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秘密の軍事学校でニートが改心します  作者: ryuu
プロローグ 最悪生活の始まり
8/18

非常事態と奇妙な視線 後編

 カランという薬莢が落ちる音は自らの近くで響いたものではなかった。

 ゆっくりと顔をあげて周囲を視認していく。

 ステージに満身創痍の女性が銃を片手に立っていた。それは神楽坂さんではない別の人物である。

 今までどこにいたのか。

 コギャルの様な恰好をした飾りっ毛の多い改造軍服を着こみ、艶やかな茶髪をポニーに結いあげたかわいらしい顔立ちの女性。彼女もまたトイレで出会った少女同様に見覚えのある顔だった。

 トイレで倒れた少女と数時間ほど前に訓練ルームで一緒にいた女だった。

 威勢がよく、男3人に反抗していたのが印象深い。

 彼女はその威勢のよさを発揮して銃弾を放ち、見事にフードの男の肩口を射抜いた。

 フードの男はたたらを踏んでその場から逃げ出した。

 ステージでは最後の力を振り絞ったようにして俺を助けた女は倒れた。


「あ、おい!」


 急いでステージにまで戻り彼女の様子を確認する。

 意識が激しく混濁し、体のあちこちに裂傷に腹部に大きな銃創がある。

 重傷であった。


「早く医務室に連れてかないとやばいじゃないか。でも俺一人で3人は無理だぞ」


 もう、傍らに倒れた神楽坂さんと外の待ち合いホールのソファで寝かせているもう一人の少女を思い浮かべて事態の深刻さに頭を悩ませる。

 頭は良いほうではない俺にとって考えるという行為は無駄なあがきでしかない。


「奴が戻ってくる可能性もあるよな」


 ふと、視線が神楽坂さんの方に移った。振動音が聞こえたからだった。

 神楽坂さんに謝罪をいれて体をまさぐりポケットの内部に振動の正体が潜んでいた。

 それを取り出した。携帯電話だった。だが通常の携帯電話とは違っているようなデザイン。

 俺が知ってるものではなかった。

 異様な形をしたその携帯電話の通話ボタンをオンにして応対した。


「はい、もしもし」

『あなただれ?』

「えっと、神楽坂さんのルームメイトの神咲辰矢ですが」


 その受け答えとして相手側に伝わるのかは半信半疑であったがそう答えると相手側の息をのむような息遣いが聞こえた。


『神咲くんっ! 無事なのですね』

「あ、はい」

『月は平気ですか!』


 月と言われて誰だったかと考えこんでから数秒のうちに神楽坂さんの名前であったことを思い出した。


「いえ、ちょっと自体が非常にやばい状況でありまして神楽坂さんは負傷しているんですけど……その前にあなたは教官でよろしいのかな?」


 聞き覚えのある声が教官の声に酷似したためそう問いかける。返答は「ええ」と返ってきたことですぐさま状況の伝達を報告した。電話相手の教官は救援をよこすという通達をくれた。

 電話を終了すると劇場ホールの扉がきしむ音が響き体に緊張がほとばしった。

 手近くに落ちたコギャル女子の銃を拾い上げて出入り口に銃口を向けた。

 しかし、その銃口をすぐに下ろした。入室して来たのはトイレで倒れてた女の子だった。


「き、君大丈夫なのか!」


 慌てて彼女のそばに駆け寄った。

 先ほどから翻弄されっぱなしな状況に苦悩させられると感慨に思ってしまう。


「さーや……さーやぁ」

「さーや?」


 彼女はステージに向け手を伸ばす。

 その仕草は倒れ伏したコギャルに必死で駆け寄ろうとする懸命な行動だった。

 彼女に肩を貸して支えてやりながらステージまで付き添う。

 さーやと呼ばれたコギャル女子に彼女はついに寄り添いその背に顔を押しつけながら泣きじゃくる。


「もうすぐで教官たちが救援に来るそうだ。だから、しばらくここで待つといいよ。敵もさっきそのさーやちゃん? が最後の力で撃退したから戻ってくることはないと思う」


 なるべく、落ち着かせるような言葉をかけてやったつもりで声をかけた。

 彼女は泣きじゃくり続けるだけで何も反応は示す様子はなく明らかな疎外感を感じる。


「まぁ、そうなるよね」


 などと気落ちしながらあることを急に思考をよぎった。

 先ほどなぜここにフードの男はいたのだろうか。

 なにをしていたのか。


「まさかっ」


 慌てるように垂れ幕の奥、器材置場の個室に向かい周囲を散策した。

 そうして、一つ見つけた。

 爆弾である。


「やっぱりか」


 すぐに先ほどの携帯を取り出しリダイヤルする。


『こちら神楽坂星姫大佐であります』

「神咲辰也です、えっと星姫大佐、少々問題がでました」


 電話にて教官が名乗ったその名前に衝撃をうけつつも早急に内容を伝えるのが先だった。

 現在のもっとも最悪な状況を。


「爆弾を見つけました」


 電話相手の神楽坂さんと同じ苗字を持った教官が息をのんで緊迫した気配が伝わってくるのが電話越しにでもはっきりと伝わるのだった。


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