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今日から学校と仕事、始まります。①莞

ダメだ、勉強ができない

作者: 孤独

裏切うらぎり 京子きょうこは人間ではない。


その正体は……ここで語る必要はないだろう。今はその名を持ち、女子高生という仮の姿を作り出して地球上に溶け込んでいる。


「ああ、広嶋様」


乙女な彼女は彼に作ってもらったこの居場所を大切にし、賢明に女子高生を満喫していた。知能という部分を強化できる喜び、今まで壊してきた関係というものがどれだけ楽しいものか、この高校生活で知ったことが多い。確かなハンデはあったが、ここに来る前よりとても生きる大切さを学んでいた。

そして、自分の恐ろしさについても理解した。


「この裏切は今、あなたのお力が必要ですわ」



不慣れな携帯を弄りながら、自分の愛している人にラブコールかつメールをするのであった。

裏切にとって、この独り言は別に聞かれても構わない。なぜなら、広嶋のことが大好きだからだ。それよりもメールの中身はこの周辺にいる人々に知られてはいけない。ラブコールと同じくらい抱いている気持ちだ。



『周りが五月蝿くて、勉強ができません!五月蝿い人間達を殺しちゃっていいですか!?』



一見、静かに思える光景かと思えるが、それは裏切が作っているマインドスペースだった。(集中している空間)



「えー、昨日のドラマを見てないのー!?超面白かったのにー」

「録画もしてねぇーんだよな」

「バーカ。今時、動画サイトに行けばあるもんだぜー」

「あの新作のゲームどうだった?買うかどうか迷ってるんだけどー。レビューも微妙だしさー」

「ハッキリ言ってビミョーだ!」

「ちょっと、髪がパサパサになってない?」

「テストやる気でねぇー。部活してぇー」

「冬休みのバイト先を探さなきゃ」



あーーーーっ、今日は一段と五月蝿すぎますわ!人間達ってなんですの!?来週にはテストが控えているのにこのやる気になさは一体どこから来るの!?私のように、真面目に勉強している者達にまで迷惑を掛けるほど騒ぐとは!殺して黙らせたいわ!二丁拳銃の準備はできてます!早く返信してください、広嶋様!


裏切はイライラしながらも、学校で勉強に励んでいた。広嶋からの連絡はなく、周囲の生徒達も騒ぎ続けていた。ここで「静かにしてください」と、勉強好き代表として叫べたら苦労しない。裏切京子という生物は1か0、表と裏のように激しい思想を持っている。彼女が先ほど思っているように黙らせるよりも、殺す気でいる。ここで黙らせてもまた騒ぐ連中なら息の根を止めた方が良い。


「う、五月蝿い……」


この状況では小さすぎる声で言った裏切。

こんな環境下では勉強なんて全然進まない。やっている感の方が強い勉強方法だった。そんな彼女に嬉しかった出来事は学校のベルだった。


キンコンカンコーーン


「よ、ようやく。学校が終わりましたわ」


帰ることとなると、急ぎ足で自宅へ向かった。一人暮らし故、夕飯のみならず買い物も洗濯も、掃除も自分1人。勉強をする暇はあまりなかった。家は家で勉強ができない家庭事情だ。



「ふぅー」


家事に一段落がついたのは8時ごろだ。

普通ならそこから寝るまで、集中して勉強ができるものだが、学校生活に家事をこなしてきた彼女には難しいことだった。


「疲れましたわー」


甘いお菓子を頬張りながら、ボーっとした目で教科書を眺めているだけ。イライラしていた反動が来ている倦怠感。

いけないと思いながらもこの倦怠感に任せ、勉強をやっている感じ。やる気がチャージされるのはもうちょっと先だった。なんかこう、私は本当に勉強に対して集中して取り組んでいるのだろうか?っと、抱けてからようやく本腰が入る。


「い、いけませんわ!」


時計に目をやるともう9時になった。やる気がなくなっていると、自覚してから少し慌てた。

お菓子をしまって温かいカフェオレに変更。小さな音量でBGMを流してこれから来る眠気対策を講じる。しっかり、勉強をして良い成績を残したいという気持ちを作って教科書や参考書と戦う。


「これであと3時間はいけますわ!」


しかし、そんな集中力は持って10分くらいだった。むしろ、準備することに集中しているようだった。


「あー、やっぱり良い曲ですわねー」


自分で用意した楽曲の虜になってしまう裏切。全然、勉強ができない!っと理解しながらも、背けるように曲を聴いていた。

本当は勉強なんてしたくない。だって面倒なんだもん。

本音は奥底にしまって、勉強をやっている感じで進める裏切。眠くはないが、イマイチなやる気を継続していた。やるだけやる感じでは高得点は望めない。いやいや、いちお勉強をしているんだよ!そんなわけないよって、裏切は心の中で怠けられる言い訳を作っていた。そんな言い訳はテスト結果によって酷い気分にさせる。あれだけ勉強をしたと思っていたのに、点が取れなかったらこの世は才能なんだと抱く勘違いもある。

このままでは勉強をやっている感で一日が終わってしまう裏切。そこへやってきたのは、遅すぎる返信。



バゴオオォォッ


「メールをもらったんだが」


かつ唐突過ぎる来訪。加えて、ドアを破壊してやってくるとはとても迷惑だった。


「ひ、広嶋様!」

「さすがにあのメールは俺が駆けつけるぞ。それで、勉強が集中してできないのか?」


裏切の憧れである広嶋。彼は裏切の勉強風景を観察し、いきなり動き始めた。



「まず、音楽は消せ!お菓子を並べるな!しかも、自分で作る暇があるのかよ!カフェオレは一気飲みしろ!あと少し、部屋を掃除する!」

「わ、わーーーっ!いきなり、そのようなことを広嶋様がしなくても……」

「お前は勉強の方が大事だろうが!ともかく、お前のやれるお片づけはまずカフェオレの一気飲みだ!それ以外は俺に任せろ」


オカンの如き、説教と共に裏切の部屋の掃除が始まった。しかし、簡易的なもので5分も掛からずに広嶋の描いた勉強空間になった。

無音と無飲食、無人。目と耳に何も届かない空間。

娯楽と感じるものを全て除去し、集中して勉強ができる空間。いや、勉強以外することがない空間だ。


「分からないところがあれば俺に聞け。ネットを使うと遊び始める(裏切はネットができないけどな)」



広嶋は裏切の後ろで何かの本を黙読し、邪魔を一切しなかった。裏切はこの集中しやすい空間で鼓動を大きくしながら勉強に励んだ。確かに言うとおり、勉強に対しての集中力は増している……が、


「……………」


ひ、広嶋様が気になって勉強にあまり集中できない!も、もしかして私が良い成績を収めて欲しいと思っておられるのですね!なら、頑張って勉強をしなければ!いやいや、わざと分からない振りをして、広嶋様に勉強を教えてもらいたい!


いかんせん、煩悩する裏切。そんな彼女に気付いているのか、気付いてないのか。



「俺が暇だった」

「はい?」

「今日はもう帰る。裏切、今後の勉強方法はちゃんと集中できる空間にしてからやれ。勉強用のお菓子を作るとか止めろ。音楽も掛けるな」


本音は言わないが、あまり旨くはなかったぞ。


「さらに重要なのはその空間を作ることに夢中になるな!いいな!」


広嶋はそれだけを言って、さっさと帰ってしまった。もう10時だ。彼の住まいである広島県にはとても帰れる時間じゃないだろう。しかし、それも裏切に集中して勉強をしてもらうためだ。いないほうがより、勉強に取り組める。


「広嶋様に勉強を教えてもらうチャンスだったのにーーーー!!私の馬鹿ーー!」


少し、後悔をする裏切。それでも、10分後には広嶋のために勉強を励んだ。この空間はとても勉強がしやすい。




それから少しして。


「すいません。ドアを破壊しちゃって、修理の方をお願いします」


広嶋は裏切の家のドアを壊した修理を業者に頼み、さらには


「ミムラか?悪い、これからお前のところに行く。お前はいつも通りベランダで寝てくれ。それと明日の朝までに金も用意しておけ」

『いきなり電話してきて、酷くない!?』


自分の仲間の家に電話して、寝床の確保をするのであった……。








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