第2試練:出会い
あべこべ要素出るまでは全力疾走と言っておきながらかなり時間がかかりました……。
沢山のブクマありがとうございます。
最後の方でちょぴっとあべこべ要素はいってきまふ
謎の声が聞こえてから数えて、三日目の朝。僕は最後の食料であるポロリ―メイトをむさぼりながら外の様子を観察していた。
ベランダから見える外の景色は、ゾンビと赤いペイントが施された街並み、そして乗り捨てられた大量の車が大半を占めている。
見える範囲内で生存者らしき姿は確認できない。
背筋がゾッとする低くかすれたうめき声は、少数ならばまだしも、大量に存在するゾンビが代わる代わる声を上げているため、精神的にくるものがある。
これは早めに何か対策を取らないとまずいだろう。
食料も尽きたため、確保しなければいけない。それに、今朝確認したところ電気、水道、ガスが止まっていた。
幸い、一日目、二日目はまだ電気が通っていたため、暖房を入れることができたが、今日からはそれもできなくなる。これからが冬本番であり、この問題もこのまま放置しておくことはできない。
水道も止まったため、シャワーを浴びることもできない。
外の景色を眺めながら、どこに向かうか考えていると、少し離れたところからかすかに人の声が聞こえた。
声の聞こえた方に目を向けると、走って逃げる生存者とそれを追いかけるゾンビの群れが見えた。
声や姿から判断すると女性らしい。遠くからでもわかる金色の髪は太陽の日によって輝いて見え、とても目立っていた。
女性がこのまま真っすぐ進めば、このマンションに着く。
昨日の昼頃、少し離れた場所から大きな爆発音が聞こえたため、この辺りを彷徨っていたゾンビの殆どが、その音がした方へ移動していった。
軽くあたりを見る限り、付近には女性の後ろをついてきているゾンビ以外にはいない。
これならば救助も可能だろう。
自室を飛び出し、階段を使って一階に向かう。一日目、二日目にマンション内を探索し、ゾンビがいないことを確認しているが、念のため注意しながら進む。
普通のマンションならばこう簡単に安全確保することはできなかっただろう。
このマンションはとある事情があって僕以外には二人しか住んでいない。その二人の内一人は、現在出張中であり、一人は旅行中。つまり現在このマンションには僕しかいない。
階段を下りた僕は、マンションの裏口から顔だけ出して周囲を確認する。ゾンビがいないことを確かめたら、ドアが閉まらないようにストッパーを置いて外に出る。
物音をたてないようにマンションの表に出る。すると、先ほどの女性はこっちに気が付いたらしい。ただ、僕が人間かゾンビか判断できていないのか、走る速度が少し遅くなる。
「こっち!」
音に反応するゾンビが街を闊歩するこの状況の中、なるべく大きな声を出したくはなかったが、今回は仕方がない。
僕の近くにまで来た女性の手を取って走り出す。マンションの一階部分である駐車場を通り抜け、外に出るときに使った裏口からマンション内に入る。
ストッパーを外してドアを閉めて一息つく。
「はあ……、はあ……ありがとう」
女性は背負っていたリュックサックを投げ出すと階段に座り込んだ。女性の金髪は隙間から差し込む日の光によって淡く光り、あまりの綺麗さに思わず見とれてしまった。
「……まず一つだけ質問、どこも怪我はしてない?」
これだけはすぐに確認しなければならない。奴らに噛まれた跡が彼女にあれば、彼女を連れていくことはできない。
彼女がゾンビになるかもしれないから。
「どこも噛まれていないし、怪我もしてないよ」
彼女はいきなり、コートを脱ぐと、その下に着込んでいたセーターも脱ぎ始める。上半身が胸を覆う下着のみとなると、次はスカートに手を掛ける。
最後に靴とソックスを脱いでその場で一回り。
「怪我してないでしょ?」
若干恥ずかしそうに顔を赤くしていたが、特にためらいもなく彼女は服を脱いだ。
この世界では、前世の世界と比べて異なる点が存在する。
そのため、僕の価値観でこの状況を表すとすればこうなるだろう。
少女に感染していないか疑われた男は、手っ取り早く、確実に伝えるために服を脱いで感染していないことを証明したと。
そう、この世界では男女の価値観が反転していた。
※ポロリ―メイト
某栄養調整食品が元ネタ。一文字帰るだけであら不思議。
※人がいなくなれば電気水道ガスは数日で止まるらしい(ネット調べ)
※マンションの裏口のドア
外から開けられない場合と、鍵があれば開けられる場合の二種類ある?
表の玄関は中にいる人から開けてもらう形式のやつ
次回は3日+3日以内に。