マフラーの魔法
久しぶりに書きました。よかったら 読んで下さい。
雪が降る季節になりました。ハーっと息を吐いてみると、白い息になるほど寒くなってきました。
みくちゃんは学校が大嫌いな小学1年生。今日も学校なのですが、嫌で嫌でなかなか家から出れません。お母さんは困り顔。どうしたら学校に行ってくれるか悩んだ時、ふとあることを思い出し、クローゼットを開けてマフラーを取り出しました。
「みくちゃん。このマフラーは魔法のマフラーなの。」
みくちゃんはマフラーを見て
「魔法?」
お母さんはみくちゃんの首に巻いてあげながら
「ママもね、学校大嫌いだったの。その時に、おばあちゃんがね『このマフラーは魔法のマフラーだよ』ってくれたの。そうしたら、学校に行けるようになったんだよ。」
「ほんとう?」
頭をなでてあげながら
「そうよ。だから、みくちゃんもこれから学校に行けるよ。」
みくちゃんはピンクの手編みのマフラーを
みつめて、ピンクが大好きなみくちゃんは、少し元気が出てきました。
「学校行く。」
お母さんはホッとしました。
その他に、ピンクの手袋も身に着けて学校に向かいました。
通学路は雪が少し溶け始めて、踏むとシャキシャキいいます。ピンクのマフラーとシャキシャキの音楽でみくちゃんは上機嫌。
「おはよう。みくちゃん!」
同じクラスのなみちゃんがみくちゃんを見つけて走ってこっちに向かってきました。
「うわー。みくちゃんのマフラー可愛いね。」
褒められてみくちゃんは嬉しくなり、マフラーを首から外し、誇らしげに見せました。
「ママがくれた魔法のマフラーなの。」
「いいなー。魔法のマフラー。見せて見せて!」
なみちゃんは、マフラーをひっぱりました。
「ダメだよ。」
みくちゃんもひっぱり返し、綱引きみたいになってしまいました。
そうしたら、どうでしょう。なみちゃんの持っていた方からツルツルっとマフラーがほどけ始めてしまいました。
びっくりした、なみちゃんは
「みくちゃんがいけないんだよ。見せてくれないんだもん。」
みくちゃんはわーんと大声で泣き始めてしまいました。
「なみちゃんのバカ。大嫌い。」
みくちゃはそう言って、家に走っていってしまいました。
「ママー。」
ガチャっという玄関の音と同時にみくちゃんの泣き声が聞こえてしまいました。お母さんは急いでみくちゃんのもとへ行きました。
そして
「なみちゃんがマフラーを壊しちゃったー。もう学校行きたいくない。お家にいる。」
みくちゃんはお母さんに抱きつき、わんわんと泣き続けました。
お母さんは、とにかくみくちゃんを落ち着かせ、話を聞きました。
「なんで、マフラー見せてあげなかったの?」
「みくのだもん。みくは悪くない。」
お母さんは頭を撫でながら
「なみちゃんと仲直りしなきゃね。」
みくちゃんはそっぽを向き、
「なみちゃんなんて大嫌い。」
フーっと一息吐き、みくちゃんのほっぺに手をあてて、グイッと持ち上げみくちゃんの顔をジッとみました。
「なみちゃんもよくないけど、みくちゃんも大嫌いとかバカとか言っちゃだめよ。」
「でも、でも。みく。悪くないもん。」
「じゃあ、みくちゃんがなみちゃんにバカとか大嫌いとか言ったら、悲しくないかな?なみちゃんがかわいいぬいぐるみ持ってて見せてほしいのに、見せてくれなかったら、悲しくないかな?」
みくちゃんは黙ってしまいました。
「マフラーを壊したなみちゃんもいけないけど、大事なお友達にそんなこと言ったり、見せてあげなかったみくちゃんもよくなかったんだよ。」
みくちゃんは少し考えて
「なみちゃんと仲直りする!」
と元気に言いました。
しかし、大嫌いとまで言ってしまったから、「どう言えばいいのかな」「どうすれば仲直りできるかな」と不安になってしまいました。
その時、家のチャイムが鳴りました。
「誰かしら。」
とお母さんがドアを開け、ふふっと少し笑うと、みくちゃんに
「みくちゃんにお届け物だよ。」
みくちゃんもドアから外に出てみました。
外には誰もいなくて、紙コップが置いてありました。そこには『みくちゃんへ。みみにあててね。』と書かれてあって、底にはピンクの紐がついていました。不思議に思いながら、みくちゃんはそのコップを耳にあてました。
「ごめんね。」
小さい声でしたが、確かになみちゃんの声でした。
「ごめんね。」
再び声が聞こえました。そのこえは震えていて、鼻水をすする音が何回か聞こえてきました。
みくちゃんはなみちゃんが言っているんだと、わかり、紐をたどってみました。
すると、なみちゃんが泣きながら家の塀の角に座っていました。その手にはマフラーがギュッと大事に握られていて、もう片方の手でコップを持ち、コップに口をあてめてもう一度
「みくちゃんごめんね。」
と言い、なみちゃんはみくちゃんの顔を見れず、下を向いてしまいました。
みくちゃんはコップを口にあてて
「なみちゃんごめんね。」
なみちゃんはびっくりした
「見せてあげなくて、ごめんね。大嫌いって言ってごめんね。」
なみちゃんは立ち上がり、マフラーをみくちゃんに渡しました。そのマフラーは解けた分だけ切ってあり、解けた先を一生懸命結んだあとがありました。
コップをみると、ピンクの紐はマフラーの紐でした。
そして、今度ははっきりと口で
「ごめんね。」
となみちゃんは言いました。
一生懸命結んだマフラーをみくちゃんは首に巻いてみました。ちょっと短くなっていました。
「いいよ。みくもごめんね。」
みくちゃんは言いました。
お母さんがやってきて
「糸電話ね。懐かしいわ。」
なみちゃんの方をむいて
「なみちゃんはいけないことしたのわかるよね?」
なみちゃんはうん。と小さな声でいいました。
そうしたら、お母さんはなみちゃんの頭をなでて
「なら、いいのよ。」
そして、お母さんはニコニコしながら
「なみちゃんにもマフラー編んであげるからね。」
なみちゃんの顔がパーっと明るくなり
「うん。ありがとう。」
とお礼を言いました。
「みくちゃんにも編んであげるからね。」
と言ったら、みくちゃんは首を横に振り、首に巻いてるマフラーを持ちながら
「みくはこのマフラーがいい。だって、仲直りできる魔法のマフラーだから。」
みくちゃんはニコっと笑い
「なみちゃん、学校行こう!」
「うん!」
二人は手をつないで、走りだしました。
文 友千
絵 c/i