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秘密の軍事学校でニートが改心します  作者: ryuu
プロローグ 最悪生活の始まり
5/18

神楽坂月

「目はさめた?」

「うっ‥‥ん?」


 ひんやりとした心地よさが額に感じ薄ら眼で目の前を認識していく。

 まっさきに飛び込んできたのはルームメイトの美女。

 ゆっくりと体を起こして周囲の確認を行って自分がどこにいるのか理解した。

 いつの間にやら部屋に戻ってきていたようだった。


「たしか、俺‥‥上の階の訓練ルームで集団リンチに‥‥」


 訓練ルームにて二人の美女を助け身代りに集団リンチにあっていた記憶をたどった。

 そこから先の記憶はなく部屋に戻ったという経緯が思い出せない。


「私がここまで連れ帰って来たのよ。教官の見回りがあってルームメイトのあなたがいないからどこだって聞かれたわ。私あなたの居場所を知らないって答えたの。そしたら、教官があなたを呼びもどして来いって言うから連れ帰って来たってわけ」

「連れ帰ったのはいいがどうやって? たしか男3人くらいただろ?」

「あー、あの馬鹿な男3人。あんなの相手にもならないわよ」

「へ?」


 なんら自慢することもなく当たり前のように語った彼女に俺は思わず硬直してしまった。

 そのまま彼女の体を足先から頭の先まで眺めてみる。

 すると、その視線を感じ取ったように彼女が体を抱き隠す。


「何視姦してんのよ変態!」

「し、視姦してねぇ! 自意識過剰だ!」

「うっさい!」


 無慈悲な脳天チョップをくらわされて頭を押さえる。

 意外や意外。この女は見かけによらず相当な腕力があるようだった。

 軍事学校の新入生となろう人物だ。そのくらいの力量があっても不思議はないか。


「それと話を戻すけど教官があんたをお呼びよ。検査を受けてないんですってね。さっさと行った方がいいわよ」

「けんさ?」

「そう、検査」

「けんさってなに?」

「はぁああ!?」


 驚きを受けたように彼女は声を張り上げる。

 知らないのかと言うように視線で訴えかけてくるので首を振って知らないというアピールをすれば小馬鹿にしたような態度を見せあきれ気味にため息をついた。


「あなた何しにここへ入学しに来たのよ」

「何もないけど」

「何もないって‥‥あきれたわ」


 どうにもこの学校の入学は入学動機がないことは異常に不思議なことのようす。

 実際、俺は親父に無理やり入学をさせられた身の上であり入学動機などない。

 まっとうな人間になれるようにと島流しにされたというのが理由に過ぎない。


「あのさ、なんか知んないけど検査の場所ってどこでやってるの? 教官ってどこにいるわけ?」

「‥‥‥‥そんなことも知らないの?」

「ああっ! まったく!」

「威張って言うことじゃないわよ!」

「さーせん」


 へらへら笑いながら頭をさげれば先ほどよりもさらに強い脳天チョップが頭蓋を割らんばかりに入った。

 思わず頭を押さえ攻撃の意味の有無を訴えたが彼女は「腹立ったわ」と一蹴して一枚の紙を手渡す。


「そこに場所が記載されてるからさっさと行ってきなさいよね」

「サンクス、えっと」

神楽坂かぐらざかつきよ」

「おう、俺は――」

「神咲辰矢。教官から名前は聞いたわ」

「そっか。じゃあ、ありがとう神楽坂さん。教官の場所へ行ってくるわ」


 と言いながら俺は部屋を出て行った。


 ******


 部屋に一人ポツンと取り残された神楽坂月は携帯を取り出した。

 そこには日記のように事柄が記載されている。

 今まで自分がたどってきた内容が。


「にしても、教官の話本当なのかしら‥‥彼が適生者って‥‥。軍事秘匿機密の適生者は女性だけのはずだったのに‥‥。まぁ、最初からおかしいと思ってたけどルームメイトが男子ってところで。最初は男装趣味の女子かと思ったけど明らかに男であったわけだし‥‥」


 そっと、自分のバックを見た。その中には彼に握られた下着があり数時間前の内容がしっかりと脳に刻まれて気恥かしくなる。


「ああ、もう。男子に裸を見せるなんて‥‥。しかも油断をしてしまったわ。『適生者』チームのリーダーになるっていうのにこれじゃあだめよね」


 自分の油断を自己反省を行いつつ、今後の日程表を確認する。

 明日には合同でエントランスにてあつまるオリエーテーリングがありそのあとは特待生だけは特別メニューで最上階甲板にて行われる。

 そこでは島に着いてからの『適生者』だけの概要説明やルールが通達されるはずである。



「その前に私はさっきの力の使ったことに対しての問題で呼び出されたりしなければいいのだけど‥‥はぁ‥‥」


 気分は憂鬱になるばかりである。

 今後も何があるか分からない。

 あのような局面に遭遇しても平常心でいられるように【力】をむやみに使うことは控える努力をしないといけない。


「まったく一般生徒は無粋な連中が多くて困るわ」


 難儀してれば携帯が震え、誰かからの着信が来たようだった。


「誰かしら?」



 画面を見ればこのフェリーに同じく乗船してる姉からだった。

 いやな予感を覚えながら携帯に出ると姉は意気揚々な感じで力を使ったことに対して問いただしてきた。


『まぁ、そういうことならみのがしちゃうわよぉー! かわいいかわいい私の妹のためだもんね。でも、気をつけなさいよぉ。あなたたちのような存在を知ってる連中の中には私たちのようにいいことに使うやつらもいれば悪いことに応用しようとする連中もいるんだから。今回のこの学校も国のためにあなたたちを使うと言うのが理由であり訓練させようというのもある。悪いことの場合は違うんだから。『力』をもつ存在であると月ちゃんを断定すればいつ何時襲ってくるかも‥‥。なによりも今あなたたちの存在は問題にもなってるしねぇ』

「え? どういうことお姉ちゃん?」

『それは、ひ・み・つ。うまく今までよく隠せたって思うのよね本当に‥‥。あ、なんでもないわよぉ。じゃあ、きるわね。『力』はむやみに使っちゃだめよぉ」


 そうして、通話は終わる。

 だが、姉の言葉が妙に気にかかり頭の中でその言葉を何度も反駁させる。


「問題‥‥今まで隠せた‥‥それって‥‥」


 あることが思い浮かんだがそんな最悪なことを考えてはなるまいと頭を振るい雑多な感情をかなぐり捨てるように心に平常心を保たせた。


「大丈夫、私たち『適生者』は大丈夫よ」


 そう言ってひとりでに日課の日記に書きためていくのだった。


 

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