表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

犬の妖精

作者: 滝沢樹

作風をガラッと変えて、初のファンタジー的なものです。

是非読んでください!!

感想お待ちしております!

グルルルル

「ほら、ジャーキーだよ!」

ガルルルル

「ほら、食べたいだろ?」

ヴァルルルルル バウ!バウ!

僕の家族は両親と僕と、ペットのドンの3人と1匹の4人?家族だ。

こういう時、母さんなら、

「おいで」

くぅうーん

みたいな感じであっさり終了。

父さんなら、

「ほい」

わん!わん!はっはっはっ

むしゃむしゃむしゃみたいに、懐かれてる。

僕だと……

ガルルルルルルルル

差し出しても食いつきもしない。なんだろうこの差は…

そして、いつも、

「じゃあ……」

と、諦めその場に置き、部屋に戻ると、

わん!わん!と食べだす。そんなに舐められているのだろうか…

もう2年くらいが経つがいまだにドンに直接、餌やジャーキーをあげたことがない。なぜ、そこまで嫌われているのか……、いや、舐められて………。


その日いつものように布団の中へ。犬のドンのことがグルグルと頭を巡る。

『ありがとう』

「え?」

パッと目を開けると、布団の上に小さな小さな妖精が座っていた。

「ありがとう。(ドン)をそんなにも愛してくれて」

「……小人さん?」

「私は犬の妖精です。犬を心から愛してくれる人のところに現れます。ありがとう」

「え、えっと、どういたしまして?」

(ドン)は愛されてるのに、あなたに懐いていない…。苦しいですか?」

「いや、別に…苦しくは、無いけど…」

「あなたも愛されたいですか?」

「……、まあ……」

「わかりました。(ドン)に魔法をかけましょう。あなたをたくさん愛する魔法を」

「え、」

「私たちを、」

キラキラと輝き、消え入りながら、

「愛してくれて、ありがとう」

パッと妖精は目の前から姿を消した。

僕は、ただの夢だと思い、そのまま、目を閉じる。


次の日

「おはよう〜」

半分寝ぼけながら僕はリビングのソファへ腰掛ける。すると、

わん!わん!わん!はっはっはっ!

ドンが突然僕の足元へやって来た。

「え?」

わん!

そして、そのまま、お腹を見せ、撫でて、と言いたげな眼差しを向けて来た。

「ドン?」

「あら、珍しいこともあるのね。雪でも降るのかしら」

と、母さんは笑いながら冗談をふっかけてくる。

それを、適当に相打ちながら、ドンの腹を撫でてやる。

くぅうーん、

なんだこいつ。可愛いじゃないか。2年目にして、初めて触れた。おかしな話だ。

しかし、のんびりとしてはいられない。学校に行かなければ…。

「ごめん!ドン、学校行ってくるから!」

くぅうーん……

すごく悲しそうな瞳だ。こんな表情、初めて見たよ。

……、やばい、遅刻する。

そして、僕は慌てて家を飛び出した。


放課後、すぐさま家へ帰る。ドンに会いたい。

「ただいま!」

わん!

玄関までドンが迎えに来てくれる。なんて、幸せなのだろう。

「ジャーキーたべるか?」

わん!

あたかも、会話しているかのように呼吸が合う。本当に心が通じてる。これも、昨日の魔法なのか?妖精さんの言葉通りなのか?

いままで、手であげられなかったジャーキーをすんなりと口にし、とても嬉しそうな様子だった。すごく幸せだった。


幸せは続いた。毎日のようにドンと遊び、ジャーキーをあげ、一緒に寝ることもあった。妖精さんのことも記憶から薄れつつある。幸せが日常になり、感謝が当たり前になった。


そんな幸せが2ヶ月が過ぎようとした時、ドンの体調がおかしくなった。

「ドン、大丈夫?」

……わん…

力のない返事が帰ってくる。なんで、こんなに…。

病院へ行ったが、原因不明。餌も食べない。走り回っていた姿は見れなくなった。獣医からも、このままだと、命の危険もあると宣告される。

どうして、こんなに可愛がってたドンが……。何が起きて……

と、グルグル考えてる時、ある可能性が頭を(よぎ)る。

「もしかして…、魔法、のせい…?」

ドンは毎日僕のために無理をしていたのかもしれない。魔法によって、操られ、寿命を削ってでも、僕に愛情をくれていたのかもしれない。

この日常が当たり前になって、僕の愛情が、なくなっていたのかもしれない…。

そう、考え出すと、自然と涙がこぼれる。

「ドン……ごめん…僕のために……」

苦しみながらも、必死に僕のところへこようとするドン。もう、そんな姿見たくない。

慌てて、部屋へと駆け込む。ドンのことを無視してでも。

「妖精さん!お願いします!ドンを助けてください!いつもの、昔のドンに、戻してください!お願いします!!!」

涙は溢れ、顔はグチャグチャになっていた。しかし、そんなことどうでもよかった。ただ、また元気良く、僕と喧嘩する毎日を、取り戻したかった。それだけだった。

部屋は静寂に包まれる。妖精さんは出てこない。むしろ、最初からいなかったのかもしれない。魔法ではなく、本当に僕は愛をもらっていたのかもしれない。

涙が止まらなかった。僕は何も、出来なかった。


その夜、目を瞑ると、あの時の、妖精さんが出てきた気がした。記憶は曖昧。会話は無し。でも、にっこりと微笑んでいたような気がする。

朝起きると、涙で、まくらがビショビショだった。

とぼとぼとリビングに向かう。


ガルルルルルル

「え?」

ドンの表情は敵でも見つけたかのような険しものだった。

「ドン!」

思わず、ドンに飛びつく。

ガウッ!

と、同時に手を思い切り噛まれた。

痛みもあったが、それ以上にまた、元気なドンをみれて、また涙が出る。いままでよりもずっと。

ガウッ!ガウッ!

「痛っ!!!」

3回ほど噛まれて、後ろに飛び退いた。

「でも…よかった……」


また、喧嘩できる。また、吠えてくれる。また、僕が置いたジャーキーを食べてくれる。

それが、君の愛と受け止めて、僕も君を一生愛すよ。

だから、長生きしてね。


ドンありがとう。

妖精さんありがとう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ