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元クラスメイトは泣く

「敵兵の武装解除及び捕縛を完了しました」


「住民の反乱は今の所ありません」


「女王と貴族たちの監禁が終了しました」


「報告、ご苦労でした」


王都占領後に行われた事の報告を受けた俺は、報告者に労いの言葉をかけた。


「陛下。今回の戦闘で受けた被害集計が出来ました」


「後で確認します。それよりも、住民へ狼藉を働く兵は出ましたか?」


「ハッ。少数ですがいたようです。如何いたしますか?」


「法に従い処罰しなさい。住民にこれ以上反感を持たれてはなりません」


「了解しました。狼藉を働いた者は処罰いたします。また、今後このような者たちが出ないよう、兵たちに伝えます」


「頼みましたよ」


命令を伝えた指揮官が部屋を出ていくと同時に、俺はため息を吐いた。


「まったく、どうして狼藉を働く者が居るのですか」


 俺は一枚の報告書を手に取った。そこには、兵士たちが働いた狼藉が書き出されていた。


「無銭飲食に窃盗、放火に殺人に強姦とは。何時から我が軍は無法者を雇用するようになったのですか!?」


俺は、兵士たちが行ったあまりの事に、つい叫んでしまった。


「戦闘の直後です。兵士たちの気が昂り、そのような行いを起こすのは仕方ないかと・・・・・」


「それに、ごく少数で済んだのは、規律がしっかり整っているからだと思います」


アーニャとリーナがなだめる様に言ってきた。


「そう捉えて良いことでしょうか?」


俺はなおも悩んだ。それを見たリーナが微笑みながら言った。


「城の中で良い茶葉を見つけたのでお淹れしますね」


リーナはそう言って部屋を出て行った。


「彼女の気遣いには、感謝しなくてはいけなせんね」


俺はそう呟くと、各所から提出された報告書に目を通した。


その後、戻ってきたリーナが持ってきたお茶を飲みつつ、俺は作業を続けた。


「陛下。そろそろ夕食のお時間です」


報告書を全て読み終え、一息着いていた俺に、アーニャが夕食の時間を知らせてきた。


「もうそんな時間ですか」


部屋に付いている窓から外を見れば、夜の帳が街へと降りていた。


「将軍や指揮官たちも席に着いておられます」


俺は席を立ち、夕食の席へと向かった。


「それでは、今回の戦争の勝利を祝して、乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」


俺が乾杯の音頭を取り、夕食会は始まった。夕食会は、始終戦争の話題であった。


「今回の戦争は楽でしたな」


「倍以上の戦力で敵を撃破する。定石どおりにやれば負けるはずはありませんでした」


「確かに。しかし、奇策でもあれば状況は違っていたかもしれませんぞ」


「敵が籠城ではなく野戦を選択してくれたおかげで、損害は思っていたより少なくなりましたな」


「敵には感謝しなければなりませんな」


指揮官達は酒の影響もあり、いつになく口数が多かった。


「それにしても、長槍を配備させた陛下の先見性には感服します」


「そんな事はありませんよ」


静かに料理を食べていた俺に、将軍が話しかけてきた。


「長い槍を持たせるくらい、私が提案せずとも誰かが提案したでしょう」


「陛下は謙虚ですな」


 俺は思ったことを言った。長槍による槍衾の形成は俺が考えた物ではない。元の世界の誰かが考案したものだ。俺はそれを、真似したに過ぎない。それに、こちらの世界でもいずれは誰かが考えただろう。


「ヴィクトリア王国は陛下がおられる限り安泰です」


 俺が考え事をしている間に、将軍の話は俺の賞賛になっていた。そしてそれは、俺と王国への乾杯につながった。


「陛下と王国の未来に乾杯!」


「「「「乾杯」」」」


将軍がグラスを掲げると、指揮官たちが追従した。


 俺はその光景を微笑みながら見ていた。夕食会はその後も盛り上がり、楽しげな雰囲気の中で終了を迎えた。

夕食会の後、俺はアーニャを連れ廊下を歩いていた。俺達が向かっているのは王城にある一室、未来 希が監禁されている部屋である。


「ここです」


先導していくれていたアーニャ扉の前で止まった。俺はノックをしてから入室した。


「夜分に失礼します」


希は寝ていたのか、ベットから体を起こした状態でこちらを見た。寝ぼけた顔でこちらを見ていた彼女は、数秒のあとにハッとした表情になると、こちらを睨んだ。


「こんな時間に何の用ですか?」


「ごめんなさい。貴女の様子が気になったものですから」


俺は、出来るだけ柔らかい物腰で話した。


「それなら、この通り元気です。用が済んだのなら、すぐに出て言って下さい!」


彼女は声を荒らげつつ言った。国を滅ぼした張本人が目の前にいるのだ。声を荒らげるのも同然だろう。


「そんなことを言わないでください・・・・・少しお話しましょか」


俺はそう言うと、この女の返事を聞かずに、近くの椅子に腰を下ろした。


「出て行って!!」


俺の顔に枕が飛んできた。しかし、枕は俺の顔に当たることなく、中の羽毛をまき散らせて床に落ちた。


「切ることは無かったんじゃありませんか?」


「枕に何か仕掛けられていた場合、受け止めるのは悪手でしたので」


アーニャが、何時も腰にさげている剣を抜いた状態で答えた。


「後で、変えの枕を持ってこさせなければいけませんね」


 俺はため息を吐いてそう言った後、再び彼女の方を向いた。彼女は、アーニャが抜いた剣に、怯える様に後ずさった。


「アーニャ、少し部屋の外で待っていてください」


「危険ではないですか?」


「この部屋に武器は無いでしょう?」


「分かりました。しかし、危ないと感じたら直ぐに叫んでください」


「ええ、そうします」


俺が素直にうなずくと、アーニャは扉を開けて外へと出て行った。


「さてと、それではお話ししましょうか」


そう言って彼女を見ると、警戒を浮かべた顔で此方を睨んでいた。しかし、話を聞く気にはなったのかベットの端に腰を掛け、こちらを向いた。


「そう睨まないでください」


 俺は知っている元の姿の方が警戒を解いてくれるだろうと思い、変身を解いた。彼女の目が驚いたように見開かれた。


「挨拶は、久しぶりが適切かな?」


俺は茶化すように言った。


「加・・畠?」


「他に誰に見える?」


彼女の驚いた表情にニヤニヤしながら、俺は答えた。


「でも、さっきまでは女の人の姿で――」


「あれは神様に貰ったスキルだよ。こちらに転移する前の説明で言っていただろう」


俺は、驚く彼女に説明した。


「なんで加畠が・・・・・」


「女の姿をしていたか?それにはいろいろと理由が――」


「そんな事じゃない!」


彼女はいきなり叫び立ち上がった。その瞬間、剣を抜いたアーニャが入ってきた。


「何も問題はない」


俺は彼女に心配ない事を伝えた。彼女は、俺が無事な事を確認すると、再び退出した。


「あまり叫ばないでほしいな。下手したらアーニャだけでなく巡回の兵士まで飛び込んでくる。この姿をアーニャ以外に見られるのはまずいんだ」


希は、アーニャの持った剣を見た事で硬直していたが、彼女が退出したことで、また話し始めた。


「何で戦争を始めたの!?」


「何故と言われても、カルディナ王国が欲しかったからとしか言いようがないな」


「あんたのせいで何千人って人が死んだんだよ。どうして、そんな平然としていられるのよ」


俺は、何の感情も現れないような表情で答えた。


「死んだ彼等は、俺とのかかわりがない者達だからだ」


彼女は、俺の返答を聞いた瞬間絶句した。


「俺にとって大事なのは身内であってそれ以外じゃない」


 俺が大事なのは身内だ。身内の為に他人を害さなければならないなら、俺は躊躇なく他人を害す。身内の為なら、命さえも喜んで手放す。それが俺という存在だ。


「どうして私の国なの」


彼女は泣きそうな声で質問してきた。


「一つ、君の国が隣にあったから。二つ、海に面していたから。三つ、軍の規模が小さかったから。四つ、君が戦争を嫌っていたから」


俺は、つらつらと理由を上げていった。


「特に、三つ目と四つ目は重要だ。これのおかげで、我が軍の犠牲が少なく済んだ」


「なんで、私が戦争を嫌っているのをしっているの?」


「まぁ、簡単なことだ。現代に生きる全ての人が、子供のころから戦争をしてはいけないと教えられる。その結果、大体の人が戦争が起こることに忌避感を持つ。女性は、それが特に顕著だからな。それに、大使館を通じて情報が入ってきていたからな」


「加畠は、戦争を起こすことに忌避感は無かったの?」


 俺は、彼女の問いに少し考えた。しかし、直ぐにそんな忌避感は無かったという結論にたどり着き、彼女に対して答えた。


「まったくなかったね。今回の戦争は勝率の高いものだったし、得られる利益が馬鹿に出来ないものだったからな」


「そんな・・・・・」


 そう言った彼女は、項垂れていた。静かになった部屋に、彼女がすすり泣く音が響いた。俺は、彼女の様子から、これ以上の会話は止めた方が良いと感じた。そのため、変身スキルを使い、アナスタシアの姿になってから、席を立ち扉へと向かい、ドアノブに手を掛けたところで、この部屋に来たもう一つの目的を思い出した。


「貴方と貴族の方々は後日、我が軍と共に王都に来てもらいます。その後の処遇は、決まり次第お伝えします」


俺はそう言って、部屋から退出した。部屋の外ではアーニャが待機していた。


「長い時間待たせてしまいましたね」


「いえ、これが仕事ですので」


「そうですか。それでは、部屋に戻りましょうか」




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