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星の支配人  作者: しまもん
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基地に鳴り響くサイレンを聞いて、私はオペレーションルームに急いだ。


「何が起こったの!?」


人工知能に大声で問いかけると、人工知能は普段通りの冷静な声で


<地上で戦闘が開始されました>


と答えた。

その後次々と情報が集まってくる。

ディスプレイを見ながら私は戦々恐々とした。

地上にある全ての無人基地が何者かに攻撃されているのだ。

攻撃している者はどうやら壊滅した筈の連合軍の残党の様だが、目を見張る戦力だった。

地上には戦車が、空中には戦闘機が、海上には艦隊が。

これほどの戦力がまだ隠されていたなんて、全く知らなかった。

私は落ち着くために深呼吸を行い、


「この場合、どうすればいいの?」


と問いかけた。


<現状でもっとも有効な手段は反撃を開始することです。反撃開始の許可をいただけますか?>

「分かりました。許可します」


間髪入れずに返答すると、人工知能が処理を開始した。

ディスプレイに写る地上基地から次々と攻撃ロボットが出撃を開始する。

今回出撃したロボットは既に最前線では使われなくなった旧式ではあるが、この星では未だに有効な戦力だ。

人工知能の計算によると、敵の兵器ではロボットの装甲を打ち抜くことは不可能であり、敵の勝算は極めて低いとのこと。

ここから先の作戦を立てたりするのは人工知能の仕事となる。

もはや私は結果だけ聞けば良い。


私は少しだけ安心すると、自分がまだ汗だくのトレーニングウェアを着たままだったことを思い出した。

まずはシャワーを浴びてから制服に着替え、食堂で紅茶を用意してオペレーションルームに戻った。

ほんの30分程度席を外していただけで、勝敗は決していた。

戦車も戦闘機も艦隊も、すでに存在していない。

現在は残った少数の敵の排除が始まっている。

私は椅子に腰掛け、出来立ての紅茶を飲みながらディスプレイを眺めた。

ディスプレイには戦場の様子が映し出されている。


片腕を失いながらも拳銃を撃つ歩兵。

燃え盛る戦車から脱出するも全身火達磨になってしまい絶命する戦車兵。

火を噴く戦闘機から脱出するも、パラシュートを打ち抜かれて高高度から自由落下を始めるパイロット。

沈む船から海に飛び込むも、高出力のビームが直撃し、艦隊ごと蒸発するように死んでいく兵士達。


小銃を握り締め、こちらに連射してくる歩兵までいる。


あんな銃ではロボットを撃破するなんて不可能だ。

私はこの歩兵もロボットに撃ち殺されるかと思ったが、意外にもそうではなかった。

兵士が立っていた地面が戦闘の衝撃で割れ、兵士はそのまま割れた地面に吸い込まれていったのだ。

ロボットが追跡用の小型偵察機を出して兵士の行方を探っている。


そんな戦場の様子がディスプレイに次々に映し出される。

私はまるで映画でも見ている気分になり、スコーンが食べたくなってしまった。




戦闘が終了し、人工知能が戦闘結果を報告してくる。

かなりの数の敵を撃破したようで、戦車だけでも1000両は居た。

今回の戦闘では捕虜を取ることはせずに皆殺しにすることになっていたが、一つだけ不明な点があった。

それは敵の戦死報告の部分に、たった一人だけ「生死不明」というのがあった。

他はすべて戦死となっているのに、こいつはどうして不明なのだろうか?

私は人工知能に理由をたずねると、この兵士の生死については私の判断が必要なのだという。

人工知能は一番大きなディスプレイに映像を映し出した。

これはさっき見た地面に吸い込まれた歩兵の映像だ。


<この歩兵だけ、生死が不明です>


確かに、この歩兵はこちらが攻撃をするまえに割れ目に落ちている。


「追跡は出来なかったの?追跡ロボットを投入したでしょ?」

<残念ながら、この地域には広大な地下水脈が存在し、兵士はそこに落ちてしまったようです>


ディスプレイには地下水脈の様子が映し出された。

そこには流れも急な地下水脈がいくつも表示されている。


「この場合、どのように処理するべきなの?」

<生存の可能性は極めて低く、この場合は死亡と処理することが出来ます。許可をいただけますか?>

「許可します。この歩兵は死亡と処理しなさい」


私の許可を得た人工知能は生死不明を0にし、死亡者の数を1増やした。




作戦が開始され、俺達はトンネルから敵基地目指して突撃を開始した。

遠くから支援砲撃も始まった。

基地に何発もの砲弾が降り注ぎ、基地の施設を吹き飛ばしていく。

未だ基地からは反撃が無い。

ひょっとしたら上手くいくのかもしれない・・・。

そんな淡い期待があったのも事実だ。


そんな期待はものの数分で打ち砕かれた。


敵の反撃が始まったのだ。

基地にある大きな格納庫の扉が開くと、そこから次々と大小さまざまなサイズのロボットが出てきた。

こちらも戦車や戦闘機が応戦を開始する。

1年前とは違い、改良に改良を重ねた連合軍ご自慢の最新兵器だ。

味方のミサイルや砲弾がロボット達に当たり、巨大な爆発が起こる。

土煙が巻き上がり、空から砂利が落ちてくる。

それでも俺達は突撃を続け、敵基地を制圧しようとしていた。


しかし土煙が晴れると、そこには無傷のロボット達が居たのだった。


それからは一方的だった。

戦車も戦闘機も撃破された。

仲間の歩兵達も対戦車ミサイルをロボットに撃ったが、全く効果は無かったのだ。

対戦車ミサイルを開発した技術者達は「これなら確実に地球の兵器にもダメージを与えることが出来る」と自信満々だった筈なのにだ。

無線機もジャミングのせいで使い物にならない。

一瞬だけ繋がりはしたが、それは地下司令部が陥落したという通信だった。

たった十数分で連合軍は敗北したのだ。

俺は傷ついた仲間を助けるべく小銃で敵ロボットの注意を引いたつもりだった。

しかし運が無かった。

近くで爆発が起こり、俺の足元の地面が割れたのだ。

俺が地面に吸い込まれるのは一瞬だった。


気が付くと真っ暗な地下水脈の濁流に飲み込まれ、どちらが上なのか下なのかすらも分からずもがき苦しんだ。

途中で銃を落とし、次々に装備を落としてしまった。

何度も岩に叩きつけられ、わき腹の骨まで折れた。

それでも必死になってもがき、奇跡的に何かに捕まる事が出来た。

何につかまっているのか検討も付かなかったが、必死になって濁流に逆らいながらしがみつく。

暗闇の中、手探りであたりを探ると、掴んでいる物はどうやら人工物だということが分かった。

俺はその「何か」にしがみ付き、よじ登る事で濁流から脱出することに成功した。


ゴホゴホと咳き込むが、やっとまともに呼吸出来る。

口の中に鉄の味が広がっていく。

体中が痛む、多分何箇所か折れているな。

俺は胸に装備していた懐中電灯を使って辺りを見回した。

足元にはゴウゴウと音を立てて流れる巨大な川が、周りにはゴツゴツとした岩肌が・・・。




そして目の前には、青色で塗装されたロボットが横たわっていた。




JHの反乱から1時間経った。

私は人工知能が提出してきた戦闘報告書の最終チェックを行い、上層部に提出した。

上層部では戦略的価値の少ない僻地での戦闘という扱いで、正直大して大事になることも無く、ディスプレイ越しに上官が眠たそうな目をしながら「あ~~、ごくろうさん」と言っただけだった。

人工知能も平時の状態に戻り、基地は戦闘なんてなかったかのような状態になったのだ。

一応、残党がいないかを調べるために人工衛星や地上基地から出撃した偵察ロボットを使い偵察を行うことになったが、正直何か起こるとは思えない。

敵の主力だった連合軍残党はすでに存在しない。

あと残っているのは精々が市民団体程度だ。

彼らには武器がないし、そもそもJH人には星の政治に対する選挙権もない。

つまりは、何も出来ないのだ。

私は安心して就寝時間になるとベッドに入るのだった。

今日は久しぶりに忙しい一日だった。

人を殺したという感覚は皆無だが、これは私が異常なのだろうか?

人工知能に攻撃開始の許可を出したのは私だが、実際戦闘をしていたのは無人機だ。

私はディスプレイ越しにその様子を眺めていただけだ。

そっと手を見るも、その手はいつもと同じ褐色の女性らしい手だ。

血で汚れている様子もないし、罪悪感で震えてもいない。


これが戦争なんだな。

これが人を殺すと言う事なんだな。

そして、これが私なんだな。


そんな事を考えるうちに段々とまぶたが重くなり、私は眠りに付いたのだった。


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