、これはこれでいいよな。・・・・・それで、なんで振袖?」


「え?」


「え?」


「「「「・・・・・・」」」」


「だから、なんで振袖?」


「ドレスの方が良かったですか?」


「いや。普通に男物の格好で良かっただろ? そもそも、変身解けよ」


「いえ。まぁ・・・・・」


「お待たせしました」


 俺が理由を述べようとした時、扉が開かれてアーニャ達が入ってくる。


「へぇ~」


「おぉ~」


 入ってきたアーニャ達は何時ものドレスではなく、振袖を着ていた。アーニャは黒の生地に紫の藤の花が描かれたもの。リーナは緑に生地に木の葉や菊の花が描かれたもの。イライザは赤い生地に桜の花びらが描かれたもの。三人ともそれぞれ違う振袖を着ていた。その後ろからは、何時ものメイド服を着た侍女たちが重箱を持ってはい居てくる。


「どうぞ」


 侍女たちが運んできた重箱をアーニャ達が俺達の前へと配置し、広げていく。


「え? おせち?」


「ええ。これでも外務卿ですから。各国の市場で見つけたものを詰め込んで、何とか形にしてみました」


 正月。和室。振袖。ここまで来たらおせちも揃えたかった。その為にコックに無理を言って、各国から集めた食材を調理してもらった。無論、ポケットマネーだ。


「まぁ、こういう訳でして、解けないんですよ。それに、花があった方が楽しいでしょう?」


「まぁ、そうだね」


「それで、何でお前だけじゃなくて侍女達まで振袖なんだよ?」


「いえ。実は・・・・・」


 本当は、今日に向けて王都のドレスを専門に扱っている店の店主に作らせたのだ。勿論。自分が着る為ではなく、アーニャ、リーナ、イライザの見目麗しい三人に着せて目の保養をするためである。無駄な知識で着付けも出来ちゃう俺は、まさかアーニャ達の着付けを俺がやる訳にもいかないのでアーニャにそれを教え、それぞれに着てもらった。しかし、ここで誤算が発生する。店主が気を利かせた為か、振袖は四着届いたのである。それも、アーニャと同じデザインの色違いのがである。


「・・・・・と言う訳です」


「せっかく届いたので、陛下にも着て頂きました」


「あ~。そういう事か」


「え~っと。ドンマイっていうのかな?」


「まぁ、いいですよ。とりあえず、この話は終わりにしておせち食べません?」


「そうだな。かなり久しぶりだ。味は期待しても良いのか?」


「ええ。私がしっかり味見してますから」


「え? それって、抜け駆けじゃないのかな?」


「ソース味の大根とか、ワイン風味のだし巻き卵が食べたかったと?」


「うわぁ~」


 それはもう最初は酷かった。見た事も聞いたこともない調理を任されたコックは想像で再現するしかなく、この日の為にこっそりと作らせた醤油などは使わずに使い慣れた調味料で再現したのだ。結果、デミグラスソース味の煮物に、何故かワイン風味のだし巻き卵等が生み出された。まるで、ビーフシチューを作ろうとしたら肉じゃがが出来た的なアレである。まぁ、とても食べられた物ではなかったので劣化も良い所だった。


「ビーフシチューから肉じゃが云々の話は都市伝説らしいですが」


「へぇ~。それで、付きっきり作らせたの?」


「ええ。おかがで、満足のいくものが出来ました」


「コックが気の毒だな。お! この煮物美味いな」


「女王が常に味見してるって、コックにとっちゃホラーだよな」


「そうでしょうか? アーニャ達もどうですか? 口に合いますか?」


 俺は隣で箸ではなくフォークとスプーンでおせちを口に運ぶアーニャ達に目を向けた。


「ええ。初めての味ですが、悪くはないですね」


「このお野菜美味しいですよ~」


「私は少ししょっぱい気がするな」


 三者三様に初めて食べるおせちの感想を述べる3人は、フォークで煮物を突き刺し、それでいて上品に口へと運んでいた。


「なぁ? 刺身となないのか?」


「あ〜。それ。おせち食べたら、久しぶりに食べたくなってきた」


「あるか?」


 それに対して、使い慣れた箸を使って煮物を口へと運んでいた3人は、生魚の切り身なんてない物を要求してくる。


「ないですよ? 海からここまで、運ぶのにどれだけかかると思っているんですか・・・・・」


「いや。そうだけど、食べたくないか?」


「ちっとも。そもそも、生魚の切り身なんてどこが美味しいのか・・・・・」


「いや。それ、損してないか? 刺身食べれないって」


「叩きならいいんですけど、刺身は無理ですね」


 この中で唯一俺だけが刺身が食べられないのだ。生魚がダメという訳では無いのだが、刺身のあの食感が駄目というか、とりあえず無理なのである。輸送云々が大丈夫であったとしても、絶対に作らせるつもりはない。


「なんか、陛下達のイメージが・・・・・」


「うむ。分からなくはないぞ。私も、もう少し近寄り難いというか、そういうものを想像していたからな」


「仕事中はそうですが、プライベートではこんな感じですよ?」


こそこそと話すリーナとイライザに対して、俺はあっけらかんとそう言った。


「息を抜くところは抜かないといけませんから。いつも肩筋張ってあれこれしている訳ではありませんよ?」


「それは分かりますが、陛下は息を抜きすぎでは? 最近執務を放り出して何をしているかと思っていましたが、まさか・・・・・」


「いえ。まぁ、その・・・・・。味に妥協はしたくなかったので・・・・・」


「はぁ。明日からみっちりやりますからね」


「はい・・・・・」


 色々と気の抜けた会話を楽しみつつ、俺達は粗方の料理をたいらげた。


「久しぶりだったよね〜」


「いや〜。美味かったぜ」


「うむ。なかなかだった」


 月島、芳賀、小松の3人は久しぶりのおせちを堪能した。


「大変美味でした」


「これ、来年も食べたいですね〜」


「うむ。たまにはこういう異国の料理も良いものだな」


 一方のアーニャ、リーナ、イライザ達も初めてのおせちに満足した様だった。


「では、デザートと行きましょうか」


 俺は重箱の一番下の段を開けた。


「きんとんか」


「ええ。これが1番の楽しみでして」


 俺は箸からスプーンに持ち替えると、きんとんを豪快に掬って口いっぱいに頬張った。


「はぁ〜。甘い。幸せ〜」


 滑らかな食感と口に広がる甘さ。全てが懐かしく、幸せな気分になる。


「お前。よくそんなにバクバク食えるな。甘すぎないか?」


「これくらい普通ですよ。あ〜。蕩けまふ!」


「相変わらず甘いものすきだよな~」


「あんだけ食べて、まだ食えるのかよ」


「甘いものは別腹ですよ。はぁ~。幸せ~」


「蕩けきってるね・・・・・」


「姿が姿だけに違和感ないのが何とも・・・・・」


 外野が何か言っているが、すべて無視だ。甘いものを食べると言う大事の前に些事を気にしてはいけないのだ。


「陛下。もう少し上品に食べて下さい」


「そう言いつつ、アーニャもきんとんにハマっているじゃないですか」


 きんとんが口にあったのだろう。俺の隣ではアーニャが苦言を呈しつつも、俺と同じくらいのペースできんとんを消費していた。食べ方は俺とは全く違って上品だったが・・・・・。


「クリームみたいな甘さではないので、けっこういけますね~」


「リーナはクリームが苦手だったか?」


「嫌いではないのですが、好んでは食べないですね~」


「そうなのか? 普通に食べていたから、てっきり・・・・・」


 リーナもイライザもお気に召したようだった。


「はぁ~。本当に幸せです」


 甘いきんとんを口いっぱいに頬張りながら、俺は正月を堪能したのだった。

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