犬の妖精
作風をガラッと変えて、初のファンタジー的なものです。
是非読んでください!!
感想お待ちしております!
グルルルル
「ほら、ジャーキーだよ!」
ガルルルル
「ほら、食べたいだろ?」
ヴァルルルルル バウ!バウ!
僕の家族は両親と僕と、ペットのドンの3人と1匹の4人?家族だ。
こういう時、母さんなら、
「おいで」
くぅうーん
みたいな感じであっさり終了。
父さんなら、
「ほい」
わん!わん!はっはっはっ
むしゃむしゃむしゃみたいに、懐かれてる。
僕だと……
ガルルルルルルルル
差し出しても食いつきもしない。なんだろうこの差は…
そして、いつも、
「じゃあ……」
と、諦めその場に置き、部屋に戻ると、
わん!わん!と食べだす。そんなに舐められているのだろうか…
もう2年くらいが経つがいまだにドンに直接、餌やジャーキーをあげたことがない。なぜ、そこまで嫌われているのか……、いや、舐められて………。
その日いつものように布団の中へ。犬のドンのことがグルグルと頭を巡る。
『ありがとう』
「え?」
パッと目を開けると、布団の上に小さな小さな妖精が座っていた。
「ありがとう。彼をそんなにも愛してくれて」
「……小人さん?」
「私は犬の妖精です。犬を心から愛してくれる人のところに現れます。ありがとう」
「え、えっと、どういたしまして?」
「彼は愛されてるのに、あなたに懐いていない…。苦しいですか?」
「いや、別に…苦しくは、無いけど…」
「あなたも愛されたいですか?」
「……、まあ……」
「わかりました。彼に魔法をかけましょう。あなたをたくさん愛する魔法を」
「え、」
「私たちを、」
キラキラと輝き、消え入りながら、
「愛してくれて、ありがとう」
パッと妖精は目の前から姿を消した。
僕は、ただの夢だと思い、そのまま、目を閉じる。
次の日
「おはよう〜」
半分寝ぼけながら僕はリビングのソファへ腰掛ける。すると、
わん!わん!わん!はっはっはっ!
ドンが突然僕の足元へやって来た。
「え?」
わん!
そして、そのまま、お腹を見せ、撫でて、と言いたげな眼差しを向けて来た。
「ドン?」
「あら、珍しいこともあるのね。雪でも降るのかしら」
と、母さんは笑いながら冗談をふっかけてくる。
それを、適当に相打ちながら、ドンの腹を撫でてやる。
くぅうーん、
なんだこいつ。可愛いじゃないか。2年目にして、初めて触れた。おかしな話だ。
しかし、のんびりとしてはいられない。学校に行かなければ…。
「ごめん!ドン、学校行ってくるから!」
くぅうーん……
すごく悲しそうな瞳だ。こんな表情、初めて見たよ。
……、やばい、遅刻する。
そして、僕は慌てて家を飛び出した。
放課後、すぐさま家へ帰る。ドンに会いたい。
「ただいま!」
わん!
玄関までドンが迎えに来てくれる。なんて、幸せなのだろう。
「ジャーキーたべるか?」
わん!
あたかも、会話しているかのように呼吸が合う。本当に心が通じてる。これも、昨日の魔法なのか?妖精さんの言葉通りなのか?
いままで、手であげられなかったジャーキーをすんなりと口にし、とても嬉しそうな様子だった。すごく幸せだった。
幸せは続いた。毎日のようにドンと遊び、ジャーキーをあげ、一緒に寝ることもあった。妖精さんのことも記憶から薄れつつある。幸せが日常になり、感謝が当たり前になった。
そんな幸せが2ヶ月が過ぎようとした時、ドンの体調がおかしくなった。
「ドン、大丈夫?」
……わん…
力のない返事が帰ってくる。なんで、こんなに…。
病院へ行ったが、原因不明。餌も食べない。走り回っていた姿は見れなくなった。獣医からも、このままだと、命の危険もあると宣告される。
どうして、こんなに可愛がってたドンが……。何が起きて……
と、グルグル考えてる時、ある可能性が頭を過る。
「もしかして…、魔法、のせい…?」
ドンは毎日僕のために無理をしていたのかもしれない。魔法によって、操られ、寿命を削ってでも、僕に愛情をくれていたのかもしれない。
この日常が当たり前になって、僕の愛情が、なくなっていたのかもしれない…。
そう、考え出すと、自然と涙がこぼれる。
「ドン……ごめん…僕のために……」
苦しみながらも、必死に僕のところへこようとするドン。もう、そんな姿見たくない。
慌てて、部屋へと駆け込む。ドンのことを無視してでも。
「妖精さん!お願いします!ドンを助けてください!いつもの、昔のドンに、戻してください!お願いします!!!」
涙は溢れ、顔はグチャグチャになっていた。しかし、そんなことどうでもよかった。ただ、また元気良く、僕と喧嘩する毎日を、取り戻したかった。それだけだった。
部屋は静寂に包まれる。妖精さんは出てこない。むしろ、最初からいなかったのかもしれない。魔法ではなく、本当に僕は愛をもらっていたのかもしれない。
涙が止まらなかった。僕は何も、出来なかった。
その夜、目を瞑ると、あの時の、妖精さんが出てきた気がした。記憶は曖昧。会話は無し。でも、にっこりと微笑んでいたような気がする。
朝起きると、涙で、まくらがビショビショだった。
とぼとぼとリビングに向かう。
ガルルルルルル
「え?」
ドンの表情は敵でも見つけたかのような険しものだった。
「ドン!」
思わず、ドンに飛びつく。
ガウッ!
と、同時に手を思い切り噛まれた。
痛みもあったが、それ以上にまた、元気なドンをみれて、また涙が出る。いままでよりもずっと。
ガウッ!ガウッ!
「痛っ!!!」
3回ほど噛まれて、後ろに飛び退いた。
「でも…よかった……」
また、喧嘩できる。また、吠えてくれる。また、僕が置いたジャーキーを食べてくれる。
それが、君の愛と受け止めて、僕も君を一生愛すよ。
だから、長生きしてね。
ドンありがとう。
妖精さんありがとう。