表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の支配人  作者: しまもん
7/8

それは巨大な艦隊だった。

JH星の周りを完全に包囲するように、無数の空母や戦艦が陣形を組んでいる。



<待たせたな支配人の少尉殿>


ディスプレイに艦隊司令官の姿が写る。

まさかここでもそんなあだ名で呼ばれるとは思ってもいなかった。


<JH基地の持っている全てのデータを見させてもらった。中々に強敵の様だが、安心しろ。我々が必ず撃破してやろう>


ディスプレイには艦隊から次々と出撃していくロボット達の姿が見える。

見えない敵相手に戦うためには物量で押すしかないのだろう。

既にJH星にいたロボットの総数を遥かに上回る数のロボットが地上に降り立った。


すると即座に敵が攻撃を開始したようだ。

いくつかのロボットが撃破される。


しかし流石は最新型だ。

敵の攻撃パターンを認識し、連携をとって反撃を開始した。


旧式とは違う素早い動きで敵の攻撃を避けて反撃をするロボット達。

艦隊も敵の予測地点に対して攻撃を開始する。

ロボットが一定数撃破されると、補充のロボットが即座に出撃し、戦場に存在するロボットの総数が減ることは無い。


完全に物量で敵を倒すという作戦は次第に敵を疲労させたようだ。

そして終に、こちらの一撃が敵を捕らえる。


ロボットが放った銃弾が何かに当たり、何も無い筈の空間から火花が飛んだ。


私はその光景をディスプレイ越しに見て、安堵した。


やっと、やっと敵を完全に捕捉できた。

これでこの戦いは終わる。

平穏な日々が戻ってくる。


一瞬、そんな事を考えた。

しかし、戦争はそんなに甘いものではなかった。


<警告!高エネルギー反応あり!衝撃に備えよ!>


と人工知能が警告を出した、次の瞬間だった。

次の瞬間、地上にいたロボット達が全滅したのだ。


一瞬だった。

何が起こったのか分からなかった。

最新鋭のロボット達が全て、真っ二つに切り裂かれ、次々と爆発していった。


爆発の煙が晴れると、そこには一機の戦闘ロボットが居た。


機体のサイズは地球軍の平均的な戦闘ロボットのサイズと殆ど差は無い。

武器らしい物も持っており、片手に大きな刀を、もう片手にライフルの様な物が装備されている。

全体的に青色で塗装され、丸みを帯びたボディをした機体をサーモグラフィーで表示したところ、かなりの高温となっている事が分かった。

事実、機体の所々から煙が出ている。


敵はその場から動かず、じっとしている。


艦隊司令官は空母に残っていた全ての艦載機を出撃させた。

それと同時に艦隊の全火力を持って敵の撃破を決定した。


雨の様に艦載機が地上目指して出撃する。

戦艦も巡洋艦も駆逐艦も、持てる全ての火力を敵に集中させている。


もはや「生け捕りにして解析する」等とは言っていられない。

この敵は、消滅させないといけない存在だった。



すると敵はその場にゆっくりと跪き、ライフルを空に向けた。

そして引き金を引いたのだ。



<奴は一体何をしているんだ!!??>


それが艦隊司令官の遺言となった。


敵から放たれたビームが司令官が乗っている戦艦を正面から貫く。


戦艦は一瞬沈黙すると、次第に船体を膨らまし、爆散した。

敵は次々にビームを放ち、宇宙戦艦を沈める。


惑星連盟の艦隊から集中攻撃を受けても何とも無かった戦艦が、まるで風船のように破裂していく。

地球軍が誇る最新の空母が爆散し、まだ出撃途中だった艦載機の残骸がデブリとなる。

巡洋艦も駆逐艦も、まるで串に通したようにビームに貫かれ、同時に何隻も沈んだ。


惑星を包囲していた艦隊が消えてなくなったのだ。

・・・いや、残骸は残っている。


破裂した風船のような無敵戦艦の残骸。

ひしゃげた空母や巡洋艦、駆逐艦の残骸が一つになり、現代芸術の様に漂っている。

地上に降り立った艦載機は、艦隊の人工知能が消滅すると同時に動かなくなった。


地上には空にライフルを構えた敵だけが残った。


敵は動かない。

じっと空にライフルを構え続けている。


そして私もディスプレイの前で動けずにいた。


理解出来なかった。

理解したくなかった。


これは・・・・一体何だというのか?

この死神は、一体どうして私の目の前に存在しているのだろうか?


たった1秒が長い。

頭が全てを拒否している。

時間も空間も、文字も言葉も、全てを頭が拒否している。


人工知能が何か話しかけてくる。


え?もう地球に帰っていいの??

やったー。

2日後にはお母さんの作ってくれる料理が食べられるんだね?

小さい家だけど、やっと帰れるんだ。

私の部屋も小さくて、ベッドから何度も転がり落ちたんだ。

小さい机で必死に勉強して、高校の奨学金を手に入れた時なんて、家族全員で大喜びしたんだよ?

病弱な弟がさ、作ってくれたさ、オリガミって奴なんだけどさ、大事にしててさ、部屋の宝箱の中にさ、今も入っているんだ。


涙がポロポロ流れる。

人工知能が何か話しかけてくるが、脳が全てを拒否している。


私は笑いながら泣いていた。


確かにその時、私は実家の玄関に居たんだ。

家族が笑顔で私を迎えてくれた。

家族の匂いがしたんだ。

台所でお母さんが料理をする匂い、軍事工場で働くお父さんの独特な油の匂い、弟から匂う陽だまりのような匂い。

その時、確かにそんな匂いが私の鼻の中に存在したんだ。


<ジュリエット少尉。敵は現在機能を停止しているようです。攻撃の許可をいただけますか?>

<ジュリエット少尉。敵は現在機能を停止しているようです。攻撃の許可をいただけますか?>

<ジュリエット少尉。敵は現在機能を停止しているようです。攻撃の許可をいただけますか?>

<ジュリエット少尉。敵は現在機能を停止しているようです。攻撃の許可をいただけますか?>

<ジュリエット少尉。敵は現在機能を停止しているようです。攻撃の許可をいただけますか?>


人工知能が私が覚醒するまで、同じ事を言い続ける。


どこに戦力があるんだ?

ああ、そうか、旧式が何機か残っていたな。

それで勝てるのか?

敵はまるで神様みたいな能力を持っている。

そんな奴に勝てるのか?


<機能を停止した状態の敵機にならば有効弾を与える可能性があります。攻撃の許可をいただけますか?>


私は笑いながら頷くしかなかった。


人工知能が地上に残った旧式に指令を出して敵へ攻撃を開始した。

動かない敵機に何発も攻撃が命中するが、敵の装甲は凹みもしていない。

弾が無くなり、刀で斬りつけるが、傷すら付かない。

旧式は敵機に抱きつき、自爆攻撃をするが、土煙が晴れた時、敵機はそのままの姿でそこにいた。


「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


オペレーションルームで私は笑い転げた。

ここまで笑ったのは小学生以来だ。

可笑しくて、可笑しくて、可笑しくて、頭がおかしくなった。


人工知能も沈黙しており、基地には私の狂った笑い声が響く。


涙を流し、ヨダレを撒き散らし、床で転がりながら私は笑い続けた。

それしか出来なかった。


よし!!今からトレーニングルームでトレーニングをしようか!?

・・・何のために?


よし!!今から食堂で食事をしようか!?

・・・何のために?


よし!!今から部屋に帰って寝てしまおうか!?

・・・何のために?


生き物の行動とは全て、より良く生きるために必要なことだ。

明日が今日よりもより良い一日になるために生き物は行動する。

それは人間でも犬でもゴキブリでも同じだ。


では明日が来ない事が分かっている人間に、それらはどれだけ重要なことなのだろうか?


体を鍛えても宇宙の塵になることに変わりは無い。

食事をしても、睡眠をしても、その結果に変わりは無い。


私は何のために存在している?

ここで死ぬのが私の運命なのだろうか?


広い宇宙、生命体なんていくらでもいる。

そんな中の一つがこうして死んでも、宇宙には何の変化も無いだろう。


しかしこれは私の人生だ・・・。

他の誰でもない、私だけの、唯一の人生だ!!

なんで!なんで!

こんな死に方をしないといけないんだ!

私は生きたい!!

もっともっと生きたい!!

幸せになりたい!!

なのに何で・・・、何で!!

どうしてですか神様!?お願いします!助けてください!!

誰でも良い!私を助けて!!助けて!!



JH基地で少尉が一人泣き続けた。


その後、地球軍はJH星の破棄を決定したのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ